本記事は2026年10月28日に、会話のキャッチボールができない原因(ASD・ADHD・発達障害以外の理由)の説明を医学資料で確かめて見直し、周りの人向けの説明とよくある質問を追加しました。
会話のキャッチボールができないことは、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)の特性で起こることがあります。ただし、それだけで発達障害とは判断できず、緊張や不安、疲れ、会話の経験や慣れ、相手との相性などでも起こります。
発達障害かどうかは、子どもの頃から特性が続いているか、仕事や生活に支障が出ているかなど、会話以外のことも合わせて医師が判断します。
「なぜか会話が弾まない」「いつも一方的に話してしまう」「相手の言いたいことがつかめず固まってしまう」と悩む本人もいれば、「話が噛み合わない家族や同僚にどう接したらいい?」と悩む周りの人もいます。
この記事では、本人と周りの人の両方に向けて、考えられる原因と、試しやすい練習・接し方をまとめます。
▼記事を読むのが面倒な人のためにAI解説動画を作りました。読み間違いはご容赦くださいませ。
会話のキャッチボールができないのは発達障害?考えられる原因

まずは、会話で感じがちな「あるある」をチェックしてみましょう。本人だけでなく、周りの人が「あの人に当てはまるかな」と見る使い方もできます。
こんな「あるある」、ありませんか?会話の悩みチェックリスト
当てはまるものがあれば、このあとの原因と対策を参考にしてください。
| チェック項目 | 具体的な状況例 |
|---|---|
| □ 一方的に話してしまう | 相手が話す隙を与えず、自分の興味のあることを延々と話してしまう。 |
| □ 会話の始め方が分からない | 雑談の輪にどう入ればいいか分からず、タイミングを逃してしまう。 |
| □ 話が急に飛ぶ・脱線する | 会話の途中で思いついた別の話題を、脈絡なく話し始めてしまう。 |
| □ 相槌が不自然になる | 「へぇ」「そうなんだ」しか言えず、会話がそこで終わってしまう。 |
| □ 冗談や皮肉が通じない | 相手の言った言葉をそのままの意味で受け取ってしまい、真に受けてしまう。 |
| □ 表情や空気を読むのが苦手 | 相手が退屈そうなのに気づかず、話を続けてしまう。 |
| □ 質問の意図が分からない | 「最近どう?」のような曖昧な質問に、何をどこまで答えるべきか悩んでしまう。 |
| □ 沈黙が怖くて焦ってしまう | 少しでも間が空くと不安になり、何か話さなきゃと焦って空回りする。 |
これらは、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)の特性と関係していることがあります。ただし、当てはまる数が多いからといって発達障害とは限らず、緊張や慣れなど、ほかの理由でも起こります(このあとの「発達障害以外にも考えられる理由」で紹介します)。
ASD(自閉スペクトラム症)で会話のキャッチボールが苦手になる3つの理由
※かつて「アスペルガー症候群」と呼ばれていたものは、DSM-5(2013年)以降の診断基準ではASD(自閉スペクトラム症)に含まれます(DSM-5の刊行年:米国精神医学会「DSM Frequently Asked Questions」、ASDへの包含:MSDマニュアル プロフェッショナル版「自閉スペクトラム症」)。
なお「会話が続かない」ではなく「話し方が独特・きついと言われる」ことに悩んでいる方は、アスペルガー(ASD)の話し方は独特?きついと言われる理由と、職場で伝わる話し方のコツで、場面別の定型文を紹介しています。
厚生労働省の資料に引用されたe-ヘルスネットの説明では、ASDの症状として「会話が成り立たない」「格式張った字義通りの言語」など、言語やコミュニケーションの障害が認められることが多いとされています。友だちがいても関わりが「しばしば一方的」になりやすいことも挙げられています(厚生労働省「(資料5)自閉スペクトラム症に関する資料」)。
1. 言葉の裏が読めない・文字通りに受け取ってしまう
ASDの特性の一つに、言葉を文字どおりに受け取りやすい傾向があります。たとえば暑い会議室で「ちょっと暑いですね」と言われても、気温の話だと受け取って「そうですね」とだけ返し、「窓を開けましょうか?」という返し方が思い浮かばない、といったケースです。同じ厚生労働省の資料でも、発達障害の人は「比喩的な表現や皮肉や冗談などの理解が困難な場合がある」とされています。こうしたずれが、会話が噛み合わない原因になることがあります。
2. 興味の範囲が限定的で、自分の話が多くなる
好きなことや関心のあることには詳しい人も多く、それは長所にもなります。ただ会話では、相手の興味とは関係なく自分の話に夢中になってしまうことがあり、相手からは「自分の話ばかりする人」と見えてしまうかもしれません。
3. 表情や声のトーンなど、言葉以外の合図を読み取りにくい
会話中は「言葉」だけでなく、「表情」「声のトーン」「身振り」などの情報も行き交っています。MSDマニュアルが紹介する診断基準では、ASDの社会的コミュニケーションの障害の例として、「社会的交流または会話を開始できない,またはそれに反応できない」ことや、他者のボディランゲージやジェスチャー、表情をうまく理解できないことが挙げられています(MSDマニュアル プロフェッショナル版「自閉スペクトラム症」)。言葉以外の合図を読み取りにくいと、相手が話したそうにしている・退屈しているといったサインに気づきにくくなります。
また、厚生労働省の資料では、発達障害の人について、何かに集中しているときに話しかけても注意が向けられないこともあるとされています。騒がしい場所で聞き取りにくい・聞き返しが多い場合は、後で紹介する「聞き取り困難症(LiD/APD)」が関わっていることもあります。
ADHD(不注意・多動性・衝動性)で話が噛み合わないとき
ADHDの「不注意」や「多動性・衝動性」の特性も、会話のずれにつながることがあります。MSDマニュアルが紹介するDSM-5-TRの診断基準では、不注意の症状として「直接話しかけられても聴いていないように見える」「容易に注意をそらされる」、多動性・衝動性の症状として「過度のおしゃべりが多い」「質問が終わる前に衝動的に答えを口走ることが多い」「他者の行為を遮ったり,邪魔をしたりすることが多い」が挙げられています(MSDマニュアル プロフェッショナル版「注意欠如多動症(ADHD)」)。
周りから「話が噛み合わない」と感じられるのは、たとえば次のような場面です。
- 話を聞き漏らす:途中で別のことに気を取られ、相手の話の一部が抜けたまま返事をしてしまう
- 話題が飛ぶ:注意がそれやすく、話の途中で思いついた別の話題に移ってしまい、相手がついていけなくなる
- 質問の途中で答えてしまう:質問を最後まで聞く前に答え、聞かれたこととずれた返事になる
- 話を遮る・被せる:相手が話している途中で、思いついたことを話し始めてしまう
- 自分ばかり話してしまう:話す量が多くなり、相手が話す間(ま)がなくなる
これらは、相手を軽く見ていることや悪気から起きるとは限りません。一方で、話が噛み合わない人がみなADHDというわけでもありません。話が止まらない・話を被せてしまう悩みは、おしゃべりが止まらない大人は発達障害?多弁の原因と本人・周りの人の対処法で詳しく解説しています。
発達障害以外にも考えられる理由
会話のキャッチボールがうまくいかない理由は、発達障害だけではありません。次のような理由でも起こることがあります(いずれも自己判断はできません)。
- 不安や緊張:初対面や目上の人との会話で緊張し、言葉が出てこなくなることは、病気とは言えない範囲でもよくあります。不安がとても強く、会話の場面を避けたり、強い苦痛を感じたりするほどの場合は「社交不安症」のこともあります。MSDマニュアル家庭版「社交不安症」では、社交不安症の人が、途中で何を話していたか分からなくなったり、自分をうまく表現する言葉を見つけられなくなったりするのではないかと不安を抱くことがあるとされ、不安のきっかけになる場面として「会話をすること」も挙げられています。
- うつ病などの心の不調:MSDマニュアル家庭版「うつ病」では、うつ病の人はものごとに集中できなくなることがあり、表情がほとんどなく、抑揚のない話し方をすることもあるとされています。以前は普通に話せていたのに、最近になって会話がつらくなった場合は、こうした不調も考えられます。
- 聞こえの問題:MSDマニュアル家庭版「難聴」では、徐々に現れる難聴は本人が気づかないことがあるとされています。また、聞いた音の情報を理解するところで困難が生じる「聞き取り困難症/聴覚情報処理障害(LiD/APD)」という状態もあります。堺市の報道提供資料(2025年5月)では、主な症状として「聞き返しや聞き誤りが多い」「雑音が多い環境での聞き取りが困難」などが挙げられ、はっきりした原因は分かっておらず、発達障害との関連が指摘されているとされています。
- 疲れや睡眠不足:疲れているときや眠りが足りないときは、誰でも頭が回りにくく、会話が続きにくくなります。
- 会話の経験や慣れ、相手との相性:雑談の経験が少ない、共通の話題が少ない、話すペースが大きく違う相手とは、誰でも会話が続きにくいことがあります。
目安の一つは「子どもの頃からずっとそうなのか、最近になって変わったのか」です。発達障害の特性は子どもの頃から見られるものとされています。最近になって急に会話がつらくなった場合は、心や体の不調も含めて考える必要があります。困りごとが続く場合は精神科・心療内科に、聞こえが気になる場合は耳鼻咽喉科に相談してみてください。
【本人向け】会話のキャッチボールを続けやすくする練習と工夫

特性そのものをなくすことは難しくても、工夫で会話をしやすくできることはあります。ここでは、スポーツの練習のように、段階的に取り組める方法を紹介します。
Step 1《準備編》:不安を減らすための事前準備
試合の前に作戦を立てるように、会話にも準備が大切です。行き当たりばったりで臨むのではなく、事前に準備しておくと不安を減らしやすくなります。
① 目的を一つに絞る「今日のゴール設定」
「楽しく雑談する」といった曖昧な目標は、かえってプレッシャーになります。「〇〇さんに、週末の予定を聞いてみる」「会議で一回は質問する」など、達成可能で具体的なゴールを一つだけ設定しましょう。できたら、それを小さな成功として数えましょう。
② 話題を予測する「会話の地図」作り
相手や場面に合わせて、事前に話す内容をいくつか用意しておきます。天気、ニュース、相手の趣味など、当たり障りのない「安全な話題」をいくつかストックしておくと、沈黙が怖くなくなります。
| 場面 | 準備する話題の例 |
|---|---|
| 職場の同僚と | ・進行中のプロジェクトの進捗 ・最近導入されたツールの使用感 ・会社の近くの新しいランチのお店 |
| 友人との食事 | ・最近見た映画やドラマの感想 ・次の休みの日の予定 ・共通の趣味に関する新しい情報 |
| あまり知らない人 | ・今日の天気や気候について ・出身地や住んでいる場所について ・好きな食べ物や季節について |
Step 2《実践編》:会話をスムーズに進める具体的な型(テンプレート)
会話は、ある程度の「型」を覚えると進めやすくなることがあります。まずはテンプレートを真似ることから始めてみましょう。
③ 相槌は「さしすせそ」+表情で
単調な相槌は、相手に「話を聞いていない」という印象を与えがちです。まずはバリエーションを増やすことを意識しましょう。
- さ:さすがですね!
- し:知りませんでした!
- す:すごいですね!
- せ:センスいいですね!
- そ:そうなんですね!/それは大変でしたね。
言葉だけでなく、少しだけ頷いたり、眉を上げたりと、表情をセットで使うのがポイントです。
④ 質問は「5W1H」で具体的に返す
相手の話を聞いたら、その中から「いつ(When)」「どこで(Where)」「だれが(Who)」「なにを(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」を使って質問を返してみましょう。すると相手は「自分の話に興味を持ってくれている」と感じやすく、会話が続きやすくなります。
例:
相手:「週末、キャンプに行ってきたんだ」
自分:「どこに行ってきたんですか?」「誰と行ったんですか?」
⑤ 話を広げる「拡張オープンクエスチョン」
「はい/いいえ」で終わらない質問(オープンクエスチョン)に、感情や考えを尋ねる言葉をプラスすると、より深い話につながります。
例:
「〇〇について、どう思いましたか?」
「その時、どんな気持ちでしたか?」
「もう少し詳しく教えてもらえますか?」
Step 3《応用編》:心地よい関係を築くために
⑥ 自分のトリセツを伝える「自己開示」
信頼できる相手には、自分の特性を伝えておくのも有効な方法です。「人の話を遮ってしまうことがあるかもしれないけど、悪気はないんだ」「難しい言葉は一度で理解できないことがあるから、簡単な言葉で言ってもらえると助かる」など、事前に伝えておくことで、無用な誤解を防げます。
⑦ 会話に詰まった時の「お助けフレーズ」集
頭が真っ白になってしまった時のために、その場を乗り切るための「お助けフレーズ」を準備しておきましょう。
- 「すみません、少し考えを整理させてください」
- 「面白い視点ですね。もう少し考えてから意見を言ってもいいですか?」
- 「〇〇という理解で合っていますか?」
【周りの人向け】会話のキャッチボールができない家族・同僚への接し方

会話のずれは、本人の努力だけで解決するとは限りません。周りの人の少しの工夫で、やりとりがしやすくなることがあります。
相手が発達障害かどうかを、周りの人が決めつける必要はありません。診断の有無にかかわらず、ここで紹介する伝え方は、多くの人にとって分かりやすいものです。
まずは特性を「知る」ことから始めよう
「空気が読めない」「わがまま」と見えてしまう行動には、悪意ではなく、特性や緊張などが関係していることがあります。まずは、これまで紹介したASDやADHDの特性や、ほかに考えられる理由を知っておくことが、関わり方を考える第一歩です。
伝わりやすくなる関わり方のコツ
① 曖昧な表現を避け、具体的に伝える
「あれ、適当にやっておいて」「なるべく早くお願い」といった曖昧な指示は、混乱の原因になります。厚生労働省の資料でも、発達障害の人への関わり方として、話しかけるときは注意がこちらに向いていることを確認し、「できるだけ具体的な表現で伝える」ことが挙げられています。
- NG例:「この資料、いい感じにまとめといて」
- OK例:「この資料のAとBのデータを引用して、グラフを2つ作り、金曜日の15時までに提出してください」
② 一度に伝える情報は一つだけ
一度に多くの情報を伝えると、処理しきれずにフリーズしてしまうことがあります。指示や依頼は、一つずつ簡潔に伝えることを心がけましょう。
③ 図やテキストなど視覚情報を活用する
口頭での説明に加えて、チャットやメールで要点をテキストで送ったり、簡単な図を描いて説明したりすると、理解しやすくなることがあります。同じ資料では、自閉的な特性(資料では広汎性発達障害)のある人の多くは、ことばよりも「視覚的(目で見てわかる)情報」の方が理解しやすいといわれているとされています。
④ 沈黙を恐れず、考える時間を与える
質問に対してすぐに返事がなくても、それは無視しているわけではなく、頭の中で一生懸命に言葉を探している時間かもしれません。少し待つ姿勢が、本人に安心感を与えます。
「よかれと思って」が逆効果になるNGな関わり方
- 無理に雑談の輪に入れようとする
本人にとっては大きな苦痛である場合があります。 - 「普通はこうだよ」と一般論を押し付ける
特性によって「普通」が難しいことを理解し、具体的な方法を一緒に考える姿勢が大切です。 - 感情的に叱責する
なぜ怒られているのか理解できず、パニックになったり心を閉ざしてしまったりする原因になります。
会話に失敗して落ち込んだ時の心の処方箋

どんなに準備や練習をしても、会話がうまくいかない日はあります。大切なのは、その失敗をどう受け止め、次に活かすかです。
自分を責めないで。失敗は「データ収集」と捉えよう
「またやってしまった…」と自分を責めるのはやめましょう。一つ一つの会話は、あなたにとっての「実験」であり「データ収集」です。「この言い方は伝わりにくかったな」「次は別の聞き方を試してみよう」と、落ち着いて振り返ると、自分を責めすぎずに次に進みやすくなります。
気持ちを切り替えるセルフケア
① 事実と感情を書き出して分ける
「会議でうまく発言できず、みんなに呆れられたに違いない」と感じたとします。
これを、「事実(会議で発言できなかった)」と「感情・推測(みんなに呆れられたに違いない)」に分けて紙に書き出してみましょう。事実と感情を分けて見ると、冷静になりやすくなります。
② 信頼できる人に話して客観的意見をもらう
一人で抱え込まず、パートナーや友人、カウンセラーなど、信頼できる人に話してみましょう。「自分では大失敗だと思っていたけど、周りはそれほど気にしていなかった」といった客観的なフィードバックが得られるかもしれません。
③ 自分の「好き」に没頭する時間を作る
会話で消耗したエネルギーは、自分の好きなことや得意なことに没頭して回復させましょう。趣味の時間、好きな音楽を聴く、美味しいものを食べるなど、自分が心からリラックスできる活動が、次への活力となります。
仕事で会話の苦手さに困ったとき

特に仕事の場面では、コミュニケーションの困難が業務の支障や人間関係のストレスに直結しやすくなります。
職場での具体的な困りごとと対策
| 困りごと | 対策例 |
|---|---|
| 報告・連絡・相談 | ・報告する内容を箇条書きでメモしてから話す。 ・口頭だけでなく、チャットやメールも活用する。 ・「5分だけよろしいですか」と時間を区切って相談する。 |
| 会議 | ・事前にアジェンダを確認し、自分の意見や質問をまとめておく。 ・発言のタイミングが掴めなければ、ファシリテーターに事前に伝えておく。 |
| 雑談 | ・無理に参加せず、会釈や笑顔でやり過ごすのも一つの手。 ・自分の好きなことに関する話題なら、少しだけ話してみる。 |
発達障害の特性を強みに変える働き方とは
コミュニケーションが苦手でも、関心のある分野への集中力や、正確な作業をこつこつ続ける力などが強みになる人もいます。どんな仕事が合うかは人それぞれなので、得意・不得意を書き出して整理しながら考えるのがおすすめです。
合理的配慮と活用できる社内・社外の制度
働く場面での「合理的配慮」は障害者雇用促進法で定められていて、2016年4月から、事業主は過重な負担にならない範囲で障害者に合理的配慮を提供することが義務付けられています(厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」)。たとえば厚生労働省の合理的配慮指針では、発達障害のある人への採用後の配慮の例として、「業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す」「作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する」などが挙げられています。人事部や産業医、社外の就労移行支援事業所などに相談してみましょう。頼み方の例は発達障害の合理的配慮とは?職場で頼める具体例と伝え方でまとめています。
一人で抱え込まないで。専門家や支援機関に相談しよう

もし、日常生活や仕事に大きな支障が出ているなら、専門家や支援機関の力を借りることを検討してください。
相談できる窓口一覧(医療機関・支援センターなど)
- 精神科・心療内科: 発達障害の診断や、うつ病などの治療を受けられる診療科です(発達障害の診療を行っているかは事前に確認を)。
- 発達障害者支援センター: 都道府県・指定都市が設置する専門機関。相談や助言、関係機関との連携などを行います(事業内容は地域で異なります)。
- 就労移行支援事業所: 一般企業への就職を目指す障害のある方向けに、職業トレーニングや就職活動のサポートを提供します。
- 相談支援事業所: 障害のある方の様々な相談に応じます(福祉サービスの利用計画づくりは、原則として特定相談支援事業所が行います)。
- 耳鼻咽喉科: 聞こえの検査を受けられます。聞き返しが多い・騒がしい場所で聞き取りにくいなど、聞こえが気になるときの相談先です。
また、近くに専門の医療機関がない場合や、通院する時間が取れない場合は、オンラインでの診療や相談も選択肢の一つです。
▶ 仕事や学校の悩み、もしかしてASDが原因かも? 治療法やオンライン診療のメリットについて解説|エニキュア
診断を受けるメリット・デメリット
診断を受けることで、自分の特性を客観的に理解し、必要な支援や配慮を受けやすくなる(障害者手帳の取得、障害者雇用の利用など)というメリットがあります。一方で、診断名がつくことへの心理的な抵抗を感じる方もいるかもしれません。メリット・デメリットをよく考え、専門家と相談しながら決めることが大切です。
自分に合った支援の見つけ方
まずは、お住まいの地域の発達障害者支援センターに連絡してみるのがおすすめです。困りごとを伝えると、医療機関や支援機関の情報を教えてもらえることがあります。
「会話のキャッチボールができない」に関するよくある質問
- Q会話のキャッチボールができないのは障害ですか?
- A
会話のキャッチボールができないこと自体は、障害の名前ではありません。ASDやADHDの特性として起こることはありますが、発達障害かどうかは、会話の様子だけでなく、子どもの頃からの経過や仕事・生活への支障などを合わせて医師が判断します。当てはまる点があっても発達障害とは限らず、緊張や不調など、ほかの理由で起こることもあります。
- Q会話のキャッチボールができない人の特徴は?
- A
たとえば①自分の話が続いてしまう ②リアクションが薄く相手が話しづらい ③一言で終わってしまい話が広がらない ④相手の前提知識を考えずに話す ⑤言葉を文字通りに受け取るの5つです。これらは性格の問題として語られがちですが、「話し方の技術」で改善できる部分と、特性として理解したほうがよい部分が混ざっています。
- Q会話のキャッチボールができないのは病気ですか?
- A
必ずしも病気とは限りません。人見知りや緊張、その場の環境(騒がしい・初対面が多い)、疲労や睡眠不足でも会話は続きにくくなります。うつ病などの不調や、聞こえの問題が関係していることもあります。ただし子どもの頃から一貫して続いていて、仕事や人間関係に支障が出ている場合は、ASDやADHDの特性が関係している可能性もあります。判断は医療機関で行われますので、困りごとが続くなら一度相談してみてください。
- Q会話のキャッチボールができないのは男性に多いですか?
- A
医学資料(MSDマニュアル)では、ASDは男児に約4倍の頻度で発生し、ADHDは全体として男児の方が約2倍多いとされています。ただしADHDのうち不注意が中心のタイプは、男女ともほぼ同じ頻度とされています。いずれもASD・ADHDそのものの男女差で、会話が苦手な人の男女差を表すものではありません。性別にかかわらず、困りごとが続くなら相談してみてください。女性の特徴は大人の女性ASD(自閉スペクトラム症)の特徴で解説しています。
- Qアスペルガー症候群(ASD)と関係がありますか?
- A
関係することがあります。現在アスペルガー症候群はASD(自閉スペクトラム症)に含まれます。言葉の裏を読み取りにくい、興味のある話題に集中しやすいといった特性から、会話が一方通行になりやすい場合があります。ただしASDの人が全員そうなるわけではなく、当てはまるからASDとも限りません。
- Q「言葉のキャッチボール」とは違うものですか?
- A
ほぼ同じ意味で使われます。「会話のキャッチボール」「言葉のキャッチボール」はどちらも、一方が話し、相手が受け取って返す、という往復のやりとりを指す言い方です。本記事の内容はどちらの言い方で悩んでいる方にも当てはまります。
- Q子どもの会話が続かない場合も同じ対策でいいですか?
- A
基本的な考え方(否定しない・具体的に伝える・成功体験を積む)は共通しますが、子どもの場合は発達段階による差が大きいため、年齢に応じた見極めが必要です。気になる場合は、学校のスクールカウンセラーや自治体の発達相談窓口、児童精神科などに相談してみてください。
大人のASD(アスペルガー)の特徴と、生きづらさを減らす工夫の全体像は「大人のアスペルガー症候群(ASD)の特徴と、生きづらさを解消するヒント」で整理しています。
まとめ:原因を知って、自分に合った会話のしかたを見つける

会話のキャッチボールができないのは、性格や努力不足だけが原因とは限りません。ASDやADHDの特性のほか、緊張や不安、心の不調、聞こえの問題など、背景はさまざまです。
原因が分からないまま一人で悩み続けず、気になるときは医療機関や支援機関に相談してみてください。周りの人も、相手を決めつけず、具体的に伝える・考える時間を待つといった工夫から始めてみましょう。
重要なのは、一般的な「コミュニケーション上手」を無理に目指すのではなく、自分の特性を理解し、自分に合ったやり方で、相手と心地よい関係を築くことです。
この記事で紹介したトレーニングや工夫は、そのための「杖」や「地図」のようなものです。ぜひ、できそうなものから一つずつ試してみてください。
失敗しても大丈夫です。自分に合うコミュニケーションの形を、少しずつ見つけていきましょう。
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療、専門的な支援に代わるものではありません。発達障害に関する具体的な困りごとや診断については、必ず専門の医療機関や発達障害者支援センターなどにご相談ください。また、記事内で紹介している対策方法は、すべての方に効果があることを保証するものではありません。ご自身の状況に応じて、無理のない範囲でお試しください。
記事監修: 平川病院 産業医・発達障害専門医


