中学校の特別支援学級は、障害のある生徒のために中学校の中に置かれる少人数の学級です。国の標準は1学級8人までで、生徒一人ひとりに合わせた「特別の教育課程」を組むことができます。授業の内容を下の学年のものに置き換えたり、障害による困難の改善をめざす「自立活動」の時間を設けたりできるのが、通常の学級との大きな違いです。
この記事では、法令と文部科学省の学習指導要領・通知をもとに、中学校の特別支援学級の授業、自立活動、通常の学級との交流、成績のつけ方を整理します。あわせて、八王子市の中学校の設置状況と、小学校から進むときの手続きを紹介します。高校受験については別の記事で詳しく扱っています。
結論|一人ひとりに合わせた「特別の教育課程」で学ぶ少人数の学級

中学校の特別支援学級は、学校教育法第81条にもとづいて、中学校に置くことができる学級です。対象は、知的障害・肢体不自由・身体虚弱・弱視・難聴などのある生徒で、特別支援学級で学ぶことが適当とされた生徒です(自閉症・情緒障害の学級も国の通知にもとづいて設けられています)。
通常の学級との違いは、次の3点にまとめられます。
| 項目 | 通常の学級 | 特別支援学級 |
|---|---|---|
| 人数・編制 | 原則として同じ学年の生徒で学級を編制 | 1学級8人が国の標準 |
| 教育課程 | 中学校学習指導要領どおり | 必要に応じて「特別の教育課程」を組める |
| 学ぶ内容 | 学年の内容 | 下の学年の内容や、知的障害の特別支援学校の教科に置き換えられる。自立活動を取り入れる |
全国の中学校の特別支援学級には、2024年5月1日現在で11万2,146人が在籍しています(文部科学省「特別支援教育資料(令和6年度)」)。10年前の5万8,082人から約1.9倍に増えました。
基本の仕組み|1学級8人と、担任の数

学級の人数は、法律(義務標準法第3条)で1学級8人が標準と定められています。
八王子市の特別支援教育ハンドブック(令和7年度版)では、市の固定学級は、人数を「すべての学年を合わせ」て8人で1学級とし、担任は「学級数+1名」としています。たとえば在籍が12人なら2学級で、担任は3人です。通常の学級のように学年ごとに分かれるとは限らず、1年生から3年生までが同じ学級で過ごすことがあります。
生徒ごとには、「個別の教育支援計画」と「個別の指導計画」を作成して活用することが、中学校学習指導要領で定められています。どんな目標で何を学ぶかを、一人ひとり書面で計画する仕組みです。
授業の中身|下の学年の内容や、知的障害の教科に置き換えられる

特別支援学級では、学校教育法施行規則第138条により、「特に必要がある場合」は「特別の教育課程」を組めます。中学校学習指導要領の総則は、特別の教育課程の組み方を次のように示しています。
- 特別支援学校の学習指導要領にある「自立活動」を取り入れる
- 各教科の目標や内容を、下の学年の目標や内容に置き換える
- 各教科を、知的障害のある生徒を教える特別支援学校の各教科に置き換える
たとえば、数学を中学1年の内容ではなく小学校の算数の内容から学び直す、といった組み方ができます。どの教科をどう置き換えるかは、生徒ごと・学校ごとに決まり、全国共通の時間割はありません。
教科書は検定教科書以外も使える
中学校では通常、文部科学省の検定を通った教科書を使います。特別支援学級では、学校教育法附則第9条と施行規則第139条により、検定教科書が適当でない場合に「他の適切な教科用図書」を使えます。一般の書籍や絵本などを教科書として使う方法で、いわゆる「附則9条本」と呼ばれるものです。義務教育段階の教科書は、国の負担で無償で配られます。
自立活動|6区分27項目。特別支援学級ならではの時間

自立活動は、障害による学習上や生活上の困難を、生徒が主体的に改善・克服するための指導です。特別支援学校の学習指導要領(平成29年告示)で、目標と内容が定められています。
内容は6つの区分と27の項目に整理されています。
| 区分 | 項目数 | 項目の例 |
|---|---|---|
| 健康の保持 | 5 | 生活のリズムや生活習慣の形成 |
| 心理的な安定 | 3 | 情緒の安定、障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服する意欲 |
| 人間関係の形成 | 4 | 他者とのかかわりの基礎、集団への参加の基礎 |
| 環境の把握 | 5 | 保有する感覚の活用、感覚や認知の特性についての理解と対応 |
| 身体の動き | 5 | 姿勢と運動・動作の基本的技能 |
| コミュニケーション | 5 | 言語の受容と表出、状況に応じたコミュニケーション |
一人ひとりの課題に合わせて、この中から必要な項目を選んで指導します。文部科学省は2022年の通知のQ&A(問3-1)で、特別の教育課程を組んでいるのに自立活動の時数が0であることは「学習指導要領上想定されておりません」としています。教育課程外の朝の時間や休み時間だけで行うことも想定されていません。
通常の学級との交流|「週の半分以上は特別支援学級で」が国の原則

特別支援学級の生徒は、教科によって通常の学級(いわゆる交流学級)で授業を受けることがあります。これを「交流及び共同学習」といいます。
この時間の配分について、文部科学省は2022年4月27日の通知「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」で、次のように示しました。
- 「原則として週の授業時数の半分以上を目安として特別支援学級において」一人ひとりに応じた授業を行う
- 大半の時間を通常の学級で学んでいる場合は、「学びの場の変更を検討するべき」
- 「交流」の側面だけに重点を置いて交流及び共同学習を行うことは「適切ではありません」
この通知の背景には、特別支援学級の在籍率が高い10の都道府県・政令指定都市から学校を抽出した文部科学省の調査で、中学校の特別支援学級の生徒の49%が総授業時数の半分以上を通常の学級で過ごしていたという実態がありました。文部科学省は、この通知は新しい制度ではなく、以前から示してきた内容を明確にしたものだと説明しています。
「ほとんど交流学級で過ごせるなら支援級」という選び方は、国の考え方と合いません。 大半を通常の学級で過ごせる生徒には、通常の学級に在籍して一部だけ別に指導を受ける「通級」(東京都では、発達障害などの通級は特別支援教室)が向いている場合があります。通級については通級の対象になる子は?判定基準と申し込みの流れで解説しています。
ただし、翌年度に通常の学級への変更を考えていて、交流の時間を段階的に増やしている場合などは、通知でも例外とされています。
成績・通知表|国の統一ルールはない

通知表の様式は、国が統一して定めているものではありません。文部科学省の通知でも、通知表は「域内の学校が定めるいわゆる通知表」とされ、学校ごとに決まります。5段階の評定をつけるかどうかも、学校によって違います。
一方、学校が法令にもとづいて作る公式の記録(指導要録)については、国の通知があります。特別支援学級の生徒の記録は、必要な場合は特別支援学校中学部の指導要録に準じて作成します。知的障害の特別支援学校の各教科で学ぶ場合、学習の状況は数字ではなく、箇条書きなどによる文章で記述します。
成績の扱いは、高校受験の調査書にも関係します。東京都立高校の令和9年度入学者選抜実施要綱では、全ての教科を特別の教育課程で学んでいる特別支援学級(固定)の生徒について、調査書の記入できない欄に斜線を引くなどの扱いが定められています。詳しくは特別支援学級から高校受験はできる?で解説しています。
小学校の支援級から中学へ|就学相談と、小6での手続き

中学校で特別支援学級に入るかどうかは、市区町村の教育委員会が行う就学相談を経て決まります。東京都教育委員会の案内は、就学相談の対象に「小学校第6学年に在学中で、翌年4月から…中学校の特別支援学級に就学予定の児童」を挙げています。
八王子市の特別支援教育ハンドブック(令和7年度版)では、小・中学校に在籍している子の場合、保護者が在籍校に相談し、申請書類と発達検査の結果を学校に提出して、学校を通じて教育委員会に申し込むとされています。
小学校ですでに特別支援学級にいる場合に、中学進学時に改めて就学相談が必要かどうかは、2026年9月時点で、八王子市の公式ページ「障害のあるお子さんの学級・教室・学校について」と同ハンドブックには記載を確認できませんでした。在籍している小学校に、早めに確認してください。
就学時に決めた学びの場は固定されたものではなく、国の通知は、発達や適応の状況に応じて柔軟に転学できることを求めています。入級の判断の考え方は特別支援学級に入る基準は?で解説しています。
八王子市の中学校の特別支援学級

八王子市の公式ページ「障害のあるお子さんの学級・教室・学校について」(更新日の表示は2026年1月22日。2026年9月28日に確認)と、市の特別支援教育ハンドブック(令和7年度版)で確認できる内容です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 中学校の固定学級の種類 | 知的障害の学級のみ。自閉症・情緒障害の固定学級は未設置(市は「令和7年の時点で」未設置と表示) |
| 設置校 | 中学校20校(2026年4月から。義務教育学校の後期課程を含む) |
| 新設予定 | 2027年4月に横川中学校に知的障害の学級を新設 |
| 特別支援教室 | 全小・中学校に設置。知的な遅れを伴わない発達障害などの生徒が、在籍校で週1回程度の指導を受ける |
| 就学相談の窓口 | 八王子市教育委員会 教育指導課 支援・相談担当 就学相談(教育センター内)042-664-7524 |
| 申請の時期 | 2026年9月28日の確認時点で「令和8年度就学相談の申請は8月31日をもって受付を終了」と表示(2027年4月からの入級分) |
全国と比べると、構成に大きな違いがあります。全国の中学校の特別支援学級では、自閉症・情緒障害の学級に在籍する生徒が約51%と最も多くなっています。一方、東京都の公立中学校では知的障害の学級の在籍者が約85%を占めます(いずれも文部科学省「特別支援教育資料(令和6年度)」の人数から当サイトが算出)。八王子市でも、知的障害のない自閉スペクトラム症などの生徒は、通常の学級に在籍して特別支援教室を使う形が基本です。
市の公式ページには、中学校の特別支援学級の授業公開日の一覧(PDF)が掲載されています。日程を確認し、実際の授業を見ておくと判断しやすくなります。4つの学びの場の違いは特別支援学級・通級・特別支援学校・特別支援教室の違いにまとめています。
中学の支援級を選ぶときに考えておくこと

中学校の特別支援学級は、少人数で自分に合った内容を学べる一方で、卒業後の進路とつながっています。選ぶ前に、次の点を確かめておくと後から慌てずに済みます。
- 高校の選択肢:すべての教科を特別の教育課程で学ぶと、高校受験の調査書の扱いが通常の学級と変わる場合がある
- 交流の時間:週の何割を通常の学級で過ごす見込みか。大半なら通級のほうが合う場合がある
- 自立活動の中身:どの項目を、週にどのくらい扱うか
- 途中の変更:国の通知は、学びの場を柔軟に変えられるようにすることを求めている
文部科学省「特別支援教育資料(令和6年度)」によると、中学校の特別支援学級を卒業した生徒の進路は、全国で進学が93.7%です(2024年3月卒業者)。進学先の内訳は、高校などが1万9,151人、特別支援学校高等部が1万1,004人でした。高校には、通信制高校や、調査書を使わない入試の学校など、いくつかの道があります。発達特性のある子に合う通信制高校の選び方は発達障害のある子の通信制高校の選び方で解説しています。
周囲の目が気になっている場合は、「特別支援学級はずるい」と言われたらも読んでみてください。
療育の全体像は療育とは?内容・効果の考え方・いつから始めるかで整理しています。
よくある質問

- Q中学校の特別支援学級は1クラス何人ですか?
- A
国の標準は1学級8人です。八王子市の固定学級は、すべての学年を合わせて8人で1学級としています。
- Q教科書は普通の中学生と同じですか?
- A
同じとは限りません。特別支援学級では、検定教科書が適当でない場合に、一般の書籍などを「他の適切な教科用図書」として使うことができます。
- Qほとんどの授業を交流学級で受けることはできますか?
- A
国は、原則として週の授業時数の半分以上を目安に特別支援学級で授業を行うとしています。大半を通常の学級で学んでいる場合は、学びの場の変更を検討するべきとされています。
- Q通知表や成績はどうなりますか?
- A
通知表の様式に国の統一ルールはなく、学校ごとに決まります。公式の記録である指導要録では、知的障害の特別支援学校の各教科で学ぶ場合、文章で学習状況を記述します。
- Q途中で通常の学級に移ることはできますか?
- A
できます。国の通知は、発達や適応の状況に応じて柔軟に転学できることを求めています。変更を考えるときは、在籍校や教育委員会に相談してください。
- Q八王子市の中学校に情緒の特別支援学級はありますか?
- A
ありません(市の公式ページの表示は「令和7年の時点で」未設置。2026年9月時点で確認)。八王子市の中学校の固定学級は知的障害の学級のみで、知的な遅れを伴わない発達障害などの生徒は、通常の学級に在籍して特別支援教室を使う形が基本です。
まとめ:中身を知ってから、見学と就学相談で確かめる

- 中学校の特別支援学級は、1学級8人が標準の少人数の学級
- 「特別の教育課程」で、下の学年の内容や知的障害の教科に置き換え、自立活動を取り入れられる
- 自立活動は6区分27項目。時間が0は想定されていない
- 国の原則は、週の授業時数の半分以上を目安に特別支援学級で授業を行うこと
- 通知表に国の統一ルールはない。指導要録では文章で記述する
- 八王子市の中学校の固定学級は知的障害のみ20校。2027年4月に横川中学校に新設
次の一歩は、授業公開日に実際の学級を見ることと、在籍している小学校に就学相談の時期を確認することです。
※本記事は2026年9月時点の法令・国の通知・公開資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の就学先の判断に代わるものではありません。教育課程・時間割・交流の時間・通知表の様式は、学校や生徒ごとに異なります。就学先は、お住まいの市区町村教育委員会の就学相談を経て決まります。八王子市の情報は、2026年9月28日に確認した市公式ページと、市の特別支援教育ハンドブック(令和7年度版)に基づいています。必ずお住まいの自治体の最新情報をご確認ください。
主な出典:学校教育法(第81条・附則第9条)/学校教育法施行規則(第138条・第139条)/公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(第3条)/文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」総則/文部科学省「特別支援学校小学部・中学部学習指導要領(平成29年告示)」第7章 自立活動/文部科学省「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知)」(令和4年4月27日)および同Q&A/文部科学省「特別支援教育資料(令和6年度)」/文部科学省「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)」(平成25年10月4日 25文科初第756号)/東京都「令和9年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱」(PDF)/文部科学省「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(平成31年3月29日)/東京都教育委員会「東京都の就学相談案内」/八王子市「障害のあるお子さんの学級・教室・学校について」/八王子市 特別支援教育ハンドブック(令和7年度版・PDF)/八王子市 特別支援学級等一覧(PDF)


