発達障害の種類は、大きくASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如多動症)・LD(限局性学習症)の3つです。医学的にはこの3つを含む「神経発達症群」という大きなグループがあり、そこには発達性協調運動症やチック症、吃音なども含まれます。
ただ、この分野は法律・医学・日常会話で呼び方がバラバラです。「アスペルガー症候群って今は言わないの?」「診断書の病名が調べた名前と違う」——そう感じたことがあるなら、あなたの混乱には理由があります。この記事では種類の一覧に加えて、その呼び名のズレも整理します。
発達障害の種類は大きく3つ|まず全体像

代表的な3つを並べて比べます。
| ASD(自閉スペクトラム症) | ADHD(注意欠如多動症) | LD(限局性学習症) | |
|---|---|---|---|
| 中心となる特性 | 対人的なやりとりの難しさ、強いこだわり | 不注意、多動性、衝動性 | 読む・書く・計算のうち特定の能力だけが苦手 |
| 困りやすい場面 | 雑談、暗黙のルール、急な予定変更 | 忘れ物、締め切り、順序立て | 書類作成、読解、金額の計算 |
| 知的発達 | 遅れがある場合とない場合がある | 通常は遅れなし | 全体の知能は平均域なのが特徴 |
| 旧・別の呼び方 | アスペルガー症候群、広汎性発達障害、高機能自閉症 | ADD(注意欠陥障害)、多動症 | 学習障害、ディスレクシア(読字のみ) |
| 英語表記 | Autism Spectrum Disorder | Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder | Specific Learning Disorder |
3つは「どれか1つ」ではありません。実際には複数が重なる人が多く、これを併発(併存)といいます。詳しくは後述します。
そもそも発達障害とは?

発達障害とは、脳の働き方の違いによって、物事のとらえ方や行動のパターンに違いがあり、そのために日常生活に支障が出ている状態を指します(国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」より)。
ここで大事なのは、「支障が出ている状態」という部分です。特性があること自体が発達障害なのではなく、その特性と環境が噛み合わず困りごとが生じているときに診断されるという考え方が基本になっています。
病気なのでしょうか
風邪やインフルエンザのような「かかる病気」ではありません。生まれ持った脳の特性であり、大人になってから発症するものでもありません。
一方で、医学的な診断名として存在するため、医療機関で診断され、必要に応じて薬による治療や支援の対象になります。「病気ではないが医療の対象にはなる」という、少し理解しにくい位置づけです。
発達障害は英語で何と言いますか
一般には developmental disorder(発達障害)ですが、医学の診断分類では neurodevelopmental disorders(神経発達症群) という用語が使われます。日本語の「発達障害」より広い範囲を指す言葉です。
【混乱の正体】法律・医学・日常で呼び方が違う

ここが、多くの人がつまずくポイントです。日本には3つの異なる用語体系が同時に存在しています。
| 使われる場面 | 特徴 | |
|---|---|---|
| 発達障害者支援法の用語 | 手帳の申請、福祉サービス、行政の書類 | 2004年の法律の用語がそのまま。古い呼称が残っている |
| DSM-5-TRの用語 | 医療機関の診断、診断書 | 2023年に日本語版が出た最新の診断基準 |
| 日常会話・ネットの用語 | 一般の記事、SNS | 上の2つが混ざっている |
発達障害者支援法の定義(2004年制定)
法律上、発達障害は次のように定義されています。
自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの
(発達障害者支援法 第二条)
「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」「注意欠陥多動性障害」——いずれも、現在の医学の診断名としては使われていない呼び方です。法律が2004年制定で、その後の診断基準の改訂が反映されていないためです。
アスペルガー症候群はどこへ行ったのか
アスペルガー症候群は、2013年のDSM-5改訂で「自閉スペクトラム症(ASD)」に統合されました。広汎性発達障害・高機能自閉症といった呼び名も同様です。
つまり、現在は新たに「アスペルガー症候群」という診断名が付くことは原則ありません。ただし、
- 2013年より前に診断を受けた人は、その診断名のまま生活している
- 法律や福祉の書類には今も残っている
- 本人が公表する際に、当時の呼称で語ることがある
という理由で、言葉としては今も広く使われています。古い呼び方だから間違い、ということではありません。
「〜障害」から「〜症」へ
もう1つの変化が、2023年に日本語版が出たDSM-5-TRでの訳語変更です。「〜障害」とされてきた病名が「〜症」に統一されました。
| 以前の表記 | 現在の表記(DSM-5-TR) |
|---|---|
| 自閉症スペクトラム障害 | 自閉スペクトラム症 |
| 注意欠如・多動性障害 | 注意欠如多動症 |
| 限局性学習障害 | 限局性学習症 |
| 知的障害 | 知的発達症 |
「障害」という言葉が持つ重さを避ける意図があるとされています。診断書の表記が以前と変わっていて驚いた、という場合はこれが理由かもしれません。
自閉スペクトラム症(ASD)とは

対人的なやりとりの難しさと、特定の物事への強い関心・こだわりを中心とする特性です。
- 会話のキャッチボールが続きにくい、雑談が苦手
- 相手の表情や場の空気から意図を読み取りにくい
- 予定の変更や急な指示に強く動揺する
- 関心のある分野には非常に深く没頭できる
- 光・音・匂い・肌触りへの感覚過敏をともなうことが多い
「スペクトラム(連続体)」という名前のとおり、特性の強さは人によって大きく異なります。知的な遅れをともなう人もいれば、まったくない人もいます。
大人になってから気づくケースでは、学生時代は問題なく過ごせたのに、就職して雑談や臨機応変な対応が求められる場面でつまずくというパターンが典型的です。
→ 大人のアスペルガー症候群(ASD)かも?特徴と生きづらさを解消するヒント
注意欠如多動症(ADHD)とは

不注意・多動性・衝動性を中心とする特性です。3つがすべて強く出る人もいれば、不注意だけが目立つ人(不注意優勢型)もいます。
- 忘れ物やケアレスミスが多い
- 締め切りの管理、書類の整理が苦手
- 会議中にじっとしていられない、そわそわする
- 思いついたことをすぐ口にしてしまう
- 興味のあることには過剰に集中する(過集中)
かつて多動をともなわないタイプは ADD(注意欠陥障害) と呼ばれていました。現在はADHDの「不注意優勢型」として扱われます。
女性の場合、多動が目立たず「おとなしいけれど忘れ物が多い子」として見過ごされ、大人になるまで気づかれないことが多いと指摘されています。
→ もしかして大人のADHD?仕事・日常で気になる特徴チェックリストと対策
限局性学習症(LD/SLD)とは

全体の知的発達に遅れがないのに、読む・書く・計算のうち特定の能力だけが著しく苦手という特性です。「限局性」とは「特定の範囲に限られている」という意味です。
| タイプ | 苦手なこと |
|---|---|
| 読字の困難(ディスレクシア) | 文字を読む、文章の意味をとらえる |
| 書字の困難(ディスグラフィア) | 文字を書く、書き写す |
| 算数の困難(ディスカリキュリア) | 数の概念、計算 |
「努力不足」「怠けている」と誤解されやすい特性の代表格です。知能に問題がないぶん、本人も周囲も原因がわからないまま責められ続けることがあります。
大人の場合、書類作成の多い仕事や、暗算が求められる場面で困りごとが表面化します。
3つ以外にもある「神経発達症群」

医学の診断分類では、ASD・ADHD・LD以外にも次のものが同じグループに含まれます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 知的発達症(知的障害) | 概念的・社会的・実用的な領域での困難 |
| 発達性協調運動症(DCD) | 体の動かし方がぎこちない、極端に不器用 |
| チック症/トゥレット症 | 素早い体の動きや発声が1年以上続く |
| 吃音(きつおん) | 滑らかに話すことの困難 |
| コミュニケーション症群 | 言葉の発達や語用(場に応じた使い方)の困難 |
「発達障害=ASD・ADHD・LDの3つ」と説明されることが多いのですが、正確にはもっと広い範囲を含むということです。
→ 吃音と発達障害の関連性とは?大人のADHDで悩む方へ原因と対処法を解説
発達障害は「併発」することが多い

ASDとADHDを併せ持つ、ADHDとLDを併せ持つ——こうした重なりは珍しくありません。DSM-5以降は、ASDとADHDの併記が正式に認められています。
併発している場合、困りごとの現れ方が複雑になります。たとえばASDのこだわりの強さとADHDの衝動性が同時にあると、「決めた手順を守りたいのに、思いつきで動いてしまって守れない」という自分の中での矛盾に苦しむことがあります。
自分の特性を1つの診断名だけで説明しようとすると行き詰まるのは、このためです。
→ ASD・ADHD併発の仕事選び|「アクセルとブレーキ」特性を強みに変える適職15選
発達障害の人はどのくらいいる?「8.8%」の正しい読み方

よく引用される数字が 8.8% です。これは文部科学省が2022年12月に公表した調査結果で、通常の学級に在籍する小中学生のうち、学習面または行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合を指します。2012年の前回調査から2.3ポイント増えました。
ただし、この数字の読み方には注意が必要です。
- 医師の診断ではありません。担任教員らが質問項目に回答した結果です
- したがって「小中学生の8.8%が発達障害」ではなく、「発達障害の可能性があると教員が判断した割合」が正確です
- 調査対象は小中学生であり、大人の割合を示すものではありません
35人学級ならおよそ3人という規模感で、決して珍しいものではない——この理解までが適切な受け止め方です。
自分や家族に当てはまるかもしれないと思ったら

チェックリストで思い当たる項目が多くても、それだけで診断はできません。診断できるのは医療機関だけです。
進め方としては次の順序が現実的です。
- 困りごとを書き出す — どんな場面で、どう困るのかを具体的に。これが受診時にそのまま役立ちます
- セルフチェックで傾向をつかむ — 大人の発達障害グレーゾーンをセルフチェック
- 受診するか決める — 診断のメリット・デメリットは人によって違います。ADHDの診断は受けない方がいい?
- 働き方の困りごとが中心なら、診断前でも相談できる — 就労移行支援は手帳がなくても利用できる場合があります。就労移行支援は手帳なし・グレーゾーンでも利用できる
診断名を確定させることがゴールではありません。困りごとが減ることがゴールです。
よくある質問

Q. 発達障害の種類は結局いくつありますか?
代表的なものはASD・ADHD・LDの3つです。医学の診断分類「神経発達症群」まで含めると、知的発達症・発達性協調運動症・チック症・吃音・コミュニケーション症群なども加わります。
Q. アスペルガー症候群は今は使われない言葉ですか?
診断名としては2013年に自閉スペクトラム症(ASD)へ統合されました。ただし発達障害者支援法には今も記載があり、2013年以前に診断された方はその名称のままです。
Q. 発達障害と知的障害は違いますか?
違います。知的障害は知的機能の全般的な遅れを指し、LDは知能が平均域なのに特定の能力だけが苦手な状態です。ただし医学の分類上はどちらも神経発達症群に含まれ、併存することもあります。
Q. 発達障害は大人になってから発症しますか?
しません。生まれ持った特性であり、大人になって症状に気づく・診断されることはあっても、後天的に発症するものではありません。
Q. 診断書の病名が調べた名前と違うのはなぜですか?
2023年の DSM-5-TR 日本語版で「〜障害」が「〜症」に変更されたためと考えられます。「自閉症スペクトラム障害」が「自閉スペクトラム症」になった、といった変更です。指す内容は同じです。
Q. 種類によって受けられる支援は変わりますか?
診断名そのものよりも、日常生活・就労にどの程度の支障があるかで判断されることが多いです。就労移行支援や障害者手帳の対象になるかは、診断名だけでは決まりません。
まとめ

- 発達障害の代表的な種類は ASD・ADHD・LD の3つ。医学の分類ではさらに広い「神経発達症群」に含まれる
- 定義は「脳の働き方の違いにより、日常生活に支障のある状態」。特性があること自体ではなく、環境との噛み合わせで困りごとが生じているかが基準
- 法律・医学・日常で用語がズレている。アスペルガー症候群は2013年にASDへ統合され、2023年には「〜障害」が「〜症」に変更された
- 複数の種類を併せ持つ「併発」は珍しくない。1つの診断名だけで自分を説明しようとすると行き詰まる
- よく引用される「8.8%」は医師の診断ではなく、教員の回答に基づく調査結果
種類を知ることは出発点にすぎません。次にやるべきは、自分の困りごとがどんな場面で起きるかを具体的に書き出すことです。そこまで整理できれば、受診でも、就労支援の相談でも、話が一気に前に進みます。
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療・助言に代わるものではありません。発達障害の診断は医療機関でのみ行われます。記載内容は2026年7月時点の情報であり、診断基準や制度は改訂されることがあります。最新の情報は、国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センター、お住まいの自治体、かかりつけの医療機関でご確認ください。


