不登校の原因は、文部科学省の最新調査(令和6年度)では「学校生活に対してやる気が出ない」30.1%が最多で、「生活リズムの不調」25.0%、「不安・抑うつ」24.3%が続きます。
ただし、この数字をそのまま「うちの子の原因」に当てはめるのは危険です。この調査は学校側が把握できた事実の集計であり、子ども本人に聞いた調査では「先生のこと」「身体の不調」が上位に来る——つまり、誰に聞くかで順位が変わるからです。
この記事では、最新データのランキングと、本人調査とのずれ、そして「原因がわからない」ときの考え方を整理します。
不登校の原因ランキング【文科省・令和6年度調査】

文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(令和6年度・2025年10月公表)による、小中学校の不登校の要因の上位です。
| 順位 | 把握された要因 | 割合 |
|---|---|---|
| 1位 | 学校生活に対してやる気が出ない(との相談があった) | 30.1% |
| 2位 | 生活リズムの不調(に関する相談があった) | 25.0% |
| 3位 | 不安・抑うつ(の相談があった) | 24.3% |
| 以下 | いじめを除く友人関係、学業不振・宿題、教職員との関係、親子の関わり など | ― |
このランキングを読むときの注意が2つあります。
- 回答しているのは学校(教職員)です。本人へのアンケートではなく、学校が「把握できた事実」を複数回答で挙げたもの
- 令和5年度から調査方式が変わりました。以前は「無気力・不安」約5割などの旧分類が使われており、ネット上の解説記事には新旧の数字が混在しています。「無気力・不安が半数」という数字は旧方式のものです
なお不登校の小中学生は353,970人(小学校137,704人・中学校216,266人)で過去最多です。人数データの全体像は不登校とは?定義・最新の人数データで詳しく整理しています。
子ども本人に聞くと、順位が変わる

同じ文部科学省の調査でも、子ども本人に尋ねた調査では違う顔ぶれが上位に来ます。
不登校の児童生徒本人に「学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ」を聞いた実態調査(令和2年度)では、「先生のこと」「身体の不調」「生活リズムの乱れ」がいずれも3割前後で上位に並びました。学校側の統計ではあまり目立たない「先生のこと」が、本人調査では最上位グループに入ります。
さらに、文部科学省の委託研究(不登校の要因分析に関する調査研究・令和6年3月公表)では、不登校の子どもとそうでない子どもの回答を比べると:
- 「先生と合わなかった」:不登校の子ども35.9%(不登校でない子ども14.3%)
- 「先生から厳しく怒られた・体罰があった」:16.7%(同7.5%)
と、教職員との関係で大きな差が出ています。
なぜずれるのか
学校側の統計は「学校が把握できたこと」しか数えられません。子どもは、先生に関する不満を先生側に伝えにくく、また自分でも理由をうまく言語化できないことが多い。「無気力」と記録された子の背景に、言えなかった理由が隠れている可能性を、この2つの調査のずれは示しています。
「うちの子はやる気がないだけ」と表面で判断せず、背景に別の理由があるかもしれない前提で見る——これがデータから引き出せる、いちばん実用的な教訓です。
「原因がわからない」は珍しくない

「原因がわからない」「本人に聞いても答えない」——検索でも多い悩みですが、これは異常ではありません。理由は3つあります。
- 原因は1つではないことがほとんどです。友人関係+学業+体調のように複数の要因が重なり、どれが決め手か本人にも分けられません
- きっかけと原因は別物です。「行けなくなった日の出来事」は最後の一押しにすぎず、その前からエネルギーが減り続けていた、というケースが典型です
- 言語化できるまで時間がかかる。落ち着いてから数カ月〜数年後に「あのときは○○だった」と話せるようになる子は多くいます
だから、原因を特定できなくても対応は始められますし、実際、原因の特定を待たずに休養と居場所づくりを先に進めるのが現在の標準的な考え方です。
なぜ不登校は増えたのか

不登校は353,970人と過去最多の更新が続いています。増加の背景として指摘されているのは、主に次の3つです。
- 「無理に登校させない」への方針転換——2017年施行の教育機会確保法以降、休養の必要性と学校外の学びが公式に認められ、学校に行かせ続けること自体を目標にしない支援へ変わりました
- 保護者・社会の意識の変化——「学校を休む」ことへの抵抗感が下がり、以前なら無理に登校していた層が数字に表れるようになりました
- コロナ禍以降の生活変化——生活リズムの乱れや行事の減少による学校とのつながりの希薄化が、復帰のハードルを上げたと指摘されています
つまり増加分には、「問題の悪化」だけでなく「隠れていた不登校が可視化された」側面が含まれます。「昔より弱くなった」という解釈は、データの読み方として正確ではありません。
不登校は親のせいなのか

親のせい、と単純に言える調査結果はありません。
学校側の統計には「親子の関わり方」という項目がありますが上位ではなく、本人調査で上位に来るのは学校生活と体調に関する項目です。そもそも不登校は複数要因の重なりで起こるもので、単一の「犯人」を特定できる性質のものではありません。
保護者が自分を責めることには、実害もあります。親の焦りと自責は子どもに伝わり、「自分のせいで親が苦しんでいる」という二次的な負担になるからです。原因の追及を home の内側に向けるより、今日の安心を積み上げる方が、回復への近道です。
原因探しより先にやること

原因の特定は、実は対応の必須条件ではありません。順番はこうです。
- 休養を認める——エネルギーが尽きた状態では、原因を聞かれること自体が負担になります
- 家庭を安全基地にする——登校の話題を一旦脇に置き、生活リズムと会話を守る
- 居場所・相談先をつくる——教育支援センター(無料)やフリースクールなど、家庭以外の選択肢を親が下調べしておく
- 学びと進路は回復してから——特に中学生は、学年に応じた備えを親側だけで進めておくと焦らずに済みます。中学生の不登校の対応と中学卒業後の進路の選択肢にまとめています
不登校の原因でよくある質問

Q. 「無気力」が原因と言われました。どう受け止めればいいですか?
無気力は原因というより「結果」であることが多いです。エネルギーが尽きた状態が無気力として見えており、背景には言語化できていない要因(人間関係・体調・学業など)が隠れている可能性を前提に、まず休養を優先してください。
Q. いじめが原因の不登校は少ないのですか?
学校側の統計では、いじめが要因として把握される割合は小さく出ます。ただし本人調査では友人関係のトラブルが上位に入り、学校が把握できていないケースの存在も指摘されています。統計の小ささを「いじめは関係ない」と読むのは誤りです。
Q. 朝起きられないのは怠けですか?病院に行くべきですか?
怠けと決めつけないでください。思春期には起立性調節障害など、朝の不調を引き起こす身体的な背景がある場合があります。朝起きられない・立ちくらみ・午後は元気などのパターンが続くなら、小児科や思春期外来への相談を検討してください。
Q. 原因がわからないまま、進路の話を進めていいのでしょうか?
進めて構いません。原因の解明と進路の準備は別の作業です。本人の回復を待ちながら、保護者側で選択肢(出席扱い制度・フリースクール・通信制高校など)を下調べしておくと、本人が動ける時期に素早く対応できます。
Q. 高校生の不登校の原因は中学生と違いますか?
大きな傾向は共通ですが、高校は義務教育でないため、欠席が単位・進級に直結する点が違います。原因探しと並行して、出席日数の確認と転校(通信制など)の選択肢の把握を早めに行うのが現実的です。
まとめ:原因は「特定」より「前提の更新」に使う

- 最新の文科省調査の上位はやる気が出ない30.1%・生活リズム25.0%・不安・抑うつ24.3%(学校側の把握・令和6年度)
- 本人調査では「先生のこと」「身体の不調」が上位——誰に聞くかで順位が変わる
- 原因は複合的で、特定できなくても対応は始められる
- 親のせいと言える調査結果はない。自責より、休養と居場所づくりが先
データは「犯人探し」のためではなく、「見えている理由が全てではない」という前提を持つために使ってください。それが、子どもとの会話を変える最初の一歩になります。
※本記事は2026年8月時点の公表データに基づく一般的な情報提供であり、個別の診断・助言に代わるものではありません。体調面の不安がある場合は医療機関に、学校生活の対応は在籍校・教育委員会の相談窓口にご相談ください。
主な出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2025年10月公表)/文部科学省「不登校児童生徒の実態把握に関する調査」(令和2年度)/文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究」(公益社団法人子どもの発達科学研究所・令和6年3月公表)

