通級を勧められたら?デメリット・効果・やめどきを公的な資料で確認【2026年9月時点】

学校の相談室で並んで座り一枚の資料を見る日本人の父親と教員 療育・制度

通級を勧められたときに考えたいのは、「抜ける授業と引き換えに、何を得られるか」です。通級の指導を受けている時間は、在籍している学級の授業を受けられません。東京都教育委員会も、このことを公式の資料に負担として明記しています。一方で通級は、障害による学習や生活の困難を改善するための指導で、少人数で自分に合った方法を学べる場です。

この記事では、文部科学省と東京都教育委員会の資料、全国の調査データをもとに、通級のデメリットとメリット、いつまで通うのか、勧められたときに学校に何を聞けばよいかを整理します。

結論|判断の軸は「抜ける授業と引き換えに何を得るか」

抜ける授業と得られる指導のバランスを示す図解

通級(通級による指導)は、通常の学級に在籍したまま、週または月に何時間か別に指導を受ける仕組みです。小・中学校で国が定める授業時数の標準は年間35〜280単位時間で、LDとADHDは年間10〜280単位時間です。実際には、文部科学省の2022年度の調査で、週1単位時間の子が小学校で64.5%、中学校で67.8%でした(人数から当サイトが算出。最新の2024年度調査には指導時間別の集計がないため、2022年度の値を使っています)。

判断の材料になるのは、次の3つです。

考えること確かめる中身
失うものどの授業を抜けるか、送迎が必要か、どのくらいの期間続くか
得られるものどんな困りごとを、どんな方法で改善するか
代わりの方法通常の学級での配慮で対応できないか

通級の対象や判定の基準は通級の対象になる子は?判定基準と申し込みの流れで解説しています。

デメリット|公的な資料に書かれていること

時間割から授業を抜けることや送迎、補習ではない活動を示す図解

ここでは、公的な資料やデータで裏づけられるデメリットだけを挙げます。

1. 指導の時間は、在籍学級の授業を受けられない

通級の指導は、教育課程に加えて行うか、通常の授業の一部に替えて行います。一部に替える場合、その時間は在籍学級の授業を受けられません。東京都教育委員会の資料「特別支援教室の運営ガイドライン~指導期間の考え方について~」は、指導の時間中は「通常の学級での授業を受けることができません」と明記し、長く利用することは子どもにとって「大きな負担」になるとしています。

どの授業を抜けるかは学校ごとに決まります。好きな教科や、苦手でついていくのに努力している教科と重なると、子どもの負担は大きくなります。抜ける授業の時間割は、始める前に必ず確認してください。

2. 他校通級は、送迎が必要になることがある

通級には、自分の学校で受ける「自校通級」、別の学校に通う「他校通級」、担当の先生が学校に来る「巡回指導」があります。2024年度の全国集計では、自校通級が65.7%、他校通級が20.1%、巡回指導が14.2%でした(人数から当サイトが算出)。

文部科学省が2021年度に、特別支援学級の在籍率が高い10の都道府県・政令指定都市を抽出して行った調査では、調査対象の6割程度の市町村が、他校通級は保護者の送迎を原則としていました。他校通級になる場合は、保護者の仕事や時間の調整が必要です。

3. 長く続きやすい

東京都の検討委員会の報告(2020年度)では、指導の目標を達成して退室する子の割合は、区市町村によって「おおむね0%から20%」でした。2020年4月の都の調査にもとづき、小学校で3年以上指導を受けている児童が「5割以上」という実態も示されています。

「1年で終わるもの」と思って始めると、見通しとのずれが生まれます。始める前に、どんな目標を立て、いつ見直すのかを確認しておくことが大切です。

4. 勉強の遅れを取り戻す場ではない

通級の目的は、障害による学習上または生活上の困難を改善することです。国は2016年の告示改正で、通級が「単に各教科・科目の学習の遅れを取り戻すための指導」と解釈されないように、目的を明確にしました。八王子市の資料も、特別支援教室を「特定の教科の遅れを取り戻したり補習をするための場ではありません」と説明しています。

勉強の遅れだけを解消したい場合、通級では期待とずれることがあります。

効果とメリット|何のための指導か

小学生が自分に合う方法や気持ちの切り替えを学ぶ目標を示す図解

通級の指導は、特別支援学校の学習指導要領にある「自立活動」を参考に行われます。自立活動は、障害による困難を子どもが主体的に改善・克服するための指導で、6つの区分に整理されています。発達障害のある子の困りごとに関係しやすい区分と項目の例は次のとおりです。

  • 心理的な安定:情緒の安定、障害による困難を改善・克服する意欲
  • 人間関係の形成:他者とのかかわりの基礎、集団への参加の基礎
  • 環境の把握:感覚や認知の特性についての理解と対応
  • コミュニケーション:言語の受容と表出、状況に応じたコミュニケーション

メリットは、通常の学級に籍を置いたまま、自分の困りごとに合った指導を受けられることです。少人数や個別で、自分に合った方法を試せます。特別支援学級と違って、学級そのものは変わりません。

効果の出方は、子どもの状態や指導の内容によって違います。東京都の運営ガイドラインは、原則1年の指導期間で目標を立て、少なくとも3か月または学期ごとに指導目標の達成状況などを評価する仕組みにしています。目標を具体的に決め、定期的に見直すことが大切です。

いつまで通う?やめどき|東京都のルールと実態

定期評価から達成時の退室と条件付き延長へ分かれる流れを示す図解

東京都の公立小・中学校では、発達障害や情緒障害の子の通級は「特別支援教室」で行われます。運営ガイドライン(2021年3月)が定める期間と退室の考え方は、次のとおりです。

項目東京都の定め
指導期間年度初めに入室した場合は原則1年間。年度途中に入室した場合は翌年度末まで
延長年度初めに入室した場合で、目標が未達成・延長後の計画が明確・1年以内に達成見込み、の3つをすべて満たすとき、判定委員会の審議を経て最長1年延長できる
同じ目標での指導最大2年
退室当初の指導目標を達成し、在籍学級での支援につなげていく。必要に応じて指導時間を段階的に減らすなど、真に必要な時間数を検討する

やめどきの目安は、「決めた目標が達成でき、通常の学級での配慮で過ごせるようになったとき」です。先に紹介したとおり、実際には長く続く例も多いので、年度ごとの見直しの場で、目標の達成状況を学校と一緒に確認してください。

東京都以外では、期間や退室の決め方が自治体によって違います。

勧められたときに学校に聞く5つのこと・断ってもいいか

困りごとや目標、時間、見直し、ほかの方法を確認する図解

通級を勧められたら、次の5つを具体的に聞いてみてください。

  1. 困りごと:学校のどの場面で、どんな困難が見えているのか
  2. 目標:通級で何ができるようになることをめざすのか
  3. 時間と形:週何時間か、自校・他校・巡回のどれか、どの授業を抜けるのか
  4. 見直し:いつ、誰と、どうやって効果を確認するのか
  5. ほかの方法:通常の学級での配慮で、今どんな工夫をしているのか

断ることもできます。先の文部科学省の抽出調査(2021年度)では、校内委員会が通級を必要と判断しても通級しなかった主な理由は、「保護者や本人が希望しなかったため」でした。東京都の運営ガイドラインでも、判定委員会に申請する前に保護者との合意形成を行うことになっています。

ただし、断る場合も、困りごとそのものがなくなるわけではありません。通常の学級でどんな配慮を続けてもらえるかを、あわせて話し合っておきましょう。迷うなら、見学や体験ができるかを聞いてみるのも一つの方法です。

子どもへの説明と、周りの目

通級について日本人の父親が子どもへ説明する図解

「通級は恥ずかしい」「友だちに何か言われないか」と心配する声はよく聞かれます。子どもが納得して通えるかどうかは、指導の効果にもかかわります。

子どもに伝えるときは、次の点を意識すると受け止めやすくなります。

  • 「できないから行く」ではなく、「自分に合ったやり方を練習しに行く」と伝える
  • 何をする時間なのかを、具体的に説明する
  • 周りに聞かれたときの答え方を、一緒に決めておく
  • 行きたくない様子があれば、理由を聞いて学校に伝える

特別支援教室のように自分の学校で受ける形なら、他校に通う場合より移動の負担は少なくなります。周りの目が気になるときの考え方は、「特別支援学級はずるい」と言われたらも参考になります。

高校受験・不登校との関係

高校での通級と受験規定、不登校への別の支援を示す図解

高校受験で不利になる?

2026年9月時点で、都立高校の2027年度入学者選抜の実施要綱本体(2026年9月17日公表)を確認しましたが、通級や特別支援教室を利用した生徒の扱いを定めた規定は見当たりませんでした。「不利になる」とも「ならない」とも、公的な規定からは言えないのが現状です。

なお、学校の公式の記録である指導要録には、通級した学校名・時数・期間・内容などを記入することになっています。高校に入ってからの支援について、東京都は、支援を受けることで「成績や進路指導にマイナスの影響が生じることはありません」としています(都立高校での支援についての説明)。高校でも通級は受けられ、都立高校では2021年度から、どの学校でも通級を受けられる仕組みになっています。

特別支援学級に在籍した場合の高校受験は、特別支援学級から高校受験はできる?で解説しています。

不登校の子にも使える?

東京都の運営ガイドラインは、不登校の解消が主な目的の場合は、別室登校など通級以外の枠組みで支援するのが適当としています。発達特性が背景にある不登校で、特性による困難への指導が必要な場合は、通級が選択肢になります。学校に行きにくい段階の支え方は行き渋り・五月雨登校・保健室登校の段階別対応、特性と不登校の関係は不登校と発達障害・HSCで整理しています。

療育の全体像は療育とは?内容・効果の考え方・いつから始めるかで整理しています。

よくある質問

効果を虫眼鏡で確かめるなど通級の疑問を示す図解
Q
通級を勧められたら断れますか?
A

断れます。文部科学省の2021年度の抽出調査でも、校内委員会が必要と判断しても通級しなかった主な理由は「保護者や本人が希望しなかったため」でした。断る場合も、通常の学級での配慮を続けてもらえるよう話し合っておきましょう。

Q
通級の効果はどのくらいで出ますか?
A

子どもの状態や指導の内容によって違います。東京都は原則1年間の指導期間で目標を立て、少なくとも3か月または学期ごとに評価する仕組みにしています。目標を具体的に決めて定期的に確認することが大切です。

Q
通級の時間に抜けた授業はどうなりますか?
A

通常の授業の一部に替えて指導を受ける場合、その時間の授業は受けられません。どの授業を抜けるかは学校ごとに決まるので、始める前に確認してください。

Q
送迎は必要ですか?
A

自分の学校で受ける自校通級や巡回指導なら、送迎は基本的に不要です。他校通級の場合は、文部科学省の2021年度の抽出調査で、調査対象の6割程度の市町村が保護者の送迎を原則としていました。

Q
通級を受けると高校受験で不利になりますか?
A

2026年9月時点で、都立高校の2027年度入学者選抜の実施要綱本体(2026年9月17日公表)には、通級の利用者の扱いを定めた規定が見当たりませんでした。公的な規定からは、不利になるともならないとも言えません。

まとめ:デメリットを具体的に確かめてから、目標を決めて始める

朝の通学路を前向きに歩く日本人の児童の後ろ姿
  • 通級の指導中は、在籍学級の授業を受けられない。東京都も負担として明記している
  • 他校通級は送迎が必要になることがある。全国では自校通級が65.7%
  • 東京都では、目標を達成して退室する割合が区市町村によっておおむね0〜20%と、長く続く例が多い
  • 通級は勉強の遅れを取り戻す場ではなく、障害による困難を改善する指導
  • 東京都の指導期間は原則1年。延長は最長1年で、同じ目標での指導は最大2年
  • 勧められても断れる。断る場合も、通常の学級での配慮を話し合っておく

次の一歩は、学校に「困りごと・目標・時間と形・見直し・ほかの方法」の5つを聞いてみることです。


※本記事は2026年9月時点の法令・国の手引と通知・公開資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の診断や学びの場の判断に代わるものではありません。指導の時間や形、期間、退室の判断は、自治体や学校によって異なります。東京都の情報は特別支援教室の運営ガイドライン(令和3年3月)と関連資料、八王子市の情報は市の資料に基づいています。必ずお住まいの自治体と在籍校にご確認ください。

主な出典:学校教育法施行規則(第140条)/平成5年文部省告示第7号(平成28年文部科学省告示第176号による改正後)/文部科学省「学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の公布について(通知)」(平成28年12月9日 28文科初第1038号)/文部科学省「障害に応じた通級による指導の手引 解説とQ&A(改訂第3版)」より抜粋(文部科学省「初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド」内)/文部科学省 指導要録に関する通知 別紙(平成31年3月29日)/文部科学省「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知)」(令和4年4月27日)/文部科学省「令和6年度 通級による指導実施状況調査」/東京都教育委員会「特別支援教室の運営ガイドライン」・同「指導期間の考え方について」/東京都教育委員会 特別支援教室の入退室等検討委員会報告書/東京都教育委員会 都立高校における支援についての説明資料/東京都教育委員会 高校における通級による指導のリーフレット/東京都 報道発表「令和9年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目について」(2026年9月17日)/八王子市 特別支援教育ハンドブック(令和7年度版・PDF)/文部科学省「令和4年度 通級による指導実施状況調査」(PDF)

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