「私たちが死んだあと、この子はどうなってしまうのだろうか?」
障がいのあるお子様を持つ親御さんにとって、これは決して消えることのない大きな不安です。
「親なきあと問題」とは、障がいを持っている子が、親が先に亡くなった後でも幸せな人生を送れるようにすることです。しかし、何の準備もしないままその時を迎えると、預金口座の凍結や遺産分割協議の停止、さらには親族による財産の使い込みなど、深刻なトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
さらに、いざ対策をしようと思っても、「何から手をつければいいかわからない」「役所や銀行へ何度も行く時間がない」という現実的な壁にぶつかり、先送りにしてしまうケースも少なくありません。
この記事では、数多くの相談事例に基づいた具体的な対策(遺言・成年後見・信託)を解説するとともに、自宅にいながら専門家のサポートを受けられる新しい解決策についてもご紹介します。
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親なきあとに直面する「お金」と「生活」のリスク

まず、対策を講じなかった場合にどのような問題が起こるのか、具体的なリスクを整理しましょう。
1. 遺産分割協議ができず、財産が凍結する
親が亡くなり相続が発生すると、通常は相続人全員で「遺産分割協議」を行います。しかし、相続人の中に知的障がいや精神障がいで判断能力(意思能力)が不十分な方がいる場合、遺産分割協議を有効に成立させることができません。
結果として、以下のような事態に陥ります。
- 亡くなった親の銀行口座が凍結され、生活費が引き出せなくなる。
- 実家の売却や名義変更ができず、空き家として放置せざるを得なくなる。
- 手続きを進めるために、不本意な形で「成年後見制度」を利用せざるを得なくなる。
2. きょうだい児への過度な負担
「きょうだいが面倒を見てくれるから大丈夫」と考えている親御さんもいます。しかし、親自身の対策不足が原因で、きょうだい児が複雑な法的手続きに奔走させられたり、自分の人生設計(住む場所や仕事)を犠牲にせざるを得なくなったりするケースが後を絶ちません。
特に相続手続きは、戸籍の収集や銀行・法務局での手続きなど、平日の日中に何度も窓口へ足を運ぶ必要があるため、仕事を持つきょうだいにとって大きな負担となります。
3. 親族や悪意ある第三者による財産侵害
信頼していた親族に通帳を預けていた結果、使途不明金が発生したり、勝手に使い込まれたりするリスクがあります。また、本人が高額な遺産を一括で受け取ることで、詐欺被害や浪費につながるリスクもあります。
親なきあと対策の「3つの柱」

これらのリスクを回避するために有効なのが、以下の3つの法制度です。これらを適切に組み合わせることが、最強の対策となります。
| 対策 | 特徴 | 親なきあとにおける役割 |
|---|---|---|
| 1. 遺言書 | 財産の分け方を指定する | 遺産分割協議を省略し、相続手続きをスムーズにする。 |
| 2. 成年後見制度 | 身上保護と財産管理を行う | 判断能力が不十分な子の権利を守り、契約や管理を代行する。 |
| 3. 信託(家族・商事) | 財産管理を託す | 柔軟な金銭管理や、子が亡くなった後の財産の行き先まで決められる。 |
それぞれの対策について、事例を交えて詳しく解説します。
【対策1】遺言書:最初に取り組むべき必須の備え

親なきあと対策の基本中の基本は「遺言書」の作成です。
なぜ遺言書が必要なのか?
遺言書があれば、障がいのある子を含めた相続人全員での「遺産分割協議」を省略できます。これにより、子が判断能力を持たない場合でも、親の意思通りに財産を承継させることが可能になります。
「公正証書遺言」を強く推奨
遺言には自筆証書遺言もありますが、親なきあと問題においては「公正証書遺言」での作成が推奨されます。
自筆証書遺言は形式不備で無効になったり、内容が曖昧で結局手続きができなかったりするケースがあるためです。
「遺言執行者」の指定を忘れずに
遺言書を書くだけでは不十分です。必ず「遺言執行者」を指定しましょう。
障がいのある子自身が銀行や役所の窓口で手続きを行うことは困難です。遺言執行者を指定しておけば、その人が代理で解約や名義変更の手続きを行えるため、子の負担を大幅に減らすことができます。
【対策2】成年後見制度:メリットと注意点を理解する

成年後見制度は、判断能力が不十分な方を法的に守る重要な制度ですが、利用には注意が必要です。
成年後見制度でできること
- 財産管理: 通帳やカードを管理し、必要な生活費を渡すことで浪費や詐取を防ぎます。
- 身上保護: 福祉サービスの契約や施設入居の手続きを行います。
知っておくべき「制度の不便な点」
多くの家族が戸惑うのが、以下の点です。
- 一度つけると原則外せない
遺産分割のためだけに利用しても、その後本人が亡くなるまで制度利用は続きます。 - 誰がなるか選べない
専門職が選任される可能性があります。 - 費用がかかる
専門職後見人の場合、月額2万円?6万円程度の報酬が発生し続けます。
どのような時に利用すべきか?
以下のようなタイミングで利用が必要になるケースが多いです。
- 親が遺言書を残さず亡くなり、遺産分割協議が必要になった時。
- 施設入居時に身元引受人がおらず、施設側から要請された時。
【対策3】家族信託・生命保険信託:柔軟な財産管理

成年後見制度の「硬直性(融通が利かない点)」を補うために注目されているのが「信託」です。
信託でできること
- 柔軟な金銭交付
「毎月〇万円ずつ渡す」「大きな出費(医療費など)の時は追加で渡す」といった柔軟な設定が可能です。 - 二次相続の指定
「障がいのある子が亡くなった後は、お世話になった施設に寄付する」といった、次の財産の行き先まで決められることです。
生命保険信託の活用
まとまった現金がない場合でも、生命保険信託を利用することで、死亡保険金を一括ではなく「毎月分割」で子に受け取らせることが可能です。これにより、大金を一度に手にして管理できなくなるリスクを防げます。
【事例で解説】よくある相談と解決策

ここでは、実際の相談現場でよくある事例をもとに、具体的な解決策を見ていきます。
事例1:きょうだいに負担をかけたくない
状況
両親と知的障がいのある長男、そして長女(きょうだい児)の4人家族。親は「長女に長男の面倒を見てほしい」と考えているが、長女の負担が心配。
解決策
親が元気なうちに公正証書遺言を作成。長女を遺言執行者に指定しつつ、財産管理の負担を減らすために信託や専門職後見人の活用を検討します。
きょうだいが手続きを行う場合でも、煩雑な作業を全て自分でやる必要はありません。専門家に「丸投げ」できる環境を整えておくことが、きょうだいの人生を守ることにつながります。
事例2:施設での金銭管理に限界がある
状況
親の相続で長男(障がい者)に多額の現金が入った。施設側から「高額な財産管理は責任が持てないので、成年後見人をつけてほしい」と言われた。
解決策
施設での金銭管理には限界があります。この場合、成年後見制度を利用して財産管理を専門家に移行するのが適切です。
予防策としては、相続発生前に信託などを利用し、まとまった金銭が本人名義の口座に一気に入るのを防ぐ仕組みを作っておくことが有効でした。
今すぐ始めるべき「親なきあと」へのアクションプラン

親なきあと問題は、先送りすればするほどリスクが高まります。しかし、「どこに相談すればいいかわからない」「忙しくて時間がない」という方も多いでしょう。
無理なく準備を進めるためのステップをご紹介します。
STEP 1:親の想いを整理し、言語化する
「どこで暮らしてほしいか」「誰に財産を託したいか」。まずは漠然とした不安や希望を書き出してみましょう。
STEP 2:専門家に相談する(自宅から相談できるサービスを活用)
司法書士や弁護士に相談し、遺言書の作成や信託の準備を進めます。しかし、複数の事務所を探して足を運ぶのは大変です。
そこでおすすめなのが、自宅にいながら相続手続きや生前対策の相談ができるサービスです。
例えば「相続ナビ」のようなサービスを利用すれば、以下のようなメリットがあります。
- 自宅で完結
ほとんどの手続きをWebや電話で進められるため、障がいのあるお子様から目を離せない方や、仕事で忙しいきょうだいの方でも無理なく相談できます。 - 窓口がひとつ
司法書士や税理士など、あちこちの専門家を探し回る必要がありません。 - 親なきあとも安心
相続前の相談から、実際に相続が発生した後の手続きまで一気通貫でサポートしてくれるため、遺されたご家族が「故人を偲ぶ時間」を大切にできます。
「親なきあと」の対策は専門知識が必要なため、自分たちだけで抱え込まず、こうした代行サービスを賢く利用するのも一つの選択肢です。
STEP 3:住まいの確保と福祉サービスとの連携
親が元気なうちに、グループホームなどの施設探しや、相談支援事業所との連携を深めておきましょう。緊急時にスムーズに移行できる体制を作っておくことが大切です。
まとめ:完璧でなくても、まずは一歩を

「親なきあと」の対策に、「これさえやれば絶対安心」という唯一の正解はありません。しかし、「何もしない」ことのリスクは明確です。
遺言書を1通残しておくだけで、お子様が遺産分割協議という高いハードルを越えずに済みます。専門家の力を借りる準備をしておけば、きょうだい児の未来も守れます。
もし、「手続きが難しそう」「忙しくて動けない」と感じているなら、まずは「相続ナビ」のような無料相談を活用してみてください。
ご自宅から、あなたとお子様の未来を守る準備を始めましょう。


