就労継続支援B型が「やばい」と言われる主な理由は、①工賃が低く工賃だけでは生活しにくい、②事業所ごとの質の差が大きい、③報酬改定などで閉鎖する事業所がある、の3つです。制度そのものが悪いわけではなく、事業所の選び方と、困ったときの相談先を知っておくことで避けられる部分も大きくあります。
本記事は2026年10月21日に、工賃・障害年金の金額と報酬改定の情報を更新し、2025年10月から始まった「就労選択支援」、困ったときの相談先、よくある質問を追加して更新しました(2026年8月29日にもよくある質問を追加しています)。
本記事では、B型の工賃(給料)の金額、「ひどい」「やばい」と言われる事業所の特徴と見分け方、閉鎖(つぶれる)への備え方、工賃だけでは生活できないときに使える制度を解説します。B型の利用を考えている方、いま通っている方とご家族に向けた内容です。
B型の仕組み・対象者・利用料・利用の流れを基礎から知りたい方は、先に「就労継続支援B型とは?対象者・工賃・利用料と就労選択支援を解説」をご覧ください。
▼記事を読むのが面倒な人のためにAI解説動画を作りました。読み間違いはご容赦くださいませ。

就労継続支援B型の給料(工賃)はいくら?「生活できない」と言われる理由を徹底検証

就労継続支援B型で支払われるのは「賃金」ではなく「工賃」です。利用者と事業所は雇用契約を結ばないため、最低賃金は適用されません。これが「生活できない」と言われる大きな理由です。
全国平均の工賃と、事業所ごとの差
厚生労働省が公表した最新の統計によると、令和6年度における就労継続支援B型事業所の全国平均工賃は月額24,141円です。令和5年度の22,649円(令和8年3月に厚生労働省が23,053円から修正)から約6.6%増えました。
ただし、この数字には注意点があります。令和6年度の報酬改定で平均工賃月額の計算方法が変更され、従来の「工賃支払対象者数」を分母とする方式から「一日あたりの平均利用者数」を分母とする方式に移行しました。
この変更により、令和5年度以降の数値は従来比で大幅に増加して見えますが、利用者一人ひとりの手取りが急増したわけではありません。参考として、旧計算方式による令和4年度の平均工賃月額は17,031円(時間額243円)でした(厚生労働省「令和4年度工賃(賃金)の実績について」)。
工賃は事業所によって大きく違います。通っている、または検討している事業所の工賃は、都道府県が公表している事業所ごとの工賃実績や、見学のときの説明で確かめてください。
月2万円で暮らせる?障害年金・生活保護との組み合わせ
月2万円台の工賃だけで一人暮らしをするのは、現実的には難しいです。多くの人は、障害年金や家族の支援、生活保護などを組み合わせて暮らしています。
一人暮らしの場合の収支を、例として試算すると次のとおりです(金額は目安です)。
<収入> 障害基礎年金2級(2026年度・月約7.1万円)+ 工賃(月約1.5万円)= 合計約8.6万円
<支出> 家賃4万円 + 光熱費1.2万円 + 食費2万円 + 通信費0.5万円 + 雑費0.6万円 = 合計約8.3万円
この試算には、医療費・交通費・被服費が入っていません。家賃や地域によっては、これだけでは足りないこともあります。障害基礎年金の金額は日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」で確認できます(2026年度は2級が年847,300円、1級が年1,059,125円)。
生活保護を受けながらB型に通う人もいます。工賃は収入として申告が必要ですが、働いて得た収入には勤労控除があるため、工賃の全額が保護費から差し引かれるわけではありません。扱いは福祉事務所で確認してください。
実家で家族の支援を受けながら通う人も多くいます。その場合は、親が高齢になったときの暮らし方も、早めに家族や相談支援専門員と考えておくと安心です(8050問題の原因と対策)。
就労継続支援B型がひどい・やばいと言われる理由

多くの事業所はまじめに運営されていますが、質の差が大きいのも事実です。外から様子が見えにくい場所なので、利用者や家族が「おかしい」と感じたときの見分け方と相談先を知っておくことが大切です。
「ひどい」と言われる事業所でみられること
B型事業所には、利用者が通った日数に応じて国や自治体から報酬(訓練等給付費)が支払われます。利用者を「支援する相手」ではなく「収入源」として扱う事業所では、次のような問題が起きることがあります。
利用者を手放さない「囲い込み」
B型には、利用者の力を伸ばし、希望があればA型や一般就労へ進むのを支える役割もあります。一方で、利用者が辞めると事業所の収入が減るため、次のように「囲い込み」と受け取られる対応がみられることもあります。
こうした対応は「本人のため」という形で行われることもあり、気づきにくいことがあります。おかしいと感じたら、事業所の外の相談先(この記事の「困ったときの相談先」)に相談してください。
食事・送迎の質
食事や送迎の質も、事業所によって差があります。食事代に見合わない内容、衛生管理の不十分さ、送迎時の安全への配慮の不足などが気になる場合は、見学や体験のときに確かめておくと安心です。
就労継続支援B型が潰れる原因と閉鎖の前兆サイン

2024年度の報酬改定では、平均工賃が高い区分の基本報酬が引き上げられ、平均工賃が低い区分の基本報酬は引き下げられました。
B型事業所が倒産・閉鎖に追い込まれる5つの原因
B型事業所の中には、赤字の事業所も一定数あります(福祉医療機構の経営状況の調査)。閉鎖につながりやすい主な原因は次のとおりです。
閉鎖の前にみられることがある変化
閉鎖の前には、次のような変化がみられることがあります。これは当サイトの目安で、当てはまっても閉鎖するとは限りません。いくつも当てはまる場合は、相談支援専門員に相談し、ほかの事業所の情報も集めておくと安心です。
| 変化の例 | 具体的な様子 |
|---|---|
| 職員の入れ替わりが多い | ベテラン職員が突然退職する。スタッフの顔ぶれが数ヶ月で入れ替わる |
| 消耗品や設備の手入れが行き届かない | トイレットペーパー等の消耗品が補充されない。空調の使用が制限される |
| 食事の内容が変わる | おかずの品数が減る。市販の安いパンだけになる |
| 作業が減る | 受注している作業が減り、作業のない時間が増える |
| 送迎が減る | 送迎車が故障しても修理されず、送迎コースが統合される |
職員が短い期間に次々と辞めるのは、経営や運営に問題があるサインのことがあります。現場が混乱すると、利用者への対応が雑になることもあります。
事業所が閉鎖されたら利用者はどうなるのか
事業所が閉鎖されると、通い慣れた場所や人間関係を失うことになり、利用者の負担は大きくなります。事業所には、事業をやめるときに、利用者が引き続きサービスを使えるよう、ほかの事業所などと連絡調整をする義務があります(障害者総合支援法第43条第4項)。
近くの事業所に空きがない、通いやすい場所が見つからないといったこともあるため、早めに情報を集めておくことが大切です。
次の事業所探しは、市区町村の障害福祉窓口や相談支援専門員が手伝ってくれます。自分に合うかどうかは、見学や体験利用で確かめてから決めましょう。
就労継続支援B型の工賃だけでは生活できない場合の対処法と自衛策

B型事業所の構造的な問題を嘆くだけでは生活は改善しません。利用者自身(およびご家族)が取るべき具体的な自衛策を整理します。
経済面の防衛:使える制度を最大限活用する
キャリア面の防衛:B型から「次のステップ」を見据える
就労移行支援への切り替え ── 体調が安定してきたら、一般就労を目指す就労移行支援も選択肢です。原則2年間、職業訓練や就職活動、就職後の定着の支援を受けられます。
A型事業所へのステップアップ ── A型では雇用契約を結ぶため最低賃金が保障されます。現在のB型事業所が「ステップアップに消極的」な場合は、相談支援専門員に直接相談し、事業所の外部から動くことが重要です。
在宅ワーク・副業の検討 ── クラウドソーシング(データ入力、ライティングなど)で、体調に合わせて在宅で収入を得られる場合もあります(生活保護を受けている場合は、収入として申告が必要です)。B型の工賃と合わせた生活設計を検討してみてください。
事業所選びの防衛:「やばい事業所」を見抜く3つのチェックポイント
2025年10月からの変更:B型の前に「就労選択支援」
2025年10月から、B型を新しく利用するときは、原則として先に「就労選択支援」を受けることになりました。就労選択支援は、働き方や向いている仕事を、本人と支援員が一緒に整理するサービスです。50歳以上の人や障害基礎年金1級を受けている人などは、希望すれば利用できますが、受けなくてもB型を利用できます。近くに事業所がないときなどの経過措置もあります。詳しくは市区町村の窓口に確認してください。
就労選択支援の内容や流れは「就労選択支援とは?」で解説しています。
困ったときの相談先
事業所の対応がおかしいと感じたら、一人で抱え込まず、事業所の外の窓口に相談してください。
- 市区町村の障害福祉担当窓口:受給者証を出した窓口です。事業所とのトラブルや、ほかの事業所への変更を相談できます
- 相談支援事業所(相談支援専門員):サービス等利用計画を作った担当者に、事業所との間に入ってもらえます
- 都道府県の運営適正化委員会:福祉サービスの苦情を受け付ける第三者の窓口です
- 市町村の障害者虐待防止センター:暴言や暴力、無視など、虐待が疑われるときの通報・相談先です
辞めたいのに辞めさせてもらえないときの対処は「就労移行支援を辞めたいのに辞めさせてくれない」(A型・B型の場合の節)で解説しています。
就労継続支援B型の「闇」に関するよくある質問

- QB型事業所に通うのは恥ずかしいことですか?
- A
恥ずかしいことではありません。就労継続支援B型は、障害や体調に合わせて働き方を選べるように国が用意した制度であり、利用は権利です。ただ「ここに居続けるしかない」と感じているとしたら、それは本人の問題ではなく、事業所選びや次のステップの情報が届いていないだけかもしれません。本記事の自衛策の章もあわせてご覧ください。
- QB型作業所はやめた方がいいですか?
- A
一概には言えません。体調の安定や生活リズムを整える段階では、B型は有効な選択肢です。ただし「工賃が全国平均を大きく下回る」「支援計画の見直しが何年もない」「一般就労の話が一切出ない」といった事業所であれば、変更を検討する価値があります。見分け方は本記事の「やばい事業所を見抜く3つのチェックポイント」で解説しています。
- Q就労継続支援B型の「闇」とは具体的に何ですか?
- A
主に3つです。①工賃の低さ(全国平均は月2万円台で、時給換算すると最低賃金を大きく下回る)②一部事業所による囲い込み(利用者が定着するほど事業所の収入が安定する構造)③事業所の閉鎖リスク(報酬改定や経営難による突然の閉鎖)。いずれも制度そのものより運営する事業所の質の差から生じています。
- QB型に通っていると「人生終わり」なのでしょうか?
- A
終わりではありません。B型から就労移行支援やA型を経て一般就労に進む人もいますし、B型で長く働き続ける選択も否定されるものではありません。大切なのは「今の事業所が、あなたの次の一歩を一緒に考えてくれるか」です。それが感じられないなら、事業所の変更や他の制度の利用を検討してください。
- Q就労支援B型は怪しいところですか?
- A
就労継続支援B型は、障害者総合支援法にもとづいて国が定めた福祉サービスで、事業所は都道府県などの指定を受けて運営しています。ただし事業所ごとの質の差は大きいため、見学や体験利用で雰囲気や支援内容を確かめてから決めることをおすすめします。
- Q就労継続支援B型で、嫌なことにはどんなものがありますか?
- A
たとえば、工賃が低い、作業が単調、職員やほかの利用者との人間関係、支援が少ないと感じる、といったことがあります。続けるのがつらいときは、職員や相談支援専門員に相談し、作業内容や通う日数の見直し、事業所の変更も考えてください。
- Q就労支援A型とB型、どちらがきついですか?
- A
A型は雇用契約にもとづいて勤務時間や業務が決まるため、求められることが多くなりやすい一方、最低賃金以上の給料が出ます。B型は雇用契約を結ばず、体調に合わせて通いやすい仕組みですが、工賃は低くなります。どちらがつらいかは、人や事業所によって異なります。
B型事業所についてさらに詳しく知りたい方へ

当サイトでは、就労継続支援B型について目的別の記事を用意しています。
| 知りたいこと | 記事 |
|---|---|
| B型の制度・対象・利用の流れ | 就労継続支援B型とは? |
| A型との違い・A型の実態 | A型事業所は「やめとけ」って本当? |
| B型でITスキルを学びたい | A型・B型でプログラミングはできる? |
| 動画編集が学べるB型(東京) | 東京の動画編集が学べるB型ガイド |
| 一般就労を目指したい | 就労移行支援とは? |
障害者総合支援法で使える福祉サービスの全体像は「障害者総合支援法とは?2024年改正のポイントとサービス内容」で整理しています。
まとめ:B型の課題を知り、事業所選びと相談先で自分を守る

就労継続支援B型は、一般就労が難しい人にとって大切な働く場・社会参加の場です。一方で、工賃の低さ、事業所ごとの質の差、閉鎖のリスクという課題もあります。
2024年度の報酬改定で、平均工賃が低い区分の基本報酬は引き下げられました。2026年6月からは、新しく指定を受ける事業所の基本報酬も低く設定されています。報酬の仕組みが変わっている時期なので、利用者側も情報を集めておくことが大切です。
見学や体験で事業所を確かめること、使える制度を知っておくこと、困ったときは事業所の外の窓口に相談することが、自分を守る力になります。B型で長く働くことも、次のステップに進むことも、どちらも大切な選択肢です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事業所を批判・推奨するものではありません。工賃や制度の内容は年度により変わるため、最新の情報は厚生労働省およびお住まいの市区町村の障害福祉窓口でご確認ください。
記事監修: 平川病院 産業医・発達障害専門医




