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ASD(自閉スペクトラム症)の障害者手帳|等級の目安・もらえないケース・療育手帳との使い分け・申請の流れ

明るい机で二つの選択肢を整理しながら障害者手帳の申請を考える日本人の会社員 福祉の制度

「ASDの診断は受けたけれど、手帳を取るべきか分からない」「申請したのに交付されなかった」——ASD(自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群)の障害者手帳には、ADHDとは少し違う論点があります。知的障害を伴うかどうかで手帳の種類が分かれること、そして対人面の困難が診断書に反映されにくいことです。 この記事では、ASDで取得できる手帳の種類と使い分け、等級の目安、もらえないケースと対処、申請の流れを整理します。

※手帳の等級判定は都道府県・指定都市が行います。この記事は制度の全体像を理解するためのもので、個別の判定を保証するものではありません。診断は医療機関でのみ行われます。

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結論|ASDで取得できる手帳は2種類。知的障害の有無で分かれる

知的障害の有無から精神手帳と療育手帳へ対等に分かれ、両方持てる場合も示す分岐図

先に結論です。ASDで取得できる障害者手帳は「精神障害者保健福祉手帳」と「療育手帳」の2種類で、どちらが対象になるかは知的障害を伴うかどうかで分かれます。

精神障害者保健福祉手帳療育手帳
対象知的障害を伴わないASD(アスペルガー症候群を含む)知的障害を伴うASD
判定の軸日常生活・社会生活の制限の程度知能検査の結果と生活の状況(基準は自治体で異なる)
窓口市区町村の障害福祉担当市区町村の障害福祉担当(判定は児童相談所・知的障害者更生相談所)
等級1〜3級A・B など(自治体により表記が異なる)
更新2年ごと自治体により再判定の時期が異なる

知的障害を伴わない大人のASD(かつてアスペルガー症候群と呼ばれた特性を含む)は、精神障害者保健福祉手帳が対象です。 両方の手帳を持つ人もいます。この記事では、大人の当事者に多い精神障害者保健福祉手帳を中心に解説します。

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ASDで精神障害者保健福祉手帳は取れる?|等級の目安

1級・2級・3級を生活と社会生活の制限の程度として抽象的に並べ、診断名だけでは決まらないと示す図解

取れます。 ASDは発達障害者支援法の対象であり、精神障害者保健福祉手帳の交付対象になります。診断名がASDであれば申請でき、等級は診断名ではなく、日常生活と社会生活にどれだけ制限があるかで判定されます。

等級状態の目安(厚生労働省の判定基準の要旨)ASDで該当しやすい状況
1級日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度常時の援助がないと生活が成り立たない
2級日常生活が著しい制限を受けるか、著しい制限を加えることを必要とする程度対人関係や環境の変化への対応が難しく、家族の援助や配慮のもとで生活している。就労は困難か、大きな配慮が必要
3級日常生活または社会生活に制限を受けるか、制限を加えることを必要とする程度一人で生活できるが、対人関係・仕事の場面で継続的な困難がある。配慮があれば働ける

大人のASDで多いのは3級と2級です。 働きながら手帳を持つ人の多くは3級で、対人面や感覚面の困難が強く就労が難しい場合は2級が該当することがあります。3級で受けられる支援と1・2級との差は精神障害者保健福祉手帳3級とは?で詳しく解説しています。

等級は「困っている実態」で決まる

判定に使われるのは、主治医が書く所定の診断書です。診断書には、日常生活能力の判定(食事・清潔・金銭管理・対人関係・社会性など)と、日常生活能力の程度が記載され、これをもとに都道府県・指定都市が等級を判定します。

ASDでは「一人で外出も買い物もできる」ため、生活能力が高く評価されやすい一方、対人関係・意思疎通・環境の変化への対応といった困難が、本人が言葉にしないと診断書に載らないことがあります。 ここがASDの手帳申請で最も注意すべき点です。

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ASDで障害者手帳が「もらえない」4つのケースと対処

手帳が交付されにくい四つの状況と、見えない配慮や消耗を診察前のメモで伝える対処を示す図解

申請したのに交付されなかった、または想定より低い等級だった——ASDでよくある4つのケースを整理します。

ケース1:初診日から6か月が経っていない

精神障害者保健福祉手帳の診断書は、精神疾患による初診日から6か月以上経過した時点のものが必要です。診断を受けたばかりの場合は、6か月を待ってから申請します。 ASDは生まれつきの特性ですが、手帳の要件としては「精神科等での初診日」が起点になります。

ケース2:確定診断がない(「傾向」「疑い」の段階)

「ASD傾向」「自閉スペクトラム症の疑い」という段階では、原則として申請できません。主治医に確定診断の可否を確認してください。 グレーゾーンの方の働き方については発達障害グレーゾーンで仕事が辛いあなたへにまとめています。

ケース3:診断書に対人・社会面の困難が反映されていない

ASDで最も多いケースです。 「一人で生活できている」「仕事に行けている」という事実だけが診断書に載ると、制限が軽いと判定されます。

対処は、診察の前に次の3点をメモにして主治医へ渡すことです。

  • 対人関係で起きていること(会議で発言の切れ目が分からない、雑談に入れない、指示の意図を取り違える、など)
  • 環境の変化・感覚で起きていること(予定変更で動けなくなる、音や光で消耗する、など)
  • 誰の配慮・援助で生活と仕事が回っているか(家族の声かけ、職場の具体的な調整、など)

主治医は診察室での様子しか見られません。「できている」の裏にどれだけの配慮と消耗があるかは、本人が伝えないと診断書に書けません。

ケース4:症状が軽度と判断された

診断書の内容が正確でも、判定の結果、制限が軽度とされて交付されないことはあります。この場合、状態に変化があれば再申請できます。また、手帳がなくても使える支援(発達障害者支援センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援の一部)があります。手帳なしで使える支援は就労移行支援は手帳なしでも利用できるをご覧ください。

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療育手帳との使い分け|知的障害を伴う場合・両方持つ場合

知的障害を伴うASDと伴わないASDで二つの手帳を使い分け、両方持てる場合と自治体相談を示す図解

療育手帳は知的障害のある人に交付される手帳で、ASDだけでは対象になりません。 ASDに知的障害を伴う場合に、療育手帳の対象になります。

判定は、知能検査の結果と日常生活の状況をもとに、児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)が行います。基準となるIQの目安や等級の区分は自治体によって異なるため、該当するかどうかはお住まいの自治体の障害福祉担当窓口で確認してください。

両方の手帳を持つことはできる

知的障害とASDの両方があり、それぞれの要件を満たせば、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の両方を持つことができます。受けられるサービスは手帳ごとに異なるため、両方を持つことで選択肢が広がる場合があります。

大人になってから療育手帳を申請する場合

子どもの頃に取得しなかった人が、大人になってから療育手帳を申請することも制度上は可能です。ただし、成人の判定は自治体によって運用が異なり、子どもの頃の記録(通知表・検査結果など)を求められることもあります。まず自治体の窓口に「大人になってからの療育手帳の申請について」と相談してください。

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ASDで手帳を取るメリット・デメリット

ASDで手帳を取るメリットと注意点を同じ重さで並べ、雇用枠や配慮と保険・更新・求人内容を整理した図解

メリットとデメリットの全体像は精神障害者保健福祉手帳に共通です。ここではASDの当事者に特に関係の深い点に絞ります。

メリット

  • 障害者雇用枠で働ける:等級を問わず対象。対人面・感覚面の配慮を前提にした求人に応募できる
  • 合理的配慮を求めやすくなる:「手帳を持っている」ことが、配慮を求める際の客観的な材料になる
  • 税の控除:所得税・住民税の障害者控除(等級を問わず対象。1級は特別障害者控除)
  • 支援機関の利用:就労移行支援などの障害福祉サービスを利用する際の判断材料になる

デメリットと注意点

  • 手帳を取ること自体への心理的な抵抗
  • 生命保険の加入時、手帳の所持を告知項目に含める保険会社がある
  • 2年ごとの更新手続き
  • ASD特有の注意:障害者雇用枠は「定型業務・単純作業」に偏る求人も多く、能力に対して業務が限定されることがある。求人の業務内容と配慮内容を必ず確認する

一覧全体は障害者手帳(精神)で受けられるサービス・メリット一覧、ADHDの場合はADHDの障害者手帳をご覧ください。

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申請の流れ|5ステップ

主治医への相談から診断書、窓口申請、判定、交付と更新までを示した手続き図
  1. 主治医に相談する:手帳を取りたい理由(障害者雇用枠で働きたい、配慮を求めたい、など)を伝える。診察前に、困りごとのメモを用意する
  2. 診断書を書いてもらう:初診から6か月以上経過していることを確認。所定の様式は市区町村の窓口かウェブサイトで入手
  3. 市区町村の障害福祉担当窓口で申請する:申請書・診断書・写真・マイナンバーが分かるものを提出
  4. 判定:都道府県・指定都市の精神保健福祉センターで判定される
  5. 交付:申請から交付までは通常1〜3か月程度(自治体により異なる)

障害年金を受給している場合は、診断書の代わりに年金証書の写しで申請できることがあります。ASDを含む発達障害で障害年金の対象になる条件と令和8年度の金額は「発達障害・ADHDの障害年金|条件・金額・働きながら受け取れるか」で扱っています。

手帳の有効期間は2年間で、更新は期限の3か月前から申請できます。更新時には改めて判定されるため、等級が変わることもあります。

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会社に知られる?|オープンとクローズ

会社への開示を本人が選び、オープンとクローズの二つの働き方を対等に示す図解

手帳を取得しても、会社に伝える義務はありません。 勤務先に自動的に通知されることもありません。

現在の職場で開示するかどうかは、困りごとの大きさと職場の理解度で判断してください。開示しない場合でも、「会議は事前に議題を共有してもらえると準備できる」のように、困っている場面と具体的な調整だけを伝えることはできます。伝え方は職場で合理的配慮を求める方法で解説しています。

年末調整で障害者控除を申告すると経理担当者には分かるため、知られたくない場合は確定申告で控除を受ける方法があります。

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ASDの障害者手帳に関するよくある質問

ASDの手帳の種類、等級、もらえない理由、療育手帳、会社への開示、返納と更新を整理したFAQ図解
Q
ASD(アスペルガー症候群)でも障害者手帳は取れますか?
A

取れます。 ASDは発達障害者支援法の対象で、知的障害を伴わない場合は精神障害者保健福祉手帳の交付対象になります。かつてアスペルガー症候群と呼ばれた特性も、現在の診断基準ではASDに含まれ、同じ扱いです。等級は診断名ではなく、日常生活と社会生活の制限の程度で判定されます。

Q
ASDの手帳は何級になりますか?
A

大人のASDで多いのは3級と2級です。 一人で生活できるが対人関係や仕事の場面で継続的な困難がある場合は3級、対人面や感覚面の困難が強く就労が難しい場合は2級が目安です。ただし判定は診断書の内容によるため、自分で等級を選ぶことはできません。

Q
ASDで手帳がもらえないのはなぜですか?
A

初診から6か月経っていない、確定診断がない、診断書に対人・社会面の困難が反映されていない、症状が軽度と判断された、の4つが主な理由です。 ASDで特に多いのは3つ目で、「一人で生活できている」事実だけが載ると制限が軽いと判定されます。診察前に困りごとのメモを用意して主治医に渡してください。

Q
ASDで療育手帳は取れますか?
A

知的障害を伴う場合に対象になります。 ASDだけでは療育手帳の対象にならず、知的障害を伴わないASDは精神障害者保健福祉手帳が対象です。基準となるIQの目安や運用は自治体によって異なるため、お住まいの自治体の障害福祉担当窓口で確認してください。

Q
手帳を取ると会社に知られますか?
A

自動的に知られることはありません。 伝える義務もなく、勤務先に通知される仕組みもありません。年末調整で障害者控除を申告すると経理担当者には分かるため、知られたくない場合は確定申告で控除を受ける方法があります。

Q
診断書は誰に書いてもらえますか?
A

精神障害者保健福祉手帳の診断書は、精神保健指定医または精神障害の診断・治療に従事する医師が作成します。 ASDを診断した主治医(精神科・心療内科)に相談してください。初診から6か月以上経過している必要があります。

Q
手帳を取ったあと、やめることはできますか?
A

できます。 手帳はいつでも返納でき、更新しなければ有効期限で効力がなくなります。取得したことで不利益を受ける制度上の仕組みはありません。必要になったときに申請し、不要になったら返納する、という使い方で問題ありません。

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まとめ|ASDの手帳は「困っている実態を言葉にする」ことから始まる

明るい相談室で日常と仕事の困りごとを整理したメモを使い、支援者と次の一歩を相談する日本人の会社員
  • ASDで取得できる手帳は2種類。知的障害を伴わなければ精神障害者保健福祉手帳、伴えば療育手帳。両方持つこともできる
  • 大人のASDで多い等級は3級と2級。判定は診断名ではなく生活と仕事の制限の程度
  • もらえないケースで最も多いのは、対人・社会面の困難が診断書に反映されていないこと。診察前にメモを用意する
  • 手帳は会社に伝える義務がなく、いつでも返納できる
  • 障害者雇用枠・合理的配慮・税の控除は等級を問わず使える

「できている」ように見える生活の裏で、どれだけの配慮と消耗があるか。それを言葉にすることが、ASDの手帳申請ではいちばん大切です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の判定・助言に代わるものではありません。手帳の等級判定は都道府県・指定都市が行い、療育手帳の判定基準は自治体により異なります。記載した制度の内容は2026年9月時点の情報です。ASDの診断は医療機関でのみ行われます。

記事監修: 平川病院 産業医・発達障害専門医

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