不登校を「親のせい」と決めつけられる根拠は、当サイトが2026年10月時点で確認した国の3つの調査には見当たりません。令和2年度の実態調査では、不登校を経験した中学生本人のうち、きっかけに「親のこと」を挙げたのは8.9%でした。
家庭に関する項目と不登校のあいだに、関連を示す数字はあります。ただし、その調査の報告書自身が、原因とは言えないと書いています。同じ調査では、本人の27.3%が親のことでつらいと感じたと答えています。
この記事では、文部科学省の調査と委託研究をもとに、「親のせい」「不登校になりやすい家庭」「母親が原因」と言われることを、数字で確かめます。
不登校は親のせい?|結論

当サイトは、不登校を親のせいと決めつける根拠はないと考えます。理由は3つあります。
- 令和2年度の実態調査では、きっかけに親を挙げた本人は1割に届かない(別の調査では27.3%。対象は4つの教育委員会・本人239人)
- 家庭との関連を示した調査自身が、原因ではないと注意している
- 国の基本指針が、保護者を追い詰めないよう配慮を求めている
国の基本指針(2017年3月)は、不登校を「取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るもの」と捉えるとしています。
データで見る|「親」がきっかけに挙がる割合

不登校のきっかけとして「親」は、本人の回答でも、学校が把握した内容でも、最も多い項目ではありません。
本人の回答
文部科学省が2021年(令和3年)10月に公表した「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」は、不登校を経験した本人に、最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけを聞いています(複数回答)。下の表は、上位の項目と家庭に関する項目を抜粋したものです。
| きっかけ | 小学6年生 | 中学2年生 |
|---|---|---|
| 先生のこと | 29.7% | 27.5% |
| 身体の不調 | 26.5% | 32.6% |
| 生活リズムの乱れ | 25.7% | 25.5% |
| 友達のこと(いやがらせやいじめがあった) | 25.2% | 25.5% |
| 勉強が分からない | 22.0% | 27.6% |
| きっかけが何か自分でもよくわからない | 25.5% | 22.9% |
| 親のこと(親と仲が悪かった、親がおこった、親の注意がうるさかったなど) | 6.7% | 8.9% |
| 家族関係 | 4.9% | 6.2% |
| 親の学校に対する考え | 1.3% | 1.8% |
この調査の対象は、調査に協力した学校の小学6年生・中学2年生で、前の年度に不登校だった人のうち、調査期間に登校または教育支援センターへの通所の実績があった人です。回収率は小学6年生が11.7%、中学2年生が8.2%でした。
学校が把握した内容
2024年度(令和6年度)の文部科学省の調査では、学校が不登校の児童生徒について把握した事実を、当てはまるものすべてで答えています。下の表は、割合の高い3項目と、家庭に関する2項目を抜粋したものです。
| 学校が把握した事実 | 小学校 | 中学校 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった | 30.1% | 30.1% | 30.1% |
| 生活リズムの不調に関する相談があった | 26.2% | 24.3% | 25.0% |
| 不安・抑うつの相談があった | 24.1% | 24.4% | 24.3% |
| 親子の関わり方に関する問題の情報や相談があった | 16.9% | 9.9% | 12.6% |
| 家庭生活の変化に関する情報や相談があった | 10.3% | 6.6% | 8.0% |
これは複数回答です。同じ子どもが「親子の関わり方」と「家庭生活の変化」の両方に数えられていることがあるため、2つを足して「家庭が関係するのは約2割」と読むことはできません。
また、これは「情報や相談があった」割合で、「それが原因だった」割合ではありません。
家庭との関連はあるのか|「関連」と「原因」は違う

家庭に関する項目と不登校のあいだには、関連を示す数字があります。ただし、関連があることと、原因であることは別です。
文部科学省の委託で行われた「不登校の要因分析に関する調査研究」(2024年3月公表)は、教師の回答を、不登校の子とそうでない子で比べています。
| 項目(教師の回答) | 不登校でない児童生徒 | 不登校の児童生徒 |
|---|---|---|
| 親子の関わり方 | 2.3% | 13.7% |
| 家庭内の不和 | 1.0% | 5.2% |
| 家庭の生活環境の急激な変化 | 1.7% | 4.4% |
不登校の子のほうが、割合は高くなっています。一方で、不登校の子の8割以上について、教師は「親子の関わり方」にあたる情報を得ていません。
報告書は、この結果の読み方に注意を書いています。「あくまでも回答割合に差があることを示すものであり、そのような要因があることが不登校を引き起こす原因である訳ではなく、また不登校児童生徒すべてにそのような要因がある訳ではないことに注意する必要がある」という一文です。
報告書は、ひとり親・共働き家庭や、就学援助・要保護児童対策地域協議会の支援の対象である家庭についても、教師の回答で不登校との関連がみられたとしています。そのうえで、「不登校になるのは、障がいや発達特性もしくは家庭の困難さを持つ子ども及び保護者に問題があると考えることはできない」と書いています。
続けて、困難さを抱える家庭に対して「十分な支援がなされていない可能性について検討すべきであろう」としています。
教師・本人・保護者で、見えているものが違う
同じ調査は、教師・本人・保護者の3者で、きっかけの認識が大きく違うことも示しています。下の表は一部の項目の抜粋です。
| 項目 | 教師 | 本人 | 保護者 |
|---|---|---|---|
| 不安・抑うつの訴え | 19.0% | 76.5% | 78.4% |
| 体調不良の訴え | 18.5% | 68.9% | 76.5% |
| いじめ被害 | 4.2% | 26.2% | 29.2% |
| 教職員とのトラブル、叱責等 | 2.0% | 16.7% | 20.5% |
| 親子の関わり方 | 13.7% | 27.3% | 26.3% |
本人への質問では、「親子の関わり方」の項目名は「親のこと(親と仲が悪いなど)」です。
心や体の不調は、本人と保護者の7〜8割が挙げているのに、教師の回答は2割弱です。学校から見える範囲だけで「原因」を決めることの難しさが分かります。
親のことは、本人の27.3%、保護者の26.3%が挙げています。親との関係でつらさを感じた子が一定数いることは、数字として受け止める必要があります。不安・抑うつや体調不良に比べると、3〜4割ほどの割合です。
この調査は4つの教育委員会が対象で、回答は教師が1,424人分、本人が239人、保護者が200人です。3者で質問の文も違います。全国の実態をそのまま表す数字ではありません。
「不登校になりやすい家庭の特徴」をどう読むか

「不登校になりやすい家庭の特徴」としてウェブで挙げられる内容には、公的な調査のきっかけ・要因の項目に対応するものと、しないものがあります。
下の表は、当サイトが読んだ競合記事で挙げられていた特徴を、上で紹介した3つの調査の「きっかけ・要因を聞く項目」と照らしたものです。
| 挙げられている特徴 | きっかけ・要因の項目にあるか | 調査から言えること |
|---|---|---|
| 親子関係がうまくいっていない | ある(親子の関わり方) | 不登校の子で割合が高い。ただし原因とは言えないと報告書が明記 |
| 両親の仲が悪い | ある(家庭内の不和) | 同上。教師の回答で不登校の子の5.2% |
| 引っ越し・離婚など環境の急な変化 | ある(家庭の生活環境の急激な変化) | 同上。教師の回答で不登校の子の4.4% |
| 過干渉・過保護 | ない | きっかけ・要因の項目では確かめられない |
| 放任・無関心 | ない | きっかけ・要因の項目では確かめられない |
| 親が完璧主義(一部の記事が挙げる) | ない | きっかけ・要因の項目では確かめられない |
「3つの調査」は、令和2年度の実態調査、令和6年度の問題行動・不登校等調査、不登校の要因分析に関する調査研究です。2026年10月時点で、当サイトが項目を確認しました。
令和2年度の実態調査の保護者向けの質問には、不登校の間に保護者がどう関わったかを聞く項目があります。ただし、不登校の要因として聞いたものではありません。きっかけの項目で近いのは、本人回答の「親の学校に対する考え」で、小学6年生1.3%、中学2年生1.8%でした。
特徴を並べた記事の多くは、出典を示していませんでした。「過干渉」「放任」のように正反対の特徴が同じ一覧に入っていることもあり、多くの家庭がどれかに当てはまって見えやすくなります。
特徴に当てはまるかどうかを数えるより、今の家庭で何が子どもの負担になっていそうかを、本人の様子から見ていくほうが役に立つ、というのが当サイトの考えです。
「母親が原因」と言われるのはなぜか

「母親が原因」という見方を裏づける項目は、上の3つの調査にはありません。きっかけ・要因を聞く項目は「親」「家庭」となっていて、母親と父親を分けていません。
それでも母親が責められやすい背景として、当サイトが読んだ複数の記事は、子育ては母親の役割だという見方が残っていることを挙げています。これは調査で確かめられた事実ではなく、説明の一つです。
保護者の側の数字も見ておきます。令和2年度の実態調査の保護者向けの質問では、回答者の約9割が母親でした(小学6年生の保護者で91%、中学2年生の保護者で88%)。
この保護者のうち、「子供の気持ちを理解するよう努力した」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と答えた人は、合わせて小学6年生の保護者で96%、中学2年生の保護者で94%です。
同じ調査で、「子供の進路や将来について不安が大きかった」に同じように答えた保護者は、小学6年生で74%、中学2年生で78%でした。多くの保護者が、不安を抱えながら子どもに向き合っています。
国の方針|保護者を追い詰めない

国の基本指針は、支援にあたって保護者を追い詰めないことを求めています。
教育機会確保法にもとづく基本指針(2017年3月31日、文部科学大臣決定)は、不登校を「取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るもの」として捉え、「不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮」するとしています。
同じ指針は、支援は本人の意思を十分に尊重して行うとしたうえで、「当該児童生徒や保護者を追い詰めることのないよう配慮しなければならない」と書いています。
文部科学省の2019年(令和元年)10月の通知も、教育委員会に対して、子育てや家庭教育の相談窓口を保護者に知らせることなど、「保護者に寄り添った支援の充実」を求めています。
親はどれくらい自分を責めているか|民間調査

自分を責めた経験のある保護者は少なくありません。ここからは民間団体の調査で、公的な統計ではありません。
| 調査 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| NPO法人 登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク(2022年10月・速報値) | 不登校の子が現在または過去にいる家庭の保護者574人(会員団体などを通じたインターネット調査・複数回答) | 「不登校の原因が自分にあるかもと自分を責めた」64.9%、孤独感・孤立感52.0% |
| 認定NPO法人カタリバ(2023年10〜11月) | 不登校の中学生の子がいる親412人(インターネット調査) | 「自分の育て方が原因ではと、自分を責めた」21.4% |
| NPO法人 多様な学びプロジェクト(2023年10〜12月・速報版) | さみだれ登校・不登校の子の保護者と元保護者1,935件(インターネット調査・複数回答) | 仕事への影響:退職した14.6%、休職・転職した11.5% |
自分を責めた割合は、64.9%と21.4%で大きく違います。2つの調査は、集め方、対象、質問が違います。当事者団体を通じた調査か一般のインターネット調査か、現在と過去の保護者か中学生の親だけか、不登校全体を通した変化か最初の時期の行動か、という違いです。そのまま比べることはできません。
どちらの調査でも、自分を責めた保護者が一定数いることは共通しています。親自身の疲れや仕事との両立については、不登校の子の親のメンタルと仕事で整理しています。
原因探しの次にやること

原因を1つに決めることより、今の子どもの状態を見て、支援とつながることを当サイトはすすめます。
- 睡眠・食欲・体調・行動に、いつもと違う様子が続いていないかを見る
- 学校や相談先のどこか1か所と、親がつながっておく
- 進学の時期が近い場合は、進路の情報だけ先に集めておく
要因分析の報告書も、困難さを抱える家庭に十分な支援がなされていない可能性を検討すべきだとしています。責める対象を探すより、支援を増やすほうへ目を向ける、という考え方です。
親が何を手放してよく、何を持ち続けるかは、不登校の中学生はほっといていい?にまとめました。原因の全体像は不登校の原因ランキング、相談先は不登校の相談先一覧で確認できます。
発達の特性が関係していそうな場合は、不登校と発達障害も参考にしてください。
不登校の定義や最新データ、親が最初に知っておきたいことは不登校とは?定義・最新の人数データ・親が最初に知ることにまとめています。
よくある質問

- Q不登校は親のせいですか?
- A
親のせいと決めつけられる根拠は、当サイトが2026年10月時点で確認した国の3つの調査には見当たりません。文部科学省の令和2年度の調査で、きっかけに「親のこと」を挙げた本人は、小学6年生で6.7%、中学2年生で8.9%でした。
- Q不登校になりやすい家庭の特徴はありますか?
- A
教師の回答では、「親子の関わり方」「家庭内の不和」「家庭の生活環境の急激な変化」が、不登校の子で高い割合でした。ただし、調査の報告書は、これらが不登校を引き起こす原因である訳ではないと明記しています。
- Q不登校は母親が原因ですか?
- A
当サイトが確認した3つの調査で、きっかけ・要因を聞く項目は「親」「家庭」となっていて、母親と父親を分けていません。母親が原因だと示すデータは、この3つの調査にはありません。
- Q「過干渉」や「過保護」は不登校の原因になりますか?
- A
当サイトが2026年10月時点で確認した3つの調査には、きっかけ・要因を聞く項目に過干渉・過保護にあたるものがなく、数字では確かめられません。
- Q周りから「親の育て方のせい」と言われました。どう考えればいいですか?
- A
国の基本指針は、不登校を「どの児童生徒にも起こり得るもの」と捉え、保護者を追い詰めないよう配慮を求めています。つらいときは、保護者だけで相談できる窓口もあります。24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)は、保護者も対象です。
- Q親との関係がきっかけの場合は、どうすればいいですか?
- A
親子だけで解決しようとせず、学校のスクールカウンセラーなど、第三者に入ってもらう方法があります。利用の方法は学校に確認してください。
まとめ

- 不登校を親のせいと決めつける根拠は、当サイトが2026年10月時点で確認した国の3つの調査には見当たりません
- 令和2年度の実態調査では、きっかけに「親のこと」を挙げた本人は小学6年生6.7%、中学2年生8.9%です。別の調査(4つの教育委員会・本人239人)では27.3%でした
- 家庭に関する項目と不登校には関連を示す数字がありますが、報告書は原因ではないと明記しています
- 「過干渉」「放任」などの特徴は、3つの調査のきっかけ・要因の項目では確かめられません
- 国の基本指針は、保護者を追い詰めないよう配慮を求めています
次の一歩は、原因を決めることではなく、学校か相談先のどこか1か所とつながることです。進路の方向に迷うときは、進路コンパスも使ってください。
※本記事は2026年10月時点の公開情報にもとづく一般的な情報提供であり、個別の診断・助言に代わるものではありません。調査の数値は、それぞれの調査の対象・時期・回収率・質問文の範囲で読む必要があります。民間調査は、調査主体と対象を本文に示しています。お子さんや保護者ご自身の心身の状態が心配なときは、医療機関や公的な相談窓口にご相談ください。
主な出典:文部科学省「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」(令和3年10月6日 不登校に関する調査研究協力者会議 資料)/文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」/文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究 報告書」(令和6年3月公表)/義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針(平成29年3月31日 文部科学大臣決定)/文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)/NPO法人 登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク「不登校の家庭への緊急アンケート 結果速報」(2022年10月)/認定NPO法人カタリバ「不登校に関する子どもと保護者向けの実態調査」(2023年)/NPO法人 多様な学びプロジェクト「不登校のこどもの育ちと学びを支える当事者実態ニーズ全国調査」速報版(2024年1月)


