本記事は2026年10月21日に、スタッフと合わない・いじめがつらいときの対処を冒頭にまとめ、相談先(運営適正化委員会・障害者虐待防止センターなど)の役割を法律に沿って見直し、A型・B型事業所の場合を含むよくある質問を追加して更新しました。
就労移行支援事業所に通い始めたものの、「スタッフの態度がどうしても合わない」「支援員が冷たい」「他の利用者から嫌がらせを受けている気がする…」そんな悩みを抱えていませんか?
スタッフと合わない・いじめがつらいときは、我慢して通い続ける必要はありません。まず、いつ・誰に・何をされたかをメモに残し、事業所の管理者かサービス管理責任者に相談します。事業所の中で言いにくい、相談しても変わらないときは、相談支援専門員や、お住まいの市区町村の障害福祉の窓口に相談できます。スタッフの暴言など虐待が疑われる場合は、市区町村(障害者虐待防止センター)に届け出られます。
その悩みは、決してあなたが悪いわけではありません。この記事では、就労移行支援でスタッフや他の利用者と合わない、いじめを受けていると感じたときに、トラブルの具体例、相談前の準備、相談先ごとの役割、事業所を変えるときの注意点を解説します。
人間関係に限らず「行きたくない」「しんどい」気持ち全般は「就労移行支援に行きたくない・辞めたいは甘えじゃない|しんどい時の対処法と相談先」、辞めると決めて手続きを知りたい方は「就労移行支援の辞め方|辞めさせてくれない時の対処と退所の手順」をご覧ください。
記事を読むのが面倒な方のために、AIキャスターによる「ポッドキャスト」を作りました。
読み間違いがありますが、ご容赦ください。
▼就労移行支援の人間関係トラブル対処法:我慢しなくていい!具体的なステップと環境を変える選択肢

それって当たり前じゃないかも?「合わない」「いじめ」の具体例
まずは、あなたの置かれている状況が客観的に見てどうなのか、よくあるトラブル事例と照らし合わせてみましょう。「これって自分だけじゃなかったんだ」と気づくだけでも、少し心が軽くなるかもしれません。

スタッフとのトラブル事例
支援を提供するはずのスタッフとの関係がストレスの原因になることは、残念ながら少なくありません。
- 高圧的な言動や人格否定
「そんなこともできないの?」「だからあなたはダメなんだ」といった、あなたの尊厳を傷つける言葉を投げかけられる。 - 相談しても真剣に取り合ってくれない
悩みを相談しても「気のせいじゃない?」「もっと頑張らないと」と流されたり、真剣に聞いてもらえなかったりする。 - 特定の利用者だけをえこひいきする
お気に入りの利用者とは楽しそうに話すのに、自分には冷たい態度を取るなど、対応に明らかな差がある。 - 合理的配慮を無視した対応
事前に伝えてある障害特性への配慮(例:静かな場所での休憩、指示の出し方など)を無視・軽視される。
このような対応は、適切な支援とはいえません。障害者虐待防止法では、福祉サービスの職員による「著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動」などを虐待としています(第2条第7項第3号、いわゆる心理的虐待)。あてはまるかどうかを自分だけで決める必要はなく、記録を持って外部の窓口に相談できます。
他の利用者とのトラブル事例
同じ目標を持つ仲間であるはずの利用者との間で、トラブルが発生することもあります。
- 悪口や陰口、仲間外れ
聞こえるように悪口を言われたり、グループワークで意図的に外されたりする。 - 私物を隠される、作業の邪魔をされる
休憩中に席を外したら私物がなくなっていた、PC作業中にわざとぶつかられるなど、直接的な嫌がらせ。 - 無視や威圧的な態度
挨拶をしても無視されたり、常に睨みつけられたりして、事業所にいるだけで萎縮してしまう。
このような行為は「いじめ」です。事業所には、利用者が安心して通える環境を整える責任があります。障害者虐待防止法では、職員が他の利用者による暴言や暴力などを放置することも、虐待の一つとしています(第2条第7項第4号)。利用者同士のトラブルでも、遠慮せず事業所に相談してください。
「合わない」と感じるのは、あなたのせいだけではない
たとえ明確ないじめや虐待がなくても、「なんとなくスタッフと価値観が合わない」「事業所の雰囲気が苦手」と感じることもあるでしょう。
就労移行支援は、あなたの大切な時間とエネルギーを使って未来のために投資する場所です。そこで強いストレスを感じ続ける必要はありません。相性が悪い環境で無理をしても、良い結果には繋がりにくいものです。
今すぐできること・やるべきこと|感情的になる前の第一歩
状況を冷静に把握し、具体的な行動に移るためには「準備」が非常に重要です。感情的に行動してしまう前に、まずは以下の2つのことを始めましょう。

やってはいけないNG行動
- 何も言わずに我慢し続ける
心身の健康を損なうだけでなく、状況が悪化する可能性があります。 - 無断欠席を繰り返す
事業所側との信頼関係が崩れ、いざ相談したいという時に不利になることがあります。休む場合は必ず連絡を入れましょう。 - 感情的に相手を攻撃する
相手に反撃の口実を与えてしまい、問題解決から遠ざかってしまいます。
必ずやるべき2つの準備
1. 客観的な事実の記録(5W1H)
相談する際に最も重要になるのが「客観的な事実」です。いつ、誰に、何をされたのかを具体的に記録しておくことで、あなたの主張に説得力が生まれます。手帳やスマートフォンのメモ機能で構いませんので、記録をつけ始めましょう。
【記録のポイント】
| 項目 | 記録する内容の例 |
|---|---|
| When(いつ) | 〇月〇日(〇)午前10時30分ごろ |
| Where(どこで) | 〇〇事業所内のPC訓練室で |
| Who(誰が) | 利用者のAさんと、スタッフのBさん |
| What(何を) | Aさんに「作業が遅い」と聞こえるように言われた。Bさんはそれを聞いていたが注意しなかった。 |
| How(どのように) | 周囲にも他の利用者がいる中で、見下すような口調で言われた。 |
| (どう感じたか) | 非常に悔しく、悲しい気持ちになった。その後の訓練に集中できなかった。 |
2. 信頼できる第三者への相談
一人で抱え込まず、まずは事業所とは関係のない、信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。家族、友人、主治医、カウンセラーなど、あなたの味方になってくれる人です。話すことで気持ちが整理されたり、客観的なアドバイスがもらえたりします。

【3ステップで解決】具体的な対処法ロードマップ
準備ができたら、いよいよ具体的な行動に移ります。以下の3つのステップに沿って進めていくのがおすすめです。
STEP1: 事業所内の信頼できる人に相談する
まずは、事業所内での解決を目指します。ただし、トラブルの相手であるスタッフ本人に直接訴えるのは得策ではありません。
相談相手として適しているのは、管理者やサービス管理責任者(サビ管)です。彼らは事業所全体を管理し、利用者からの相談に対応する立場にあります。
【相談時のポイント】
- アポイントを取る
「ご相談したいことがあるので、お時間をいただけますでしょうか」と事前にアポイントを取りましょう。 - 記録を見せる
準備しておいた記録を見せながら、「いつ、どこで、誰に、何をされたか」を具体的に、冷静に伝えます。 - どうしてほしいかを伝える
「Aさんから私が見えない席に移動させてほしい」「スタッフBさんの言動について、指導してほしい」など、具体的な要望を伝えましょう。
障害者総合支援法では、事業所に利用者の人格を尊重することを求めています(第42条第3項)。また、事業所は利用者からの苦情を受け付ける窓口を設け、受け付けた苦情を記録することになっています(国の指定基準)。苦情の窓口や担当者は、契約のときに受け取った書類(重要事項説明書など)に書かれていることがあります。
STEP2: 外部の公的な相談窓口を活用する
事業所内に相談しても改善が見られない、または相談できる相手がいない場合は、ためらわずに外部の力を借りましょう。事業所の外にも、相談できる窓口があります。多くは無料で相談できます。
相談窓口の一覧
| 相談先 | 役割 | こんなときに |
|---|---|---|
| 相談支援専門員(相談支援事業所) | あなたのサービス等利用計画を作り、利用の状況を定期的に確認する人。事業所との間に入って調整を頼める。 | 事業所の人に直接言いにくい。担当がいる場合はまずここへ(自分で計画を作るセルフプランの場合はいません)。 |
| 市区町村の障害福祉の窓口 | 受給者証(支給決定)を出した窓口。利用者からの苦情について市区町村が調査するとき、事業所は協力することになっている。 | 事業所に相談しても変わらない。事業所を変えたい。 |
| 市区町村障害者虐待防止センター | 障害者虐待の通報・届け出を受け付ける窓口。市区町村の障害福祉の担当課などが担っている。 | スタッフからの暴言や無視など、虐待ではないかと感じる。職員がいじめを放置している。 |
| 都道府県の運営適正化委員会(都道府県社会福祉協議会に設置) | 福祉サービスの苦情を受け付ける第三者機関。相談・助言や事情の調査を行い、双方が同意すれば話し合いの仲立ち(あっせん)もする。 | 事業所や市区町村とのやり取りでも解決しない。第三者に入ってほしい。 |
| 発達障害者支援センター | 発達障害のある人と家族の相談に応じる専門機関。 | 人間関係のつまずきに、自分の特性が関係しているか整理したい。 |
| 法テラス(日本司法支援センター) | 法的なトラブルの相談先を案内する公的機関。収入などの条件を満たすと、無料の法律相談を受けられる。 | 損害賠償など、お金や契約に関わる法的な対応を考えたい(無料相談は民事・家事・行政の相談が対象。収入・資産の条件あり)。 |
| 警察 | 暴力や脅し、物を壊される・盗まれるなどの被害を相談できる。 | 暴力を受けた、物を壊された・盗まれた(緊急時は110番、急ぎでない相談は警察相談専用電話「#9110」)。 |
運営適正化委員会は、社会福祉法で都道府県社会福祉協議会に置くとされている機関です(第83条・第85条)。連絡先は、お住まいの都道府県の社会福祉協議会のサイトで確認できます。障害者虐待防止法では、職員による虐待を受けた本人は市区町村に届け出ることができ、虐待を受けたと思われる人を見つけた人には、市区町村に通報する義務があります(第16条)。
なお、事業所の指定や指導は、都道府県(政令指定都市・中核市では市)が担当しています。外部に相談することで、行政から事業所へ調査や指導が入ることもあります。
STEP3: 環境を変える「事業所の変更(転所)」を検討する
相談しても状況が改善しない場合、あるいは「もうこの事業所に通うこと自体が限界だ」と感じる場合は、事業所を変更する(転所する)という選択肢を考えましょう。体調を崩しているときは、先に休んで主治医に相談してください。
【転所を考えるべきサイン】
- 事業所に行くことを考えると、体調が悪くなる(腹痛、頭痛など)。
- 相談しても「あなたの受け取り方の問題」などと言われ、まともに取り合ってもらえない。
- 事業所全体の雰囲気が悪く、改善が期待できない。
- スタッフの退職・交代が頻繁で、支援体制が安定していない。
あなたにとって、就労移行支援はあくまで「手段」であり、「目的」ではありません。目的は、あなたに合った職場で安定して働くことです。その手段が苦痛でしかないのであれば、ためらう必要はありません。
事業所を辞める・変える前に知っておきたい注意点とポイント
転所を決意した場合に、スムーズに手続きを進め、次の事業所選びで失敗しないためのポイントを解説します。

就労移行支援の利用期間はリセットされる?
就労移行支援の標準利用期間は2年です(障害者総合支援法施行規則第6条の8)。支給決定は事業所ごとではなく本人に対して出るため、事業所を変えても利用期間はリセットされず、前の事業所で使った期間も含めて数えます(国の事務処理要領)。
2年を超えて利用が必要な場合は、市区町村審査会の審査で必要性が認められれば、原則1回・最大1年間延長できることがあります。必ず認められるわけではありません。
延長の判断などの運用は市区町村によって異なることがあるため、お住まいの市区町村の障害福祉の窓口で確認してください。新しい事業所が決まったら、相談支援専門員と市区町村の窓口に伝え、サービス等利用計画や受給者証の手続きを確認しましょう。
次は失敗しない!自分に合う事業所の選び方
次の事業所選びでは、できれば複数の事業所の見学・体験利用をして、ご自身の目で確かめることが大切です。人間関係で悩んだ経験があるなら、「困ったときに誰に相談できるか」「苦情の窓口はどこか」も見学時に聞いておきましょう。
【見学・体験時に確認すべきチェックリスト】
| チェック項目 | 具体的な確認ポイント |
|---|---|
| スタッフの雰囲気 | ・言葉遣いは丁寧か? ・利用者に対して笑顔で接しているか? ・スタッフ同士のコミュニケーションは良好か? |
| 利用者の雰囲気 | ・利用者の表情は明るいか? ・訓練に集中しているか?利用者同士の私語が多すぎないか? |
| 事業所の環境 | ・清掃は行き届いているか? ・パーソナルスペースは確保されているか? ・静かに休憩できるスペースはあるか? |
| プログラム内容 | ・あなたの希望する職種に合った訓練内容か? ・個別支援計画について、具体的に説明してくれるか? |
| 相談・サポート体制 | ・困った時にすぐに相談できる雰囲気か? ・面談は定期的に行われているか? ・管理者やサビ管は信頼できそうか? |
退所・転所をスムーズに進めるための伝え方
現在の事業所に退所・転所の意向を伝える際は、「一身上の都合により」「家庭の事情で」といった理由で問題ありません。詳細を正直に話す義務はありませんが、もし伝える場合は、「〇〇という理由で、環境を変えて頑張りたいと思います」と前向きな形で伝えると、スムーズに進みやすいでしょう。
事業所を変えると決めたら、次の候補を探すときに使ってください。7つの質問に答えると、お住まいの都道府県・市区町村の近くにある事業所から、見学の候補を最大3つ提案します(登録不要・無料)。
▼「辞める・変える」を考え始めた方は、こちらの記事もどうぞ。
後悔しない事業所の選び方は「就労移行支援の選び方|後悔しないための10のチェック項目」でまとめています。
よくある質問
- Q担当の支援員(スタッフ)を変えてもらうことはできますか?
- A
担当を変えてほしいと、管理者やサービス管理責任者に相談することはできます。変えられるかどうかは、事業所の人数や体制によって異なります。直接言いにくいときは、相談支援専門員に間に入ってもらいましょう。
- Q支援員が冷たい・怖いと感じるのは、自分の受け取り方の問題でしょうか?
- A
一人で「自分のせいだ」と決めつけないでください。いつ・何を言われたかを記録し、家族や主治医、相談支援専門員など第三者に見てもらうと、状況を整理しやすくなります。職員による著しい暴言や拒絶的な対応は、法律上の虐待にあたることがあります。
- Q利用者同士のトラブルでも、事業所に相談していいですか?
- A
相談してかまいません。席を離す、グループを分けるなど、事業所ができる対応があります。職員が他の利用者による暴言や暴力などを放置することも、障害者虐待防止法で虐待の一つとされています。
- Q就労継続支援B型・A型事業所でいじめに遭ったときも、相談先は同じですか?
- A
B型・A型も障害福祉サービスなので、事業所の苦情窓口、相談支援専門員、市区町村の障害福祉の窓口、都道府県の運営適正化委員会に相談できます。A型は事業所と雇用契約を結んで働くため、職場のトラブルとして都道府県労働局などの総合労働相談コーナー(厚生労働省)にも相談できます。A型で働いている場合、職場での虐待は市区町村や都道府県にも通報・届出できます。B型の仕組みは「就労継続支援B型とは」で解説しています。
- Q相談したことが相手に知られて、仕返しされないか心配です。
- A
相談するときに「自分が相談したことは伏せてほしい」「すぐには相手に伝えないでほしい」と希望を伝えてください。事業所の中で不安が大きいときは、外部の窓口(相談支援専門員や市区町村)から相談を始める方法もあります。
まとめ:一人で抱え込まないで。あなたには最適な環境を選ぶ権利がある
就労移行支援事業所でのスタッフとの不和やいじめは、決して軽く考えてはいけない問題です。あなたの心と体の健康が、何よりも大切です。
この記事でご紹介した内容を、もう一度おさらいしましょう。
- まずは状況を客観視し、事実を記録する。
- 事業所内の信頼できる人(管理者・サビ管)に相談する。
- 改善しない場合は、市区町村などの外部機関に迷わず相談する。
- 最終手段として、あなたに合う事業所に「転所」する権利がある。
どうか一人で抱え込まず、我慢し続けないでください。あなたには、自分に合った環境で、安心して未来のための訓練を受ける権利があります。
この情報が、あなたの辛い状況を乗り越えるための一助となれば幸いです。

【免責事項】
この記事に記載されている情報は2026年10月時点のものです。制度や相談窓口に関する最新の情報は、お住まいの市区町村や各機関の公式サイトで必ずご確認ください。
記事監修: 平川病院 産業医・発達障害専門医


