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発達障害の偏食は「わがまま」じゃない!原因と家庭でできる7つの対策

発達障害ガイド

「今日も、ほとんど食べてくれなかった…」
毎日の食事が、まるで終わりの見えない戦いのように感じていませんか?

栄養バランスを考えて一生懸命作った料理に、ほとんど口をつけない我が子。周囲からは「好き嫌いはダメよ」「愛情が足りないんじゃない?」といった心ない言葉をかけられ、ついには「私の育て方が悪いのかもしれない」と、ご自身を責めてしまってはいないでしょうか。

もし、その頑なな偏食が、本人の「わがまま」でも、あなたの「育て方」のせいでもないとしたら。

この記事は、発達障害の特性と「食」の深い関係について、専門家の監修のもとで徹底解説します。なぜ食べられないのか、その本当の理由を知ることで、あなたの心はきっと軽くなるはずです。

食事の時間が、親子にとって少しでも穏やかなものに変わる。その第一歩を、ここから踏み出してみませんか。

▼記事を読むのが面倒な人のためにAI解説動画を作りました。読み間違いはご容赦くださいませ。

  1. こんな「食べない」に悩んでいませんか?具体的な偏食の例
    1. 大切なのは「偏食=しつけの問題ではない」と理解すること
  2. なぜ?発達障害のある子に偏食が見られやすい4つの理由
    1. 1. 感覚過敏・鈍麻|味、匂い、食感、見た目が受け付けられない
    2. 2. こだわりの強さ|特定の手順や食べ物しか受け付けない
    3. 3. 想像力の特性|見慣れない食べ物への不安が強い
    4. 4. 体の動かし方の不器用さ|うまく噛めない、飲み込めない
  3. 家庭で明日から試せる!偏食を和らげる7つのステップ
    1. STEP1: まずは安心できる食環境づくりから
    2. STEP2: 「食べないものリスト」で原因を探る
    3. STEP3: 調理法を工夫してみる(見た目・食感・味)
    4. STEP4: スモールステップで「食べられた」成功体験を積む
    5. STEP5: 食事の決定に本人を参加させる
    6. STEP6: 支援グッズや便利アイテムを活用する
    7. STEP7: 栄養面の不安との付き合い方
  4. 【年代別】偏食への具体的なアプローチ
    1. 幼児期:遊びの延長で食材に親しむ
    2. 学童期:給食問題とどう向き合うか
    3. 思春期・成人期:自己理解と社会との折り合い
  5. 大人の発達障害と偏食|当事者ができること・周囲ができること
    1. 自身の特性を理解し、受容する
    2. 栄養バランスを補う工夫
    3. 周囲へカミングアウトする際のポイント
  6. 専門機関への相談|一人で抱え込まず、プロに頼ろう
    1. 相談できる場所リスト
    2. 専門機関ではどんなサポートが受けられる?
  7. まとめ:焦らず、子どものペースに寄り添うことが一番の近道

こんな「食べない」に悩んでいませんか?具体的な偏食の例

発達障害の特性が関係する偏食には、様々なパターンがあります。

偏食のタイプ具体的な例
感覚による偏食・特定の食感(ドロドロ、パサパサなど)が苦手
・匂いの強いものが食べられない(納豆、香味野菜など)
・食べ物の見た目(色、形)で食べられるか判断する
こだわりによる偏食・毎日同じメニューしか食べたがらない(同じ銘柄のパン、同じ味のふりかけなど)
・食べ物の配置や食器にこだわりがある
・料理に少しでも苦手なものが入っていると、全体を食べなくなる
不安による偏食・初めて見る食べ物や、見慣れない料理に強い抵抗を示す
・外食や給食など、いつもと違う環境で食べられない
身体機能による偏食・口周りの筋肉の使い方が不器用で、硬いものを噛むのが苦手
・うまく飲み込むことができず、丸飲みしてしまう

これらの例に複数当てはまる場合、その背景には発達障害の特性が隠れている可能性があります。

大切なのは「偏食=しつけの問題ではない」と理解すること

最も重要なことは、発達障害による偏食は、本人が意図的に食べない「わがまま」とは全く違うということです。本人は食べたくても、脳の特性や感覚の過敏さによって「食べられない」のです。

この点を理解するだけで、保護者の方の気持ちは少し楽になるはずです。食事の時間を「食べさせる戦いの時間」から、「本人の特性を理解し、寄り添う時間」へと変えていくことが、解決への第一歩となります。

なぜ?発達障害のある子に偏食が見られやすい4つの理由

発達障害、特に自閉スペクトラム症(ASD)のあるお子さんになぜ偏食が多く見られるのでしょうか。その背景には、主に4つの生まれ持った特性が関係していると考えられています。

1. 感覚過敏・鈍麻|味、匂い、食感、見た目が受け付けられない

私たちの脳は、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)から入ってきた情報を適切に処理しています。しかし、発達障害のある人は、この情報処理に偏りがある場合があります。

  • 味覚・嗅覚の過敏
    一般的な人が感じないようなわずかな苦味や酸味、匂いを強く感じ取ってしまい、食べ物を「危険なもの」と認識してしまう。
  • 触覚の過敏
    口の中の特定の食感(ドロドロ、ネバネバ、プチプチなど)に強い不快感を抱く。舌触りや喉越しが受け入れられない。
  • 視覚の過敏
    特定の色(例:緑色の野菜)や、混ざり合った状態の食べ物(例:混ぜご飯、あんかけ)を情報として処理しきれず、混乱して食べられない。
  • 感覚の鈍麻
    逆に感覚が鈍く、味や食感がはっきりしないと食べた気がしないため、濃い味付けや歯ごたえのあるものばかりを好むケースもあります。

2. こだわりの強さ|特定の手順や食べ物しか受け付けない

発達障害の特性の一つに、「同一性へのこだわり」があります。これは、いつもと同じ手順や環境であることに安心感を覚える特性です。

食事の場面では、このこだわりが以下のように現れます。

  • 特定の食品への執着
    いつも食べている特定の商品でないと受け付けない(例:A社のウインナーは食べるが、B社のものは食べない)。
  • 食べ方のマイルール
    ご飯とおかずを絶対に混ぜてはいけない、特定のお皿でないと食べない、など自分だけのルールがある。
  • 変化への抵抗
    パッケージが変わっただけで食べなくなったり、いつもと違う調理法だと警戒したりする。

このこだわりは、本人にとって世界を予測可能で安心できるものにするための、大切な心の防衛策なのです。

3. 想像力の特性|見慣れない食べ物への不安が強い

「これを食べたら、どんな味がするんだろう?」と想像を膨らませることは、食の楽しみの一つです。しかし、発達障害の特性として、見通しを立てたり、未知の物事を想像したりすることが苦手な場合があります。

そのため、食べ慣れない食材や料理を前にすると、「どんな味がするかわからない」「食べたらどうなるかわからない」という強い不安に駆られてしまいます。大人から見れば些細な変化でも、本人にとっては未知との遭遇であり、大きな勇気が必要なのです。

4. 体の動かし方の不器用さ|うまく噛めない、飲み込めない

発達性協調運動症(DCD)を併せ持つ場合など、体の動かし方が不器用な特性が見られることがあります。これは食事の場面でも影響します。

  • 口腔機能の問題
    唇や舌、顎を協調させて動かすのが苦手で、「噛む」「すりつぶす」「飲み込む」といった一連の動作がスムーズにできない。
  • 姿勢の保持
    体幹が弱く、食事中に正しい姿勢を保つことが難しい。そのため、食べることに集中できず、疲れやすい。

本人は食べたくても、うまく食べられないために食事を避けている可能性も考えられます。

家庭で明日から試せる!偏食を和らげる7つのステップ

偏食の原因が特性にあると理解した上で、次にご家庭でできる具体的なアプローチを7つのステップでご紹介します。大切なのは、一度にすべてをやろうとせず、お子さんのペースに合わせて一つずつ試していくことです。

STEP1: まずは安心できる食環境づくりから

食事の時間が「また怒られる…」というプレッシャーの場になっていませんか?まずは、本人がリラックスして食事に臨める環境を整えることが最優先です。

環境調整のポイント具体的な工夫
集中できる環境・テレビを消し、おもちゃなどを片付ける
・視界からの刺激が少ない壁際の席に座る
姿勢の安定・足が床や足置きにしっかりとつく高さの椅子を選ぶ
・必要であればクッションなどで体を支える
安心できる雰囲気・「食べなさい」とプレッシャーをかけない
・家族が美味しそうに食事を楽しむ姿を見せる

「食べなくても、この場に座っているだけでOK」という雰囲気づくりが、心を閉ざさせないために重要です。

STEP2: 「食べないものリスト」で原因を探る

なぜその食べ物が苦手なのか、原因を探るためのリストを作ってみましょう。客観的に分析することで、対応のヒントが見つかります。

【食べないものリストの例】

食べ物状態食べなかった理由の推測
人参生の千切り硬い食感が苦手?色が嫌?
人参柔らかく煮たものぐにゃっとした食感が苦手?
人参みじん切りでハンバーグに混ぜた食べられた!

このように記録していくと、「この子は食感が苦手なんだな」「細かくすれば食べられるのかも」といった仮説が立てやすくなります。

STEP3: 調理法を工夫してみる(見た目・食感・味)

原因の仮説が立てられたら、調理法を工夫してみましょう。

  • 食感が苦手なら
    • 硬いのが苦手: 柔らかく煮込む、ミキサーでポタージュにする
    • ぐにゃぐにゃが苦手: あえて揚げてみる、細かく刻んで混ぜ込む
  • 見た目が苦手なら
    • 型抜きで好きなキャラクターの形にする
    • 好きな食べ物に混ぜ込んで見えなくする(例:おやき、ハンバーグ)
  • 味が苦手なら
    • 好きな味(ケチャップ、マヨネーズ、カレー粉など)を少しだけ使う
    • 出汁を効かせて風味を良くする

STEP4: スモールステップで「食べられた」成功体験を積む

いきなり「一口食べる」ことを目標にせず、ハードルを極限まで下げて、小さな成功体験を積み重ねていくことが自信につながります。

【スモールステップの例】

  1. 苦手な食べ物を食卓にのせる(見るだけ)
  2. お皿にのせてみる(同じ空間にあるだけ)
  3. 匂いを嗅いでみる
  4. フォークで触ってみる
  5. 唇に少しだけつけてみる
  6. 舌先に少しだけつけてみる
  7. 髪の毛一本分だけ口に入れてみる
  8. ゴマ一粒分だけ食べてみる

「今日は触れたね!すごい!」と、できたことを具体的に褒めてあげましょう。

STEP5: 食事の決定に本人を参加させる

自分で決めたことには、前向きに取り組みやすいものです。「受け身」の食事から「主体的」な食事へ変えていきましょう。

  • 買い物に一緒に行く: 「どっちのピーマンにする?」と本人に選ばせる。
  • 調理を手伝ってもらう: 野菜を洗う、皮をむくなど、簡単な工程を任せる。
  • メニューを決める: 「お肉とお魚、どっちがいい?」と選択肢を与えて聞く。

自分が関わった食材や料理には愛着が湧き、食べてみようという意欲につながることがあります。

STEP6: 支援グッズや便利アイテムを活用する

食べることをサポートしてくれるグッズを使うのも有効です。

  • 仕切りのあるプレート: 食材が混ざるのを嫌う子に。
  • すくいやすいスプーン・フォーク: 手先が不器用な子に。
  • フードカッターやマッシャー: 食材を細かくしたり、潰したりするのに便利。

STEP7: 栄養面の不安との付き合い方

「いろいろ試しても、結局食べるものが偏ってしまう…」そんな時、一番の心配は栄養面でしょう。

【栄養面でのアドバイス】
完璧な栄養バランスを目指す必要はありません。まずは以下の3点を意識しましょう。

  1. 三大栄養素をチェック
    ご飯やパンなどの「主食(エネルギー源)」、肉や魚などの「主菜(体をつくる)」が少しでも食べられていれば、まずはOKと考えましょう。
  2. 食べられるものの中で工夫する
    例えば、野菜が苦手でも果物なら食べるなら、ビタミンはそこから補給できます。肉が苦手でも豆腐や卵は食べるなら、タンパク質は確保できます。
  3. 栄養補助食品を検討する
    どうしても心配な場合は、ゼリー飲料や栄養が添加されたふりかけ、飲み物などを活用するのも一つの手です。ただし、これに頼りすぎないよう、あくまで「お守り」として考えましょう。使用を検討する際は、かかりつけ医や管理栄養士に一度相談することをおすすめします。

かかりつけの小児科医や地域の保健師、管理栄養士に相談してみるのも良いでしょう。

【年代別】偏食への具体的なアプローチ

偏食への関わり方は、お子さんの成長段階によっても変わってきます。

幼児期:遊びの延長で食材に親しむ

この時期は、「食べる」ことよりも「食材に慣れる」ことを目標にしましょう。野菜スタンプで遊んだり、粘土遊びのように食材に触れたり、栽培キットで一緒に野菜を育てたり。遊びを通して食材への警戒心を解いていくことが効果的です。

学童期:給食問題とどう向き合うか

多くの保護者の方が悩むのが「給食」です。完食指導が厳しい環境は、本人にとって大きなストレスになります。事前に学校の先生と面談し、本人の特性(感覚過敏など)を具体的に伝え、以下のような合理的配慮をお願いしましょう。

  • 苦手なものは、無理に食べさせない。
  • 一口だけ、など目標を本人と決める。
  • 量を減らしてもらう。
  • 代替食の持参が可能か相談する(※学校や自治体の方針により対応は異なります)。

思春期・成人期:自己理解と社会との折り合い

自分で自分のことを理解し、言葉で説明できるようになる時期です。なぜ自分はこの食べ物が苦手なのか(食感がダメ、匂いがダメなど)を一緒に考え、言語化するサポートが重要になります。そして、会食や外食の場で、どう周りに伝えて断るか、食べられるものをどう探すか、といった社会的なスキルを身につけていく練習も必要になります。

大人の発達障害と偏食|当事者ができること・周囲ができること

子どもの問題と捉えられがちな偏食ですが、大人になっても悩んでいる当事者の方は少なくありません。

自身の特性を理解し、受容する

まずは、「食べられないのは自分のせいではない」と受け入れることがスタートです。無理に克服しようと苦しむのではなく、なぜ苦手なのか、自分の感覚特性を分析してみましょう。食べられるものリストを作り、自分の「安全基地」となる食事を確保することが心の安定につながります。

栄養バランスを補う工夫

食べられるものが限られる中で、栄養バランスを保つ工夫は大切です。

  • サプリメントやプロテイン、栄養補助食品を活用する。
  • 食べられる食材の中で、なるべく栄養価の高いものを選ぶ。
  • 数日単位、一週間単位で栄養バランスを考える。

周囲へカミングアウトする際のポイント

会食などの場面で、偏食について説明する必要が出てくるかもしれません。その際は、「わがままではなく、体質(感覚過敏)で食べられないんです」と具体的に伝えると、相手の理解を得やすくなります。無理に付き合うのではなく、断る勇気も大切です。

周囲の人は、「何か食べられるものはある?」「これは食べられそう?」と、本人に選択肢を提示するような聞き方をすると、当事者は安心できます。

専門機関への相談|一人で抱え込まず、プロに頼ろう

家庭での工夫だけでは限界を感じたり、お子さんの体重が増えない、健康面が著しく心配、という場合は、専門機関に相談しましょう。

相談できる場所リスト

  • かかりつけの小児科・アレルギー科:
    まずは身近な医師に相談し、身体的な問題がないか確認。必要に応じて小児神経科や児童精神科といった専門医への紹介を相談しましょう。
  • 地域の保健センター: 保健師や管理栄養士に無料で相談できます。
  • 児童相談所: 地域の相談窓口の一つです。
  • 発達障害者支援センター: 発達障害に関する専門的な相談ができます。
  • 児童発達支援事業所・放課後等デイサービス:
    療育の専門家(作業療法士など)から具体的なアドバイスやトレーニングを受けられます。
  • 偏食外来・摂食外来のある医療機関: 食事の問題を専門的に診てくれる病院もあります。

専門機関ではどんなサポートが受けられる?

専門機関では、一人ひとりの特性に合わせたアプローチを提案してくれます。例えば、作業療法士による口周りの筋肉を鍛えるトレーニング(口腔機能療法)や、臨床心理士による不安を和らげるためのカウンセリングなど、多角的なサポートが受けられます。

まとめ:焦らず、子どものペースに寄り添うことが一番の近道

発達障害による偏食は、その背景に感覚過敏や強いこだわりなど、本人にはどうしようもできない特性があります。「わがまま」や「しつけ」の問題ではないことを、まず周りの大人が深く理解することが何よりも大切です。

食べられるようになることだけをゴールにするのではなく、食事の時間が親子にとって少しでも穏やかで安心できる時間になることを目指しましょう。焦らず、本人のペースに寄り添い、小さな「できた」を一緒に喜んでいく。その積み重ねが、子どもの食の世界を広げる一番の近道になるはずです。

一人で抱え込まず、専門家や支援者の力を借りながら、一歩ずつ進んでいきましょう。


本記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。お子さまの食事や発達に関して心配な点がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。

記事監修: 平川病院 産業医・発達障害専門医

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