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もしかして私も?大人の女性ASD(自閉スペクトラム症)の特徴と”生きづらさ”の乗り越え方

発達障害ガイド

「なぜか昔から人間関係が苦手…」
「仕事でケアレスミスが多くて、いつも上司に怒られてしまう」
「みんなが楽しんでいる雑談の輪に入るのが苦痛…」

もしあなたが、このような「生きづらさ」をずっと感じているなら、それはあなたの性格や努力不足のせいではないのかもしれません。

近年、大人になってから発達障害の診断を受ける人が増えており、特に女性のASD(自閉スペクトラム症)は、その特性が見過ごされやすいことが知られています。

この記事では、大人の女性のASDに見られる特徴から、なぜ気づかれにくいのか、そして日常生活や仕事での困難を乗り越え、あなたらしく輝くための具体的なヒントまで、専門家の監修のもと、分かりやすく解説します。

長年の悩みの正体を知り、自分を理解することから、”生きやすさ”への第一歩を踏み出してみませんか?

▼記事を読むのが面倒な人のためにAI解説動画を作りました。読み間違いはご容赦くださいませ。

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はじめに:その「生きづらさ」、あなたのせいではないかもしれません

長年、漠然と感じてきた「他の人となにか違う」という違和感。周りに合わせようと必死に頑張り、笑顔の裏で人知れず疲れ果ててしまう…。もし、そんな経験に心当たりがあるのなら、それはASDの特性が関係している可能性があります。

ASD(自閉スペクトラム症)とは、生まれつきの脳機能の発達のかたよりによる発達障害の一つです。「対人関係の難しさ」や「強いこだわり」といった特性がありますが、その現れ方は一人ひとり異なり、知的な遅れがない場合も多いため、本人も周囲も障害があるとは気づきにくいケースが少なくありません。

特に女性の場合は、男性に比べて言語能力が高く、周囲の行動を真似てその場に適応しようとする「カモフラージュ」が得意な傾向があるため、特性が隠されてしまいがちです。その結果、適切なサポートを受けられないまま、「自分の努力が足りない」「自分がダメなんだ」と一人で抱え込み、うつ病や不安障害などの二次障害につながってしまうこともあります。

この記事を通して、まずはあなた自身の特性を正しく理解し、長年の悩みから解放されるきっかけを掴んでいただければ幸いです。

【チェックリスト】大人の女性ASDに見られる15のサイン

ここでは、大人の女性のASDによく見られる特徴を具体的なサインとしてまとめました。ただし、いくつか当てはまるからといって、必ずしもASDであるとは限りません。あくまで自分を理解するための一つの目安としてご覧ください。

1. 対人関係・コミュニケーションの難しさ

  • 雑談やガールズトークが苦痛
  • 相手の気持ちを察するのが苦手で、言葉を真に受けすぎる
  • 冗談や皮肉が通じず、場を凍らせてしまう
  • 人との適切な距離感がわからない
  • 頑張って「普通」を演じる「カモフラージュ」

2. こだわりの強さ・思考の偏り

  • 興味のあることには過集中するが、他は無関心
  • 自分なりのルールや手順があり、変更が苦手
  • 完璧主義で0か100かで考えがち(白黒思考)
  • 収集癖がある(対象は一般的なものも多い)

3. 感覚の過敏さ・鈍麻(どんま)

  • 特定の音、光、匂い、肌触りが耐えられない
  • 逆に痛みや空腹に気づきにくい
  • 人混みや騒がしい場所ですぐに疲れてしまう

4. 日常生活・仕事での困難

  • マルチタスクが苦手で、家事や仕事の段取りが組めない
  • ケアレスミスが多い
  • 疲れやすく、常にエネルギー不足を感じる

なぜ女性のASDは見過ごされやすいのか?男性との違い

これまで男女比は約4:1で男性に多いとされてきましたが、近年では、診断の見過ごされやすい女性のASDにも注目が集まり、女性の診断数も増加しています。では、なぜ女性のASDはこれまで見過ごされてきたのでしょうか。それには、いくつかの理由が考えられます。

  1. 特徴が「女性らしさ」や「性格」と誤解されやすい
  2. コミュニケーション能力で特性をカバーしようとする「過剰適応」
  3. こだわりの対象が周囲に受け入れられやすい
  4. 診断基準が男性モデルに基づいている歴史的背景

これらの理由から、女性は自覚のないまま大人になり、就職、結婚、出産といったライフイベントを機に、求められる役割の複雑さや環境の変化についていけず、心身の不調をきたして初めて医療機関を訪れ、診断に至るというケースが非常に多いのです。

【ライフステージ別】女性のASDが直面しやすい悩みと対処法

ASDの特性による困難は、人生の様々なステージで形を変えて現れます。ここでは代表的な3つの場面での悩みと、その対処法について見ていきましょう。

Case1. 仕事「丁寧だけど要領が悪い」と言われる

得意な仕事の例苦手な仕事の例
✓ ルールやマニュアルが明確な作業✓ 複数の業務を同時に進めるマルチタスク
✓ 専門知識を活かせる研究・分析✓ 臨機応変な対応が求められる接客・交渉
✓ 集中できる環境でのデータ入力・校正✓ 曖昧な指示や急な変更が多い業務
✓ 自分のペースで進められる業務✓ 雑談や電話応対が多い職場

【対策】環境調整のポイント

  • 指示を明確にしてもらう
  • タスクをリスト化する
  • 感覚過敏への配慮

Case2. 恋愛・結婚「好きだけど一緒にいると疲れる」

【対策】パートナーへの伝え方とルール作り

  • 自分の「トリセツ」を作る
  • 「ほうれんそう」を意識する

Case3. 妊娠・出産・育児「感覚過敏とマルチタスクの壁」

【対策】完璧を目指さず、支援サービスを頼る

  • 一人で抱え込まない
  • 便利なサービスは積極的に活用

“生きやすさ”のヒントは「自己理解」と「環境調整」

もし、ここまで読んで「自分に当てはまる」と感じたとしても、過度に心配する必要はありません。大切なのは、自分の特性を正しく理解し、自分が過ごしやすいように環境を整えていくことです。そのための具体的なステップをご紹介します。

STEP1: 自分の特性を正しく知る

まずは、専門機関に相談し、客観的に自分を見つめ直すことから始めましょう。

相談できる場所

  • 発達障害者支援センター:
    各都道府県・指定都市に設置されており、診断の有無にかかわらず、本人や家族からの相談に無料で応じてくれます。
  • 精神科・心療内科:
    大人の発達障害の診療を行っている医療機関です。
  • カウンセリングルーム:
    臨床心理士や公認心理師によるカウンセリングが受けられます。

診断を受けるメリット・デメリット

診断を受けるかどうかは、個人の自由です。両方の側面を理解した上で、自分にとっての必要性を考えてみましょう。

  • メリット:
    • 長年の生きづらさの原因が分かり、安心できる。
    • 自分の得意・不得意が明確になり、対策を立てやすくなる。
    • 障害者手帳の取得により、様々な福祉サービスや就労支援を受けられる場合がある。
    • 周囲に説明しやすくなり、理解や配慮を得やすくなる。
  • デメリット:
    • 「障害者」というレッテルを貼られたように感じてしまう可能性がある。
    • 診断を受けるまでに時間や費用がかかる。
    • 保険の加入などで一部制限が生じる場合がある。(ただし、必ずしも加入できないわけではなく、症状の申告(告知義務)の内容や治療状況によって総合的に判断されます。詳しくは各保険会社にご確認ください)

各機関の利用方法や制度については変更される可能性があります。ご利用の際は、必ず公式サイト等で最新の情報をご確認ください。

STEP2: 周囲に理解を求める(合理的配慮)

自分の特性を理解できたら、次は周囲の人に打ち明け、必要な配慮をお願いしてみましょう。
障害者差別解消法では、企業などの民間事業者に対して、障害のある人から申し出があった場合に、負担が重すぎない範囲で対応すること(合理的配慮の提供)が2024年4月1日から法的義務とされています。

伝える際は、単に「私はASDです」と言うだけでなく、「聴覚が過敏なので、静かな場所で休憩させてもらえると助かります」「口頭での指示は忘れてしまうことがあるので、チャットでいただけるとありがたいです」というように、具体的な困りごとと、どうしてほしいかをセットで伝えるのがポイントです。

STEP3: 日常でできるセルフケア

  • 感覚過敏への対策グッズ:
    • ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやヘッドホン
    • ブルーライトカットメガネやサングラス
    • 肌触りの良い天然素材の衣類
  • 疲れを溜めないためのエネルギー管理術:
    • 一日のスケジュールに、意識的に「何もしない休憩時間」を組み込む。
    • 外出の予定は詰め込みすぎず、翌日は休息日に設定する。
    • 自分がリラックスできることのリストを作っておく。

まとめ:あなたは一人ではありません

大人の女性のASDは、その特性が「個人の性格」として見過ごされ、一人で生きづらさを抱え込んできた方が非常に多いのが実情です。

しかし、この記事で見てきたように、あなたの感じてきた困難は、決してあなたのせいではありません。それは、生まれ持った「特性」と、社会や環境との「ミスマッチ」から生じていただけなのです。

大切なのは、自分を責めるのをやめ、自分の特性を正しく理解し、あなたに合った環境や方法を見つけていくことです。

この記事が、あなたが自分自身を深く理解し、より自分らしく、楽に生きていくための第一歩となれば、これほど嬉しいことはありません。あなたは、決して一人ではないのです。


免責事項:
この記事は情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。発達障害の疑いがある場合や、心身の不調を感じる場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。

記事監修: 平川病院 産業医・発達障害専門医

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