通級(通級による指導)の対象は、通常の学級で学びながら、一部だけ特別な指導が必要な子です。対象となる障害は、言語障害・自閉症・情緒障害・弱視・難聴・学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)などで、法令で定められています。知的障害は、現在は対象になっていません。
IQの数値や診断名だけで決まる基準はありません。在籍校の校内委員会や教育委員会が、学校での困りごとの程度、発達検査の結果、医師の所見などをあわせて判断します。この記事では、国の手引が示す基準の中身、診断の要否、申し込みの流れを整理し、東京都と八王子市の場合を分けて説明します。
結論|通常の学級で学び、一部だけ特別な指導を受ける子が対象

通級は、学校教育法施行規則第140条にもとづく仕組みです。通常の学級に在籍したまま、週に何時間か別の教室で、障害による困難の改善をめざす指導を受けます。
国が定める授業時数の標準は、年間35〜280単位時間です(週に換算すると1〜8単位時間程度)。LDとADHDは、月1単位時間程度でも効果が期待できる場合があるとして、年間10〜280単位時間が標準とされています。
利用者は増えています。文部科学省の調査では、2024年度に通級による指導を受けた小・中・高校生は23万405人でした。1993年度に制度ができたときの1万2,259人から、約19倍になっています(集計方法は途中で変わり、2020年度以降は年間を通じた人数、2018年度以降は国立・私立を含みます)。
| 学校 | 利用者(2024年度) |
|---|---|
| 小学校 | 18万6,758人 |
| 中学校 | 4万717人 |
| 高校 | 2,930人 |
対象になる障害と「程度」|国の通知の文言

学校教育法施行規則第140条は、通級の対象を次のように定めています。
- 言語障害
- 自閉症
- 情緒障害
- 弱視
- 難聴
- 学習障害
- 注意欠陥多動性障害
- その他障害のある者(国の通知で、肢体不自由・病弱・身体虚弱が挙げられている)
どの程度なら対象になるかは、文部科学省の通知「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について」(平成25年10月、25文科初第756号)に示され、「障害のある子供の教育支援の手引」(2021年6月)でも同じ内容が説明されています。発達に関係する主な障害の記述は次のとおりです。
| 障害 | 対象となる程度(国の通知の文言) |
|---|---|
| 学習障害(LD) | 全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示すもので、一部特別な指導を必要とする程度のもの |
| 注意欠陥多動性障害(ADHD) | 年齢又は発達に不釣り合いな注意力、又は衝動性・多動性が認められ、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもので、一部特別な指導を必要とする程度のもの |
| 自閉症 | 自閉症又はそれに類するもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの |
| 情緒障害 | 主として心理的な要因による選択性かん黙等があるもので、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度のもの |
どの記述にも共通するのは、「一部特別な指導を必要とする程度」という条件です。困りごとがあっても、大半の時間を通常の学級で学べることが、通級の前提です。
利用者の障害種別は、2024年度の全国集計でADHDが22.1%、言語障害が22.1%、自閉症が20.9%、LDが19.8%、情緒障害が14.1%、難聴・弱視などその他が約1%でした(人数から当サイトが算出)。
知的障害は対象外
知的障害は、現在は通級の対象になっていません。文部科学省は、生活に結び付く内容を継続して指導する必要があり、一定の時間だけ取り出して指導する形には「なじまない」ためと説明しています。知的障害のある子の学びの場は、特別支援学級や特別支援学校が中心です。違いは特別支援学級・通級・特別支援学校・特別支援教室の違いで整理しています。
診断は必要?IQで決まる?|国・東京都・八王子市の考え方

2026年9月時点で、学校教育法施行規則第140条と、授業時数を定める平成5年文部省告示第7号には、診断書の提出を求める記載を確認できませんでした。ただし、医師の所見を軽く扱ってよいという意味ではありません。国・東京都・八王子市の考え方を並べると、次のとおりです。
| 立場 | 考え方 |
|---|---|
| 国 | 文部科学省「障害に応じた通級による指導の手引 解説とQ&A(改訂第3版)」は、医学的な診断の有無のみにとらわれず、総合的な見地から判断するとしている。国の通知(25文科初第756号)は、専門医による診断等にもとづき、教育学・医学・心理学などの観点から総合的かつ慎重に判断するとしている |
| 東京都(特別支援教室の運営ガイドライン) | 入室前に発達検査を必ず実施する。ただし「数値のみで入室を判断することは適切ではない」。医師の診断書だけで判断しないよう留意する |
| 八王子市(特別支援教育ハンドブック) | 「必ずしも医師による診断名が付いていなければ指導が受けられないということではありません」 |
まとめると、診断名がなくても対象になりえますが、検査や専門家の意見はきちんと集めて判断されます。 IQについても同じで、東京都は発達検査の結果を使いながら、数値だけで決めないとしています。
LDやADHDについて、国の通知は、通常の学級での配慮で対応するのが適切な子も「多くみられる」として、慎重な判断を求めています。「診断があれば必ず通級」でもありません。
誰がどう判断するのか|校内委員会と教育委員会

判断には、在籍校と教育委員会の両方が関わります。文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」は、在籍校の校内委員会の判断や意見に加えて、教育委員会の専門家チームや教育支援委員会などの意見を参考にすることが重要だとしています。
実際に判断で見られるのは、次のような情報です。
- 学校での様子:どの授業・場面で、どんな困難があるか
- 通常の学級での配慮:今どんな工夫をしていて、どこまで効果があるか
- 検査の結果:発達検査・知能検査の結果と、得意・不得意のばらつき
- 医師の所見:診断名や医学的な見立て(ある場合)
- 本人と保護者の希望
判断の結果、「通常の学級での配慮で対応する」とされることもあります。文部科学省が2021年度に、特別支援学級の在籍率が高い10の都道府県・政令指定都市を抽出して行った調査では、校内委員会が通級を必要と判断しても通級しなかった主な理由は、「保護者や本人が希望しなかったため」でした。本人と保護者の意向は、判断に大きく影響します。
申し込みの流れ

通級を受けるまでの一般的な流れは次のとおりです。細かい手続きや時期は、自治体によって違います。
- 保護者が担任や特別支援教育コーディネーターに相談する(学校から勧められることもある)
- 校内委員会で、学校での様子や必要な支援を検討する
- 発達検査を受け、必要に応じて医師の所見を集める
- 学校を通じて教育委員会に申し込む
- 教育委員会の判定の会議で検討される
- 結果が伝えられ、指導の形(自校・他校・巡回)や時間が決まる
通級には、自分の学校で受ける「自校通級」、別の学校の通級指導教室に通う「他校通級」、担当の先生が学校に来る「巡回指導」の3つの形があります。2024年度の全国集計では、自校通級が65.7%、他校通級が20.1%、巡回指導が14.2%でした(人数から当サイトが算出)。他校通級の場合は、保護者の送迎が必要になることがあります。
東京都の場合|発達障害の通級は「特別支援教室」

東京都の公立小・中学校では、発達障害や情緒障害の子の通級は「特別支援教室」という形で行われています。制度上は国の通級の一つの形で、担当の先生が各学校を巡回し、子どもは自分の学校で指導を受けます。小学校は2018年度までに、中学校は2021年4月までに、全校に導入されました。
東京都の特別支援教室の運営ガイドライン(2021年3月)では、次のように定めています。
| 項目 | 東京都の定め |
|---|---|
| 対象 | 自閉症・情緒障害・学習障害・注意欠陥多動性障害 |
| 入室の判定 | 区市町村教育委員会が設ける判定委員会(名称は自治体で異なる)。委員は教育・医学・心理の専門家で、少なくとも学期に1回開く |
| 発達検査 | 入室前に必ず実施する。数値のみで判断しない |
| 指導期間 | 年度初めに入室した場合は原則1年間。延長は条件を満たした場合に最長1年 |
特別支援教室の対象は上の4つの障害です。言語障害や難聴の子のための通級は別の形で行われ、八王子市では難聴・言語障害の通級指導学級が設けられています。
八王子市の場合|申込み時期と窓口

八王子市の公式ページ「障害のあるお子さんの学級・教室・学校について」(更新日の表示は2026年1月22日。2026年9月28日に確認)と、市の特別支援教育ハンドブック(令和7年度版)で確認できる内容です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特別支援教室 | 全小・中学校に設置。在籍校で週1回程度の指導。指導時間は週8時間以内 |
| 拠点校 | 小学校26校・中学校10校(2026年4月から)。2027年4月に第十小学校が拠点校に加わる予定 |
| 通級指導学級 | 難聴・言語障害。週1回程度、保護者が引率して通う |
| 申込み | 市の就学相談を受ける。在籍中の子は、保護者が在籍校に相談し、申請書類と発達検査の結果を学校に提出する |
| 時期 | 2026年9月28日の確認時点で「令和8年度就学相談の申請は8月31日をもって受付を終了」と表示(2027年4月からの利用分) |
| 窓口 | 八王子市教育委員会 教育指導課 支援・相談担当 就学相談(教育センター内)042-664-7524 |
年度の途中から利用を始める場合の締切は、2026年9月時点で、市の上記ページと特別支援教育ハンドブック(令和7年度版)には記載を確認できませんでした。途中から考えている場合は、まず在籍校に相談してください。
市の資料は、特別支援教室を「特定の教科の遅れを取り戻したり補習をするための場ではありません」と説明しています。勉強の遅れだけが心配な場合は、別の方法も含めて考えるとよいでしょう。
特別支援学級とどう分かれる?

通級と特別支援学級は、「籍を置く場所」と「別に学ぶ時間の量」で分かれます。
| 項目 | 通級 | 特別支援学級 |
|---|---|---|
| 在籍 | 通常の学級 | 特別支援学級 |
| 別に学ぶ時間 | 週1〜8単位時間程度 | 原則として週の授業時数の半分以上が目安 |
| 知的障害 | 対象外 | 対象 |
| 主な内容 | 障害による困難の改善をめざす指導(自立活動) | 特別の教育課程による各教科と自立活動 |
大半の時間を通常の学級で過ごせるなら通級、多くの時間で別の指導が必要なら特別支援学級、というのが大まかな分かれ目です。特別支援学級の基準は特別支援学級に入る基準は?、中学校の支援級の中身は中学校の特別支援学級はどんなところ?で解説しています。
通級を勧められて迷っている場合は、通級を勧められたら?デメリット・効果・やめどきで判断の材料をまとめています。
療育の全体像は療育とは?内容・効果の考え方・いつから始めるかで整理しています。
よくある質問

- Q診断がなくても通級を受けられますか?
- A
受けられる場合があります。文部科学省の通級の手引は診断の有無のみにとらわれず総合的に判断するとしており、八王子市も「必ずしも医師による診断名が付いていなければ指導が受けられないということではありません」としています。
- QIQがいくつなら通級の対象になりますか?
- A
IQの数値による基準はありません。東京都は入室前の発達検査を必須としていますが、数値のみで判断しないとしています。
- Q知的障害があると通級は受けられませんか?
- A
現在は対象外です。知的障害のある子の学びの場は、特別支援学級や特別支援学校が中心になります。
- Q申し込めば必ず通級できますか?
- A
必ずではありません。校内委員会や教育委員会の判定の会議で検討され、通常の学級での配慮で対応すると判断されることもあります。
- Q年度の途中から始められますか?
- A
東京都の運営ガイドラインは年度途中の入室を想定しています(その場合、指導期間は原則として翌年度末まで)。申込みの締切は自治体によって違うため、在籍校に確認してください。
まとめ:基準は「数値」ではなく「通常の学級でどれだけ学べるか」

- 通級の対象は、通常の学級で学びながら一部だけ特別な指導が必要な子
- 対象は言語障害・自閉症・情緒障害・弱視・難聴・LD・ADHDなど。知的障害は現在は対象外
- 診断名やIQの数値だけで決まる基準はない。検査・学校での様子・医師の所見・本人と保護者の希望をあわせて判断する
- 東京都では発達障害などの通級は「特別支援教室」。入室前の発達検査が必須
- 八王子市では、2027年4月からの利用分の申込みは2026年8月31日で受付を終えている(2026年9月28日確認)
次の一歩は、担任や特別支援教育コーディネーターに、学校で見えている困りごとを具体的に聞いてみることです。
※本記事は2026年9月時点の法令・国の手引と通知・公開資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の診断や学びの場の判断に代わるものではありません。対象の判断、申込みの方法と時期、指導の形や時間は、自治体や学校によって異なります。八王子市の情報は、2026年9月28日に確認した市公式ページと、市の特別支援教育ハンドブック(令和7年度版)に基づいています。必ずお住まいの自治体と在籍校の最新情報をご確認ください。
主な出典:学校教育法施行規則(第140条)/平成5年文部省告示第7号(平成28年文部科学省告示第176号による改正後)/文部科学省「障害に応じた通級による指導の手引 解説とQ&A(改訂第3版)」(制度編・Q&A)/文部科学省「障害のある子供の教育支援の手引」(令和3年6月)/文部科学省「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」(平成25年10月4日 25文科初第756号)/文部科学省 特別支援教育資料(通級による指導を受けている児童生徒数の推移)/文部科学省「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知)」(令和4年4月27日)/文部科学省「令和6年度 通級による指導実施状況調査」/東京都教育委員会「特別支援教室の運営ガイドライン」/八王子市「障害のあるお子さんの学級・教室・学校について」/八王子市 特別支援教育ハンドブック(令和7年度版・PDF)


