発達障害やADHDと診断されていても、「障害年金は身体の障害の人のもの」「働いているならもらえない」と思い込んで、申請を考えたことすらない人は少なくありません。一方で、申請したのに不支給になったという声も検索にあふれています。
この記事では、発達障害・ADHDで障害年金の対象になる条件、令和8年度の金額、働きながら受け取れるかどうか、そして「難しい」と言われる理由を、日本年金機構の認定基準と厚生労働省の統計をもとに整理します。申請が不支給になった場合の再申請と、病歴・就労状況等申立書の書き方は、別の記事で扱います。
- 結論|発達障害・ADHDは障害年金の対象。決め手は「診断名」ではなく「日常生活と仕事にどれだけ制限があるか」
- 障害年金の仕組み|基礎年金と厚生年金、1〜3級の違い
- 令和8年度の金額|1級・2級・3級でいくらもらえるか
- 受給の3つの条件|初診日・保険料納付要件・障害の状態
- 発達障害の認定基準|1級・2級・3級の「障害の状態」
- 等級はどう決まるか|診断書の「日常生活能力の判定」と「程度」
- 働きながらもらえるか|「就労していること」だけで不支給にはならない
- 「難しい」「落ちた」と言われる理由|令和6年度の不支給率と、厚労省の是正策
- 申請の流れと必要書類
- デメリットと誤解|更新・手帳・会社・扶養・生活保護
- 手帳・自立支援医療・就労支援との組み合わせ
- 発達障害・ADHDの障害年金に関するよくある質問
- まとめ|「働いているから無理」と決めつけず、生活の制限を言葉にして確認する
結論|発達障害・ADHDは障害年金の対象。決め手は「診断名」ではなく「日常生活と仕事にどれだけ制限があるか」

発達障害は、日本年金機構の障害認定基準で「精神の障害」の1区分として明記されており、ADHD(注意欠陥多動性障害)・自閉症・アスペルガー症候群・学習障害は、いずれも障害年金の対象です。 診断名があれば自動的にもらえるわけではなく、その障害によって日常生活や労働にどの程度の制限があるかで等級が決まります。
認定基準には、発達障害について次のように書かれています。「たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う」(日本年金機構「障害認定基準 第8節 精神の障害」)。つまり、知的な遅れがないこと、学歴や職歴があることは、それだけでは不利になりません。見られるのは「一人で生活するとしたら、どこに援助が要るか」です。
先に全体像を表にします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる診断 | ADHD、自閉スペクトラム症(ASD)、アスペルガー症候群、学習障害(LD)など |
| 制度 | 初診日に加入していた年金制度で決まる(国民年金→障害基礎年金1・2級/厚生年金→障害厚生年金1〜3級) |
| 等級の決め手 | 診断書の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」。就労状況も加味 |
| 働きながら | 受け取れる。就労していることだけで不支給にはしない、と基準に明記 |
| 金額(令和8年度) | 障害基礎年金2級で年847,300円(月約7万円)。1級はその1.25倍 |
| 不支給の割合 | 令和6年度は精神障害で12.1%(前年6.4%)。厚労省が是正策を公表 |
障害年金の仕組み|基礎年金と厚生年金、1〜3級の違い

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、どちらになるかは病気で初めて医療機関を受診した日(初診日)に、どの年金制度に加入していたかで決まります。
| 障害基礎年金 | 障害厚生年金 | |
|---|---|---|
| 初診日の加入状況 | 国民年金(自営業・学生・無職・20歳前)、または厚生年金加入者の配偶者 | 厚生年金(会社員・公務員) |
| 等級 | 1級・2級 | 1級・2級・3級(+一時金の障害手当金) |
| 金額の決まり方 | 定額 | 在職中の報酬に比例(1・2級は障害基礎年金も上乗せ) |
| 3級 | なし | あり(労働に制限がある程度) |
各等級の考え方は、認定基準で次のように定義されています。1級は「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」、2級は「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」、3級は「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度」です。3級が「労働」の制限で定義されている点が重要で、日常生活は何とか回っているが仕事に大きな制限がある、という状態は3級の領域です。 ただし3級は障害厚生年金にしかなく、初診日が国民年金加入中だった人には3級がありません。
発達障害の初診日には特則があります。発達障害は通常低年齢で発症しますが、「知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とする」と定められています(同基準)。大人になってから初めて精神科や心療内科を受診した人は、その日が初診日です。その時点で会社員として厚生年金に加入していれば、障害厚生年金の対象になります。
令和8年度の金額|1級・2級・3級でいくらもらえるか

令和8年度(2026年4月分から)の年金額は次のとおりです(昭和31年4月2日以後生まれの場合)。
| 種別 | 年額 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 障害基礎年金 1級 | 1,059,125円 | 約88,000円 |
| 障害基礎年金 2級 | 847,300円 | 約70,600円 |
| 子の加算(1人目・2人目) | 各243,800円 | 各約20,300円 |
| 子の加算(3人目以降) | 各81,300円 | 各約6,800円 |
| 障害厚生年金 1級 | 報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額243,800円(+障害基礎年金1級) | 在職中の報酬による |
| 障害厚生年金 2級 | 報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額243,800円(+障害基礎年金2級) | 在職中の報酬による |
| 障害厚生年金 3級 | 報酬比例の年金額(最低保障 635,500円) | 最低でも約53,000円 |
| 障害手当金(一時金) | 報酬比例の年金額×2(最低保障 1,271,000円) | 一度きり |
出典: 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」、NPO法人障害年金支援ネットワーク「令和8年度の障害年金の金額」。
障害厚生年金の1級・2級は、報酬比例の額に障害基礎年金が上乗せされるため、同じ2級でも障害基礎年金だけの人より受給額が多くなります。3級は報酬比例部分のみで、最低保障額635,500円が設定されています。
これに加えて、所得が一定以下の障害年金受給者には「障害年金生活者支援給付金」が支給されます。令和8年度は1級で月額7,025円、2級で月額5,620円です(日本年金機構「令和8年度の年金額および年金生活者支援給付金支給金額の改定について」)。障害年金は非課税で、給付金とあわせて障害基礎年金2級なら月7万6,000円前後が手元に入る計算です。
受給の3つの条件|初診日・保険料納付要件・障害の状態

障害年金を受け取るには、次の3つをすべて満たす必要があります。
| 条件 | 内容 | 発達障害で注意する点 |
|---|---|---|
| 初診日の要件 | 初診日に国民年金または厚生年金に加入していた(20歳前の初診は例外あり) | 20歳以降に初めて受診した場合は、その日が初診日。カルテが残っている医療機関で「受診状況等証明書」を取る |
| 保険料納付要件 | 初診日の前々月までの加入期間の3分の2以上で保険料を納付または免除している。または直近1年間に未納がない(初診日が令和18年3月末まで) | 未納期間が長い人はここで止まる。初診日より前の納付状況が問われるため、後から納めても間に合わない |
| 障害の状態 | 障害認定日(初診日から1年6か月後)に、等級に該当する程度の障害がある | 発達障害は「治る・治らない」ではなく、援助の必要度で見られる |
保険料納付要件は見落とされやすい落とし穴です。判定されるのは初診日の前日時点の納付状況で、初診日のあとに保険料をまとめて納めても要件は満たせません。 未納が多い人は、免除申請をしていたかどうかを年金事務所で確認してください。学生納付特例や免除の期間は「納付済み」と同じ扱いで数えられます。
20歳前に初診日がある場合(たとえば子どものころに診断を受けていた場合)は、保険料納付要件なしで障害基礎年金の対象になります。その代わり本人の所得による支給制限があり、令和8年4月1日現在で前年の所得が4,794,000円を超えると全額、3,761,000円を超えると2分の1が支給停止になります(扶養親族1人につき38万円などの加算あり。日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」)。
発達障害の認定基準|1級・2級・3級の「障害の状態」

認定基準は、発達障害の各等級について次の例示をしています。
| 等級 | 障害の状態(認定基準の原文) |
|---|---|
| 1級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの |
| 2級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの |
| 3級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの |
出典: 日本年金機構「障害認定基準 第8節 精神の障害」E 発達障害
「欠如・常時援助」が1級、「乏しい・援助が必要」が2級、「不十分・労働が著しい制限」が3級という段階です。2級と3級の分かれ目は、日常生活にも援助が要るか、それとも困難が主に労働の場面に出ているか、という点にあります。
発達障害にうつ病や不安障害などの二次障害が重なっている場合、基準は「併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する」としています。別々に足し算するのではなく、全体としての生活の制限を見るということです。二次障害の状態は診断書に反映されるため、発達障害の診断だけで申請するより、実際の生活の困難が伝わりやすくなることがあります。二次障害そのものについては「発達障害の二次障害|うつ・不安・適応障害との関係」で扱っています。
等級はどう決まるか|診断書の「日常生活能力の判定」と「程度」

精神の障害の等級は、医師が書く「診断書(精神の障害用)」の2つの欄を中心に判定されます。2016年9月に施行された「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が、この2つの組み合わせから等級の目安を示しています(日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」)。
1つ目は「日常生活能力の判定」で、次の7項目について、それぞれ4段階(できる/おおむねできるが時には助言や指導を必要とする/助言や指導があればできる/助言や指導をしてもできない若しくは行わない)で評価されます。
| 項目 | 発達障害で問われやすい中身 |
|---|---|
| 適切な食事 | 栄養や時間を考えた食事を自分で用意できるか。偏食や食事の抜けはないか |
| 身辺の清潔保持 | 入浴・洗濯・部屋の片づけが自分でできるか |
| 金銭管理と買い物 | 衝動買いや使いすぎがなく、計画的にやりくりできるか |
| 通院と服薬 | 予約や服薬を自分で管理できるか |
| 他人との意思伝達及び対人関係 | 職場や近所で意思疎通ができるか。トラブルが繰り返されていないか |
| 身辺の安全保持及び危機対応 | 火の始末や事故の回避、困ったときに助けを求められるか |
| 社会性 | 役所の手続き、公共の場でのふるまい、ルールの理解 |
2つ目は「日常生活能力の程度」で、(1)から(5)の5段階で全体像を評価します。(1)は「社会生活は普通にできる」、(2)は「家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要」、(3)は「家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要」、(5)は「身のまわりのことはほとんどできないため、常時の援助が必要」という内容です。
ガイドラインは、7項目の評価の平均と、5段階の程度の組み合わせから等級の目安を表にしています。大まかに言えば、程度が(3)以上で判定の平均がおおむね2.5を超えると2級、程度が(2)なら3級が中心で、程度が(1)なら非該当が目安になります。 ただしこれは目安で、就労状況や治療歴、家族の援助の内容などを加味して総合的に判定されます。
ここで大切なのは、診断書の評価が「一人で生活するとしたら」を前提にしている点です。家族と同居していて実際には親が家事や金銭管理を担っている場合、その援助がなければどうなるかで評価されます。診察室で「困っていません」と答えてしまう人ほど、この前提を医師と共有しておく必要があります。
働きながらもらえるか|「就労していること」だけで不支給にはならない

働いている人が最も気にするのがこの点です。結論から言えば、働きながら障害年金を受け取ることはできますし、認定基準にもそう書かれています。
発達障害の項には次の記述があります。「就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること」(同基準 E 発達障害(6))。
実態としても、精神障害で障害年金を受給している20〜59歳のうち、就労している人の割合は令和元年で34.8%と、平成21年の18.6%から大きく上がっています(厚生労働省 年金局「障害年金制度」社会保障審議会年金部会 2023年6月 資料、出典は障害年金受給者実態調査)。3人に1人は働きながら受給しているということです。
ただし、就労の中身は見られます。審査で確認されるのは次のような点です。
| 確認される点 | 有利に働く例 | 不利に働きやすい例 |
|---|---|---|
| 雇用形態 | 障害者雇用、就労継続支援A型・B型、就労移行支援の利用中 | 一般雇用でフルタイム、役職あり |
| 職場の配慮 | 指示の文書化、業務の限定、上司の定期面談など具体的な配慮がある | 配慮なしで他の社員と同じ業務をこなしている |
| 勤続と欠勤 | 短期離職の繰り返し、欠勤・休職が多い | 長期にわたり安定して勤務 |
| 収入 | 最低賃金前後、短時間勤務 | 一般的な水準以上の給与 |
| 職場での意思疎通 | トラブルや叱責が繰り返されている | 問題なく人間関係を築けている |
一般雇用でフルタイムで働き、配慮なしに業務をこなしている場合、「労働に制限がある」とは見なされにくく、2級はもちろん3級も難しくなります。逆に、障害者雇用で配慮を受けている、就労移行支援を利用している、短時間勤務に限定している、といった事実は「援助や配慮のもとで労働に従事している」ことの裏づけになります。これらは診断書だけでなく、本人が書く「病歴・就労状況等申立書」と、必要に応じて年金機構から届く「就労に関する照会」で伝えることになります。
働き方と制度の関係は、「障害者雇用の年収が低いのはなぜ?」や「就労移行支援とは?費用・期間・向いてない人まで正直に解説」もあわせて参考にしてください。
「難しい」「落ちた」と言われる理由|令和6年度の不支給率と、厚労省の是正策
「発達障害の障害年金は難しい」という声には、根拠があります。厚生労働省が2025年6月に公表した調査報告書によると、令和6年度の新規裁定のうち不支給(非該当)は13.0%で、精神障害に限ると12.1%。前年度の6.4%からほぼ倍増していました(厚生労働省年金局「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」2025年6月11日)。
| 年度 | 全体の不支給率 | 精神障害の不支給率 |
|---|---|---|
| 令和元年度 | 12.4% | 11.7% |
| 令和2年度 | 8.0% | 7.4% |
| 令和3年度 | 7.8% | 5.7% |
| 令和4年度 | 7.7% | 5.9% |
| 令和5年度 | 8.4% | 6.4% |
| 令和6年度 | 13.0% | 12.1% |
同報告書は、精神障害の不支給事案のうち「ガイドラインの目安より下位の等級に認定されて不支給になったケース」の割合が75.3%と、令和5年度の44.7%から大きく上がっていたことを明らかにしました。つまり、書類上は2級や3級の目安に届いていたのに、審査の段階で下げられて不支給になった事案が増えていたということです。
これを受けて厚労省は、すべての不支給事案を複数の認定医で審査すること、認定医の傾向をまとめた内部文書の作成をやめること、不支給の理由をわかりやすく書くこと、精神障害について職員が事前に等級案を付ける運用をやめること、令和6年度以降の不支給事案を改めて点検し必要なものは処分を取り消すこと、を対応策として示しました。2026年9月時点では、この是正の途上にあります。
制度側の問題とは別に、申請側で不支給につながりやすい要因もあります。
| 要因 | 起きていること |
|---|---|
| 診断書と実態のずれ | 診察室で「大丈夫です」と答え、医師が困難を把握できていない |
| 申立書との不一致 | 診断書は「援助が必要」なのに、申立書には「一人でできている」と書いてある |
| 就労状況の説明不足 | 障害者雇用や配慮の内容を書かず、「会社員」とだけ伝わっている |
| 初診日の証明 | 初診の医療機関のカルテが廃棄されていて、初診日を特定できない |
| 保険料納付要件 | 初診日前の未納が多く、要件を満たしていなかった |
不支給になった場合の再申請と、病歴・就労状況等申立書の具体的な書き方は、別の記事で扱います。
申請の流れと必要書類

申請は、初診日の加入制度に応じて年金事務所(障害厚生年金・障害基礎年金とも)または市区町村の年金窓口(障害基礎年金)で行います。街角の年金相談センターでも相談できます。
- 年金事務所で初診日と保険料納付要件を確認し、必要書類一式を受け取る
- 初診の医療機関で「受診状況等証明書」を取る(現在の医療機関と同じなら不要)
- 現在の主治医に「診断書(精神の障害用)」を依頼する(障害認定日から3か月以内、または請求日前3か月以内の状態)
- 本人が「病歴・就労状況等申立書」を書く(発病から現在までの経過、就労状況、日常生活の様子)
- 年金請求書と添付書類(戸籍・住民票・所得証明・振込先など)をそろえて提出
- 審査。結果通知までの目安は3か月から3か月半
請求のタイミングには2種類あります。障害認定日(初診日から1年6か月後)の時点で等級に該当していれば、その時点にさかのぼって請求でき、最大5年分がまとめて支給されます(認定日請求・遡及請求)。認定日には該当しなかったが後に悪化した場合は、請求した月の翌月分から支給されます(事後重症請求)。大人になってから受診した発達障害の場合、初診から1年6か月を過ぎていれば、いつでも請求できます。
診断書の作成料は自費で、医療機関によって異なります。社会保険労務士に依頼する場合は着手金と成功報酬の組み合わせが一般的ですが、報酬の計算方法は事務所ごとに違うため、契約前に必ず確認してください。自分で申請することも十分可能で、年金事務所の窓口は書類の書き方まで相談に乗ってくれます。
デメリットと誤解|更新・手帳・会社・扶養・生活保護
障害年金には、受け取る前に知っておくべき制約があります。
| 論点 | 実際 |
|---|---|
| 更新がある | 発達障害は原則「有期認定」で、1〜5年ごとに「障害状態確認届」(診断書)を提出する。状態が改善したと判定されれば等級が下がる、または支給停止になることがある |
| 会社に知られるか | 障害厚生年金の請求は本人が年金事務所に行うもので、会社を経由しない。年金機構から会社に通知が行くこともない |
| 扶養に影響するか | 障害年金は非課税で、税法上の扶養(所得48万円以下)の判定には含まれない。健康保険の被扶養者は年収180万円未満が基準(障害年金受給者の場合) |
| 生活保護との関係 | 障害年金は収入として認定され、保護費から差し引かれる。ただし障害者加算がつく場合がある |
| 手帳との関係 | 障害者手帳と障害年金は別の制度で、手帳の等級と年金の等級は一致しない。手帳がなくても年金は申請できる |
| 20歳前傷病の所得制限 | 前述のとおり、本人の所得が一定額を超えると全額または半額が支給停止 |
「更新で止まるかもしれない」ことを理由に申請をためらう必要はありません。更新で支給停止になっても、再び状態が悪化すれば支給再開の請求ができます。
なお、障害年金を受給していると、精神障害者保健福祉手帳の申請が簡単になります。年金証書の写しがあれば診断書なしで申請でき、年金と同じ等級の手帳が交付されます。手帳については「ADHDの障害者手帳、取るべき?」「精神障害者保健福祉手帳3級とは?」「ASDの障害者手帳」で扱っています。
手帳・自立支援医療・就労支援との組み合わせ
障害年金は、他の制度と組み合わせて使うものです。発達障害の大人が使える制度を整理します。
| 制度 | 何が得られるか | 年金との関係 |
|---|---|---|
| 障害年金 | 現金給付(月約5〜9万円+厚生年金部分) | 本記事 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 税の控除、公共料金の割引、障害者雇用枠での就職 | 年金証書で診断書なしに申請可 |
| 自立支援医療(精神通院) | 通院医療費の自己負担が1割に | 年金とは独立。診断書は別 |
| 就労移行支援 | 就職に向けた訓練と定着支援。9割が無料 | 利用中であることは「援助のもとでの就労」の裏づけになる |
| 障害者雇用 | 配慮を前提にした雇用 | 就労状況の説明で有利に働きやすい |
自立支援医療は「自立支援医療制度(精神通院医療)のデメリットは本当?」、手帳なしでの就労支援は「就労移行支援は手帳なし・グレーゾーンでも利用できる」で詳しく扱っています。障害年金を受け取りながら就労移行支援を利用し、配慮のある職場に就職する、という組み合わせは珍しくありません。
発達障害・ADHDの障害年金に関するよくある質問
- QADHDだけで2級は取れますか?
- A
診断名では決まりません。ADHDでも、金銭管理・対人関係・社会性などの日常生活能力に援助が必要で、日常生活能力の程度が(3)以上と評価されれば2級の目安に入ります。一方、日常生活は回っていて困難が仕事に限られる場合は3級(障害厚生年金のみ)が目安です。
- Qグレーゾーンでも申請できますか?
- A
障害年金の申請には医師の診断書が必要で、診断書には診断名(ICD-10コード)が記載されます。「グレーゾーン」として診断名がつかない状態では、原則として申請の対象になりません。まずは受診して、診断の可能性を医師に確認してください。
- Qうつ病を併発している場合はどうなりますか?
- A
発達障害と気分障害が併存する場合、認定基準は別々に足すのではなく「諸症状を総合的に判断」します。うつ状態による日常生活の制限は診断書に反映されるため、発達障害単独より生活の困難が伝わりやすくなることがあります。どちらを主傷病にするかは主治医と相談してください。
- Q永久認定になりますか?
- A
発達障害は原則として有期認定で、1〜5年ごとの更新があります。永久認定は障害の状態が固定して改善の見込みがない場合に限られ、精神の障害では例外的です。「更新がある」前提で考えてください。
- Q社労士に頼まないと通りませんか?
- A
自分で申請して受給している人は多くいます。年金事務所の窓口が書き方を教えてくれます。一方で、初診日の証明が難しい、過去に不支給になった、書類の整合性に自信がない、といった場合は専門家に依頼する価値があります。依頼するなら、報酬の計算方法を契約前に確認してください。
- Q申請すると会社にバレますか?
- A
障害厚生年金の請求は本人が年金事務所に対して行うもので、会社は関与せず、年金機構から会社に通知されることもありません。ただし、年金機構から「就労に関する照会」が本人宛てに届くことがあり、その回答に職場の配慮の内容を書く必要があります。会社に協力を求めるかどうかは本人が決められます。
まとめ|「働いているから無理」と決めつけず、生活の制限を言葉にして確認する

発達障害・ADHDは障害年金の対象で、決め手は診断名ではなく日常生活と労働にどれだけ制限があるかです。令和8年度の障害基礎年金は2級で年847,300円、1級で1,059,125円。働きながらでも受け取れることは認定基準に明記され、精神障害の受給者の3人に1人は就労しています。一方で令和6年度は精神障害の不支給率が12.1%と前年の倍近くに上がり、厚労省が是正に動いている途上です。
申請の前にやることは、「一人で生活するとしたら、どこに援助が要るか」を書き出して、主治医と共有することです。 診断書と申立書がその実態を同じ言葉で伝えていれば、審査に耐える申請になります。初診日と保険料納付要件は年金事務所で確認できます。まずそこから始めてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の年金相談・法的助言に代わるものではありません。年金額や所得制限額は年度ごとに改定され、認定の運用も見直しが続いています。申請にあたっては、年金事務所または社会保険労務士に個別の状況を確認してください。
記事監修: 平川病院 産業医・発達障害専門医


