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発達障害の就職は難しい?就職率・定着率の公的データと、告知義務・障害者枠と一般枠の分かれ目【2026年9月時点】

就業支援施設の入口へ歩く50代の女性 発達障害ガイド

「発達障害だと就職は難しい」と検索すると、不安をあおる記事と「大丈夫です」と言い切る記事の両方が出てきます。どちらも根拠が薄いので、この記事では厚生労働省の統計と障害者職業総合センターの調査だけを材料に、何が難しく、何は難しくないのかを分けて示します。

先に結論を書きます。難しいのは「入口」で、入ったあとの定着は他の障害より高い、というのが公的データの示す姿です。 あわせて、多くの人が迷う「診断を伝える義務はあるのか」「障害者枠と一般枠のどちらか」を、法律の条文と定着率の数字で整理します。

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結論|難しいのは入口、定着は高い

採用までの狭い入口と入社後の安定した定着を二段階で示す図

公的データを3つ並べると、発達障害の就職の輪郭が見えます。

何を見るか数字出典
ハローワーク経由の就職率(就職件数÷新規求職申込件数)全体43.1%、精神障害者(手帳のある発達障害者を含む)42.8%厚労省「令和6年度 障害者の職業紹介状況等」
就職から1年後に働き続けている割合発達障害71.5%(精神障害49.3%、身体障害60.8%、知的障害68.0%)障害者職業総合センター 調査研究報告書No.137
一般枠で就活した人のうち、診断を伝えたことがない割合76.5%日本財団 2026年7月調査

就職率の43%は「ハローワークに申し込んだ人の4割強が同じ年度に就職した」という意味で、6割が就職できないという意味ではありません(後述)。一方で1年後の定着率は、障害の種別のなかで発達障害がもっとも高い数字です。つまり難しさは「採用されるまで」に集中していて、環境が合えば続く、というのが実像です。

そして4人に3人は診断を伝えずに就活しています。これは制度上の義務がないからできることで、その法的な根拠も後半で説明します。

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就職率で見る|ハローワーク経由の就職率は43.1%

新規求職の申込みと就職の関係を数値なしで示す図

厚生労働省が2025年6月25日に公表した「令和6年度 障害者の職業紹介状況等」によると、ハローワークを通じた障害者の新規求職申込は268,107件、就職件数は115,609件で、就職率は43.1%でした。就職件数は2年連続で過去最高です(厚生労働省「令和6年度 障害者の職業紹介状況等」)。

障害種別就職件数就職率
身体障害者22,704件37.7%
知的障害者22,449件55.6%
精神障害者(手帳のある発達障害者を含む)65,518件42.8%
その他の障害者(手帳のない発達障害者、難病など)4,938件34.7%

この表で発達障害の人が読むべきポイントは2つです。

  1. 精神障害者保健福祉手帳を持つ発達障害者は「精神障害者」に集計されます。 発達障害だけの就職率は公表されておらず、ネット上の「発達障害の就職率は40%」という記述は、精神障害者全体の数字か、古い年度の数字です。
  2. 手帳を持たない発達障害者は「その他」に入り、就職率は34.7%と最も低くなります。 手帳がないと障害者求人に応募できないため、ハローワーク経由では選択肢が狭まることを示しています。

なお就職率の分母は「その年度に新しく申し込んだ件数」なので、前年度から求職を続けている人の就職は分子にだけ入ります。「57%が就職できなかった」と読むのは誤りです。

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働いている発達障害の人の実像|9万1千人・平均13万円・勤続5年1か月

発達障害のある人が働く職業の広がりを対等に示す図

では、実際に雇われている発達障害の人はどんな働き方をしているのか。厚生労働省が5年に一度行う「障害者雇用実態調査」の最新版(令和5年度、調査時点は2023年6月1日)から、発達障害者の数字だけを抜き出します(厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査 結果の概要」)。

項目発達障害者の数字
雇用者数(従業員5人以上の事業所)推計9万1千人(前回2018年調査は3万9千人)
事業所が把握している根拠精神障害者保健福祉手帳 81.7%、医師の診断書 1.0%
診断名の内訳自閉スペクトラム症など 69.1%、ADHD 15.2%、学習障害 2.4%
企業が障害を知った時点採用前 78.0%、採用後 19.9%
職業サービスの職業 27.1%、事務的職業 22.7%、運搬・清掃・包装 12.5%
雇用形態無期契約の正社員 35.3%、無期の正社員以外 23.8%、有期の正社員以外 37.2%
週所定労働時間30時間以上 60.7%、20〜30時間 30.0%
1か月の平均賃金13万円(週30時間以上の人は15万5千円)
平均勤続年数5年1か月
年齢20〜24歳が23.1%で最多。34歳以下の割合が一般より高い

この表には、他の記事で見かけない事実がいくつか入っています。

この調査に出てくるのは、ほぼ「手帳を持ってオープンで働いている人」です。 事業所が手帳で把握している人が81.7%なので、診断を伝えずに一般枠で働いている人は数に入っていません。平均賃金13万円は、短時間勤務の人を含んだ平均で、週30時間以上働く人に限れば15万5千円です。この数字を「発達障害者の給料は13万円」と読むのは、対象を取り違えています。

「発達障害者の職業は事務が29.2%で最多」という記述を見かけますが、これは精神障害者の数字です。 発達障害者の最多はサービスの職業27.1%で、事務は22.7%です。同じ調査の別の章の数字が混ざって広まっています。

そして「企業が障害を知った時点」が採用後という人が19.9%います。入社後に診断を受けた人、または入社後に打ち明けた人がこの数字に入ります。後述する「採用後に知っても企業に配慮義務がある」という制度と合わせて読んでください。

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「難しい」と言われる3つの理由は、企業側の調査に出ています

企業側の三つの不安と応募者側からできる三つの対応を向かい合わせた図

同じ実態調査は企業側にも聞いています。発達障害者を雇用するうえで「課題がある」と答えた事業所は65.3%で、内容の上位3つは次のとおりです。

企業が挙げた課題割合応募者側でできる対応
会社内に適当な仕事があるか76.9%「できる業務・できない業務」を具体的に書き出し、業務の切り出しを提案できる状態で応募する
障害者を雇用するイメージやノウハウがない49.7%就労移行支援やハローワークの支援者に面接や定着支援へ同席してもらう(厚労省の指針で認められています)
採用時に適性、能力を十分把握できるか42.9%職場実習やトライアル雇用など「実際に働いて見せる」入口を使う

「難しい」の正体は、本人の能力ではなく、企業が「どの仕事を任せればよいか分からない」「特性をどう扱えばよいか分からない」でつまずいている点にあります。だから対策は、自分を変えることより、企業のこの3つの不安を先回りして埋めることになります。

企業が実際に行っている配慮の上位は「休暇を取りやすくする・勤務中の休憩を認める」61.2%、「短時間勤務など勤務時間の配慮」50.9%です。裏返せば、配慮を求めるときはこの2つから入るのが通りやすいということです。

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診断を伝える義務はあるのか|法律上の義務はなく、76.5%は伝えていない

伝える選択と伝えない選択を同じ明るさで示し配慮との関係を整理した図

就活で最も多い質問が「発達障害であることを会社に言わなければならないのか」です。答えは、応募者に障害を申告する義務を定めた法律はありません。 障害者雇用促進法が定めているのは企業側の義務(差別の禁止と合理的配慮の提供)で、応募者側に申告義務を課す規定はありません。

厚生労働省の「障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A」は、この点を次のように整理しています(厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第二版】」)。

場面厚労省Q&Aの整理
募集・採用時の合理的配慮障害者本人からの申出が契機になる。申し出なければ企業は配慮のしようがない(Q4-2-2)
一般求人で本人が障害を明らかにしていない場合企業は能力・適性の判断に必要な範囲で質問できるが、障害の確認につながる質問にしてはならない(Q4-2-5)
採用時に伝えず、採用後に配慮を求めた場合妨げられない。企業は障害を把握したら遅滞なく話し合い、配慮を提供する義務がある(Q4-2-5、Q4-2-6)
差別禁止・合理的配慮の対象手帳の有無や週の労働時間で限定されない。手帳のない発達障害者も対象(Q1-3-2)

つまり法律は「伝えない自由」を認めたうえで、「伝えた瞬間から企業に義務が発生する」という設計になっています。伝えるかどうかは、この構造を知ったうえで本人が決めることです。

実際の選択がどうなっているかは、日本財団が2026年7月22日に公表した調査が示しています。発達障害・精神疾患の診断があり、手帳を持たずに一般枠で就活した664人のうち、就職活動で診断を開示したことがない人は76.5%でした。伝えなかった理由の最多は「開示して不採用になったことがある、または不採用を危惧した」で66.4%です。就労中も「職場の誰にも伝えていない」人が37.6%、合理的配慮を手帳の有無にかかわらず求められることを知っていた人は39.5%にとどまりました(日本財団「発達障害・精神疾患の診断を受けた人の就労に関する調査」)。

伝えない選択をする人が4人に3人いる一方、6割は「配慮を求める権利があること」を知らないまま働いています。伝えない選択をするなら、少なくとも「入社後に求めることはできる」と知っておいてください。ADHDの人が就活で「バレる」と感じる経路を一つずつ検証した記事は「ADHDは就活でバレる?8つの経路と伝える義務の有無」にあります。

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障害者枠と一般枠|1年後の定着率は70.4%・49.9%・30.8%

三つの求人経路ごとに働き続ける人の違いを数値なしで示す図

伝える・伝えないの選択は、そのまま「障害者枠か一般枠か」の選択につながります。判断材料として最も重いのは、障害者職業総合センターが求人の種類別に追跡した定着率です(障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」調査研究報告書No.137、2017年)。

求人の種類3か月後の定着率1年後の定着率
障害者求人(障害者枠)86.9%70.4%
一般求人・障害を開示(オープン)69.3%49.9%
一般求人・障害を非開示(クローズ)52.2%30.8%

クローズで一般枠に入った人は、1年後に3割しか残っていません。 障害者枠の7割と比べると差は歴然です。ただしこの数字は「クローズが悪い」ではなく、「配慮のない環境で特性が合わなければ辞めることになる」という因果を示しています。一般枠でも、入社後に開示して配慮を得る道は上の表のとおり残っています。

比べる点障害者枠一般枠
応募の条件原則として精神障害者保健福祉手帳が必要手帳・診断とも不要
求人数・職種少なく、事務補助や軽作業が中心多く、職種を選べる
賃金実態調査の平均13万円が目安(短時間勤務を含む)一般と同じ水準
配慮入社時から前提になる開示しない限り受けられない
向いている人特性による支障が明確で、配慮があれば長く働ける人支障が限定的で、自分で補える人

新卒の場合は待遇の差が法律で禁じられているなど事情が変わるので、判断の手順は「障害者枠と一般枠どっちで就活すべき?新卒学生のための判断ガイド」で確認してください。

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就職までの道筋|診断と手帳の有無で入口が変わります

手帳や受診状況に応じた三つの就職支援の入口を示す図

「難しい」を減らす一番確実な方法は、自分がいまどの入口にいるかを知り、そこで使える窓口を全部使うことです。

いまの状態使える主な入口
診断あり・手帳ありハローワーク専門援助部門、障害者求人、就労移行支援、障害者就業・生活支援センター、転職エージェント
診断あり・手帳なしハローワーク専門援助部門(手帳なしでも相談可)、就労移行支援(医師の意見書で利用できる場合あり)、発達障害者支援センター
診断なし(グレーゾーン)発達障害者支援センター、地域若者サポートステーション、受診して診断・意見書を得る

手帳がなくても就労移行支援を使える場合があることは、「就労移行支援は手帳なし・グレーゾーンでも利用できる」で説明しています。診断を受けるところから始める場合の費用と受診先は「大人の発達障害の検査費用と何科に行くか」を、空白期間がある場合の進め方は「発達障害で無職・引きこもりから就職するには」を参考にしてください。

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就職が難しいと感じたら、先に見直す3つのこと

就職活動で先に見直す求人・職種・支援の三つのポイントを示す図

応募しても通らないとき、努力を増やす前に見直す順番があります。

  1. 求人の種類を間違えていないか。 一般枠のクローズで落ち続けているなら、企業側の「適当な仕事があるか」「適性を把握できるか」という不安に答えられていない可能性があります。障害者枠や実習つきの求人に切り替えると、面接だけで判断されなくなります。
  2. 職種と特性が合っているか。 発達障害者の職業はサービス27.1%、事務22.7%と分散しています。「発達障害向きの仕事」は一つではなく、特性の出方で変わります。ADHDの場合の考え方は「ADHDに向いてる仕事はある?特性を活かせる職種と選び方」にまとめています。
  3. 支援機関を使っているか。 企業の課題の2位は「ノウハウがない」です。支援者が面接や入社後の調整に入ると、企業側のこの不安が消えます。一人で応募し続けるより、就労移行支援や障害者就業・生活支援センターを間に入れるほうが通りやすくなります。
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発達障害の就職に関するよくある質問

Q
発達障害の就職率は何%ですか?
A

発達障害だけの就職率は公表されていません。ハローワーク経由の令和6年度の就職率は全体で43.1%、手帳のある発達障害者を含む精神障害者で42.8%、手帳のない発達障害者などを含む「その他」で34.7%です。この数字は新規求職申込に対する同年度の就職件数の割合で、「就職できない人の割合」ではありません。

Q
発達障害でも正社員になれますか?
A

なれます。令和5年度の障害者雇用実態調査では、雇用されている発達障害者の35.3%が無期契約の正社員です。ただし有期の正社員以外が37.2%と最も多く、正社員になる道は障害者枠でも一般枠でも「まず入って実績を作る」経路が中心です。

Q
面接で発達障害だと伝えるべきですか?
A

法律上の義務はなく、判断は本人に委ねられています。伝えれば企業に合理的配慮の義務が生じ、定着率も上がる傾向があります。伝えなければ配慮は受けられませんが、入社後に伝えて配慮を求めることは妨げられません。一般枠で就活した人の76.5%は伝えていない、という調査結果もあります。

Q
隠して入社して、あとで発達障害だと分かったら解雇されますか?
A

障害を理由にした解雇は障害者雇用促進法で禁止されている差別に当たります。また企業は、採用後に障害を知った場合でも合理的配慮を提供する義務があります。ただし面接で障害に関する質問に虚偽の回答をした場合は別の問題になるので、聞かれたときにどう答えるかは事前に決めておいてください。

Q
グレーゾーンで診断がなくても就職支援は使えますか?
A

使える窓口があります。発達障害者支援センターと地域若者サポートステーションは診断がなくても相談でき、就労移行支援は医師の意見書があれば利用できる場合があります。障害者求人と障害者枠は原則として手帳が必要です。

Q
年齢が高いと発達障害の就職はさらに難しいですか?
A

雇用されている発達障害者は20〜24歳が23.1%で最も多く、34歳以下に偏っています。年齢が上がるほど障害者枠の求人も減るのは事実ですが、職歴と業務の切り出しを具体的に示せる人は、若年層にはない材料を持っています。

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まとめ|「難しい」を、数字で分けて考える

支援者や同僚と一緒に明るい職場で働く日本人の大人

発達障害の就職は、公的データで見ると「入口は狭いが、入れば続く」構造です。ハローワーク経由の就職率は43.1%、1年後の定着率は発達障害が71.5%で障害種別のなかで最も高く、企業がつまずいているのは本人の能力ではなく「仕事の切り出し」と「ノウハウ」でした。

診断を伝える義務はなく、4人に3人は伝えずに就活しています。ただし伝えなければ配慮はなく、クローズで一般枠に入った人の1年後の定着率は30.8%です。伝えるかどうかは、この定着率の差と、入社後にも配慮を求められるという制度を知ったうえで決めてください。 迷ったら、手帳や診断の有無に応じた窓口に、一人で行かずに支援者と一緒に行くことが、企業の不安を消す最短の道です。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の就職活動や法的判断に代わるものではありません。統計は2026年9月時点で公表されている最新の年度のもので、次回の障害者雇用実態調査(2028年度予定)で数値が更新されます。

記事監修: 平川病院 産業医・発達障害専門医

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