「自分に合った仕事を見つけたいけれど、どうすれば…」
「就労移行支援というサービスがあるのは知っているけど、事業所がたくさんあって、どこを選べばいいのかわからない」
そんな悩みを抱えていませんか?
就労移行支援は、障害のある方が就職し、その仕事を長く続けられるようにサポートしてくれる心強い味方です。しかし、自分に合わない事業所を選んでしまうと、貴重な時間を無駄にしてしまったり、かえって就職への不安が大きくなってしまったりすることも。
この記事では、数多くの就労移行支援事業所の中から「あなたに本当に合った一社」を見つけるための、具体的な選び方を徹底解説します。
この記事を読めば、事業所選びのポイントが明確になり、自信を持って見学や相談へ進むことができます。ぜひ最後まで読んで、未来への大きな一歩を踏み出してください。
▼記事を読むのが面倒な人のためにAI解説動画を作りました。読み間違いはご容赦くださいませ。
まずは基本から!就労移行支援とはどんなサービス?

選び方の話に入る前に、まずは「就労移行支援」の基本について簡単におさらいしましょう。すでにご存知の方は、次の章へ進んでください。
就労移行支援の目的と対象者
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づいた福祉サービスの一つです。一般企業への就職を目指す65歳未満の障害のある方を対象に、就職に必要な知識やスキルの向上から、就職活動のサポート、そして就職後の定着支援まで、一貫して行います。
主に以下のような方が利用しています。
- 企業で働くことを希望している方
- 障害者手帳を持っている、または医師の診断書や意見書がある方
- 65歳未満の方
- 休職中の方や、障害者雇用での就職・転職を考えている方
利用期間と料金(自己負担額)について
利用期間は原則24ヶ月(2年間)です。
料金については、前年度の世帯所得に応じて自己負担額が異なります。具体的な金額は以下の表を参考にしてください。
世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
---|---|
生活保護受給世帯 | 0円 |
市町村民税非課税世帯 | 0円 |
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
上記以外 | 37,200円 |
※利用者負担は前年の所得に応じて決まりますが、約9割の方が自己負担なく(無料で)利用されています。詳細はお住まいの自治体にご確認ください。
就労継続支援(A型・B型)との違い
よく混同されがちな「就労継続支援」との違いは、「一般企業への就職を目指すかどうか」です。
サービス種類 | 目的 | 雇用契約 |
---|---|---|
就労移行支援 | 一般企業への就職と職場定着を目指す訓練の場 | なし |
就労継続支援A型 | 事業所と雇用契約を結び、支援を受けながら働く場 | あり |
就労継続支援B型 | 雇用契約を結ばず、軽作業などを行い工賃を得る場 | なし |
就労移行支援は、あくまで就職するための「学びの場」「準備の場」と捉えると分かりやすいでしょう。
【最重要】後悔しない!就労移行支援の選び方10のチェック項目

ここからが本題です。数ある事業所の中から自分に合った場所を見つけるために、必ずチェックしたい10の項目を解説します。
①通いやすさ(アクセス・事業所の開所時間)
どんなに良い事業所でも、通うこと自体がストレスになっては意味がありません。
- 自宅からの距離と交通手段
無理なく通える範囲か、交通費はどれくらいかかるかを確認しましょう。 - 事業所の開所時間
自分の生活リズムに合っているか、特に午前中が苦手な方は午後から通えるかなども重要です。
週5日で通うことを想定し、心身ともに負担の少ない場所を選びましょう。
②プログラムの内容(基礎スキル・専門スキル・独自プログラム)
プログラムは事業所の「商品」です。自分の目標に合っているか、中身をしっかり確認しましょう。
チェック項目 | 具体的な内容 |
---|---|
基礎スキル | ビジネスマナー、PCスキル(Word, Excel)、コミュニケーション、自己理解など |
専門スキル | プログラミング、Webデザイン、CAD、簿記、MOS資格対策など |
独自プログラム | ストレスコーピング、アンガーマネジメント、企業連携の実践訓練など |
「どんな職種を目指したいか」が明確な方は、それに直結する専門スキルが学べるかを重視しましょう。まだ決まっていない方は、自己分析や多様な職務体験ができるプログラムが充実している事業所がおすすめです。
③事業所の雰囲気と支援員の専門性
事業所の「人」と「空気感」は、継続して通う上で非常に重要です。
- 雰囲気
利用者の方々が安心して過ごせているか、スタッフと利用者のコミュニケーションは活発か。 - 支援員の専門性
障害への理解は深いか、キャリア相談の経験は豊富か。精神保健福祉士やキャリアコンサルタントなどの有資格者がいると、より安心です。
こればかりはWebサイトでは分からないので、必ず見学や体験利用で肌で感じることが大切です。
④就職実績(就職率・就職先企業・職種)
事業所の「実力」を示すのが就職実績です。ただし、数字の高さだけで判断するのは危険です。
- 就職率
高いに越したことはありませんが、「どのような計算方法か」も確認しましょう。 - 就職先企業・職種
どのような業界・職種の企業へ就職している方が多いのか。自分の希望と合っているかを確認します。大手企業への実績が豊富な事業所もあれば、地元の優良企業とのパイプが太い事業所もあります。
⑤【競合との差別化点】定着実績(定着率・定着支援の内容)
就職はゴールではなく、スタートです。 本当に重要なのは、就職後にその職場で長く働き続けられること。そこで注目すべきが「定着率」と「定着支援」です。
- 定着率
就職後、6ヶ月や1年経過した時点で働き続けている人の割合です。これは事業所のサポートの質を示す重要な指標です。高い定着率を公開している事業所は、信頼できる可能性が高いです。 - 定着支援の内容
- 面談の頻度: 就職後、本人と企業、事業所の三者でどのくらいの頻度で面談を行うのか。
- 連絡手段: 困った時にすぐに相談できるか(電話、メール、LINEなど)。
- 職場との連携: 事業所が企業側とどのように連携し、配慮事項の調整などを行ってくれるのか。
手厚い定着支援がある事業所は、あなたが新しい環境に慣れるまで、力強くサポートしてくれます。
⑥事業所の規模と設備
事業所の物理的な環境もチェックしましょう。
- 規模
大規模事業所はプログラムが豊富で仲間も多い一方、小規模事業所はアットホームで個別対応が手厚い傾向があります。どちらが自分に合うか考えましょう。 - 設備
PCは一人一台使えるか、静かに集中できる自習スペースはあるか、相談室はプライバシーが守られているかなどを確認します。
⑦障害への配慮と理解
自分の障害特性に合った配慮を受けられるかは、安心して訓練に取り組むための大前提です。
- 専門スタッフの在籍
発達障害や精神障害など、特定の障害に関する専門知識を持つスタッフがいるか。 - 環境面の配慮
感覚過敏に配慮した静かなスペースがあるか、休憩室はリラックスできるかなど。 - プログラムの個別調整
体調に合わせて参加時間を調整できるか、苦手なプログラムは別のものに代替できるかなど、柔軟な対応が可能か確認しましょう。
⑧利用者の口コミ・評判
実際に利用している(していた)人の声は、非常に参考になります。
- 公式サイトの「利用者の声」
事業所の強みや雰囲気を知る手がかりになります。 - Googleマップの口コミやSNS
より客観的でリアルな意見が見つかることもありますが、あくまで個人の感想として参考程度に留めましょう。
⑨食事や交通費の補助制度
事業所によっては、昼食の提供や交通費の補助がある場合があります。毎日のことなので、意外と大きなポイントになります。経済的な負担を少しでも減らせるか、確認しておきましょう。
⑩【競合との差別化点】オンライン(在宅)利用の可否とサポート体制
体力的な問題や対人関係の不安から、在宅での利用を希望する方も増えています。
- オンライン対応の有無
自宅からプログラムに参加できるか。 - オンラインプログラムの内容
通所と比べて内容に遜色はないか。 - コミュニケーション
オンラインでもスタッフや他の利用者と円滑にコミュニケーションが取れる工夫(チャットツール、オンライン面談など)があるか。 - ハイブリッド利用
「週に数日は通所し、他は在宅」といった柔軟な利用が可能かも確認すると良いでしょう。
※在宅利用の可否や条件は事業所やお住まいの自治体によって異なるため、必ず事前にご確認ください。
失敗しないための具体的な5ステップ

では、実際にどのような順番で事業所選びを進めていけば良いのでしょうか。5つのステップで解説します。
STEP1:自己分析(自分の得意・苦手、希望の働き方を整理する)
まずは自分自身を知ることから始めましょう。
- 得意なこと・苦手なこと
PC作業は好きか、人と話すのは得意か。 - 障害特性と必要な配慮
どんな環境だと集中できるか、どんな配慮があれば働きやすいか。 - 希望する働き方
職種、勤務時間、給与、勤務地など。
これらを書き出すことで、事業所に求めるものの軸が明確になります。
STEP2:情報収集(Webサイト、自治体の窓口、説明会)
自己分析で出てきた軸をもとに、候補となる事業所を探します。
- Webサイト
LITALICO仕事ナビなどのポータルサイトや、各事業所の公式サイトで情報を集めます。 - 自治体の障害福祉窓口
お住まいの地域の事業所リストをもらえたり、相談に乗ってもらえたりします。 - 合同説明会
複数の事業所の話を一度に聞ける良い機会です。
STEP3:問い合わせ・資料請求
気になる事業所がいくつか見つかったら、電話やWebフォームから問い合わせてみましょう。資料請求をするだけでも、より詳しい情報を得られます。この時の対応の丁寧さも、事業所の雰囲気を見る一つの判断材料になります。
STEP4:見学・相談(複数の事業所を比較しよう)
必ず複数の事業所(最低でも2~3ヶ所)を見学しましょう。 1ヶ所だけだと比較対象がなく、その事業所の良し悪しを客観的に判断できません。見学では、次の章で紹介するチェックリストをぜひ活用してください。
STEP5:体験利用(実際のプログラムや雰囲気を肌で感じる)
ほとんどの事業所では、正式な利用契約の前に1日~数日間の体験利用が可能です。
- 実際のプログラムに参加してみる
- 他の利用者さんと話してみる
- 支援員の方に相談してみる
など、実際に体験することで「本当に自分に合っているか」を最終確認できます。
【そのまま使える】見学・体験時に役立つ質問リスト&チェックシート

見学に行っても、「何を聞けばいいか分からない」「緊張して忘れてしまった」となりがちです。以下のリストを印刷したり、スクリーンショットを撮ったりして、ぜひ活用してください。
チェック項目 | 質問例 / 確認ポイント |
---|---|
プログラムについて | □ 1週間の具体的なスケジュールを教えてください。 □ 専門スキル(PC、デザイン等)はどのレベルまで学べますか? □ プログラム内容は個別に調整してもらえますか?(例:苦手なものは外す等) |
支援員について | □ スタッフの人数と、専門資格(精神保健福祉士等)を持つ方の割合は? □ 担当の支援員は決まっていますか?相談しやすい雰囲気ですか? □ 支援員の方は、どんなことを大切に支援していますか? |
就職活動について | □ 企業インターン(実習)の機会はありますか?実績も教えてください。 □ 履歴書の添削や面接練習は、どのように行いますか? □ 平均して、どれくらいの期間で就職される方が多いですか? |
定着支援について | □ 就職後の面談は、どれくらいの頻度で行いますか? □ 職場での悩みが出た際、企業側とどのように連携してくれますか? □ 定着支援の期間はどれくらいですか? |
事業所の環境 | □ 利用者の方々の男女比や年齢層は? □ 静かに集中できる自習スペースはありますか? □ PCは一人一台使えますか?スペックやソフトも確認。 |
その他 | □ 昼食はどうしている方が多いですか?(お弁当、外食など) □ 交通費の支給はありますか? □ オンラインでの利用も可能ですか?その場合のサポートは? |
このチェックシートを基に、あなた自身の気になる点を加えて、オリジナルの質問リストを作成するのもおすすめです。
就労移行支援選びでよくある質問(Q&A)

最後に、就労移行支援選びに関するよくある質問にお答えします。
- Q複数の事業所を併用できますか?
- A
いいえ、就労移行支援のサービスを同時に複数の事業所で利用することはできません。受給者証は一人一枚のため、契約は一つの事業所のみとなります。だからこそ、契約前の事業所選びが非常に重要になります。
- Q見学に行ったら契約しないといけませんか?
- A
いいえ、その必要は全くありません。見学や相談、体験利用は、あくまで自分に合うかどうかを判断するためのものです。合わないと感じたら、遠慮なく断って大丈夫です。事業所側もそれは理解しています。
- Q家族と一緒に見学に行っても良いですか?
- A
はい、ぜひご家族と一緒に見学してください。多くの事業所が家族同伴の見学を歓迎しています。客観的な意見をもらえたり、自分では聞きづらいことを質問してもらえたりするメリットがあります。
- Q途中で事業所を変えることはできますか?
- A
はい、可能です。もし利用を開始してから「どうしても合わない」と感じた場合は、契約を終了し、別の事業所と契約し直すことができます。ただし、手続きに時間がかかることや、利用できる合計期間(原則24ヶ月)はリセットされない点に注意が必要です。最新の情報や手続きについては、必ずお住まいの自治体の障害福祉窓口にご確認ください。
まとめ:自分に合った就労移行支援を見つけて、未来への一歩を踏み出そう

就労移行支援事業所を選ぶことは、あなたのこれからのキャリアを左右する重要な決断です。たくさんの事業所があって迷うと思いますが、今回ご紹介した10のチェック項目と5つのステップに沿って進めれば、きっとあなたにぴったりの場所が見つかるはずです。
大切なのは、Webサイトの情報だけで判断せず、必ず自分の足で複数の事業所を見学し、肌で感じることです。
この記事が、あなたの不安を少しでも解消し、未来への一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。あなたの新しいスタートを心から応援しています。