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映画『チョコレートな人々』|凸凹のみんなで作る「久遠チョコレート」が教えてくれる「働く」の新しいかたち

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「障がいがあったら、ちゃんと稼ぐことはできないの?」
「自分に合う仕事なんて、本当にあるの?」

もしあなたが──あるいはあなたの大切なお子さんが──そんなふうに感じているなら、ぜひ知ってほしいチョコレートブランドと、1本のドキュメンタリー映画があります。

そのチョコレートブランドの名前は「久遠(くおん)チョコレート」。

全国に61の拠点を持ち、約780名の従業員のうち半数以上が障がいのある方。それでいて、百貨店のバレンタイン催事では有名ショコラティエと肩を並べる人気ブランドです。

そして映画の名前は、『チョコレートな人々』。

この映画は、「かわいそうな人たちを応援しましょう」という話ではまったくありません。凸凹のある人たちが本気でチョコレートを作り、本気で稼ぎ、本気でぶつかり合う。その生々しくも温かい日々を、19年にわたって追いかけたドキュメンタリーです。

この記事では、映画の見どころと久遠チョコレートの取り組みを紹介しながら、「働くこと」に壁を感じているすべての方に、少しだけ希望のかけらをお届けできればと思います。

▼記事を読むのが面倒な人のためにAI解説動画を作りました。読み間違いはご容赦くださいませ。

▼この記事のポイントをまとめたインフォグラフィック(クリックすると拡大します)

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映画『チョコレートな人々』作品情報

まずは映画の基本情報を簡単にまとめておきます。

項目内容
作品名チョコレートな人々
公開年2023年1月(劇場公開)
上映時間102分
監督鈴木祐司
ナレーション宮本信子
製作東海テレビ
受賞歴日本民間放送連盟賞 テレビ部門グランプリ(2021年・TV版)
レビュー評価Filmarks ★4.1(レビュー数579件)

東海テレビのドキュメンタリー劇場シリーズは、『人生フルーツ』『さよならテレビ』など、静かだけれど深く心に残る作品を数多く世に送り出してきました。『チョコレートな人々』はそのシリーズ第14弾にあたります。

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久遠チョコレートって、どんなブランド?

映画の主な舞台となる「久遠チョコレート」について、まずはその全体像を見ていきましょう。

はじまりは、26歳の青年と3人のスタッフの小さなパン屋

久遠チョコレートの代表・夏目浩次さんは、大学・大学院でバリアフリー都市計画を学んだ方です。

2003年、26歳のとき、障がいのある3人のスタッフとともに小さなパン屋を開きました。動機はシンプルで、福祉作業所の工賃があまりにも低いことに疑問を感じたからです。

「1か月働いて1万円。そんなのいいわけないよね」──夏目さんの出発点は、難しい理念ではなく、この率直な感覚でした。

しかしパン屋の経営は簡単ではありませんでした。パンは製造工程が複雑で、やけどの危険もあり、賞味期限が短く売れ残りが出やすい。障がいのあるスタッフが安心して働ける環境を作りながら利益を出すのは、想像以上に困難だったのです。

転機──ショコラティエ・野口和男さんとの出会い

その後、いくつもの事業を立ち上げては失敗を重ねた夏目さんに、大きな転機が訪れます。トップショコラティエの野口和男さんとの出会いです。

野口さんのラボを訪ねた夏目さんは、そこで驚きの光景を目にしました。日本語学校の学生をはじめとするさまざまな人が、シンプルな工程を繰り返しながら質の高いチョコレートを作っていたのです。ベテランのショコラティエばかりが働いているわけではなかった。

そこで夏目さんは、チョコレートという素材が持つ3つの特性に気づきます。

① 失敗しても温めれば、何度でも作り直せる

パンは一度焼いてしまえばやり直しがきかないけれど、チョコレートは溶かせばまたゼロから始められます。これは作業する人にとって、とてつもなく大きな安心感になります。

② 安全で、シンプルな工程の繰り返しでできる

原料を低温で溶かし、型に流して固める。火傷の危険が少なく、丁寧に手順を踏めば経験が浅くても美味しいものが作れる。論理的に正しい手順で作れば、誰でも高品質なチョコレートを生み出せるのです。

③ アイデア次第で付加価値が高まる

ドライフルーツやナッツを組み合わせれば、無限のバリエーションが生まれます。賞味期限が長くギフト需要も高いため、価格も高めに設定できます。

2014年、「久遠チョコレート」が誕生しました。

「福祉」ではなく「ブランド」として成長

ここが久遠チョコレートの最も大切なポイントです。

久遠チョコレートは、「障がい者が作ったチョコレート」ではなく、「おいしいチョコレートブランド」として選ばれることを徹底的に追求してきました。

世界30カ国以上のカカオを使い、余計な油分を一切加えないピュアチョコレートがベース。看板商品の「QUONテリーヌ」は、日本各地の食材を組み合わせた150種類以上のフレーバーがあり、1枚ずつ手作業で仕上げられます。色とりどりのドライフルーツやナッツがのった美しい断面は、見ているだけで心が躍るほどです。

その結果、ジェイアール名古屋タカシマヤの「アムール・デュ・ショコラ」をはじめとする全国の百貨店催事に5年以上連続で出店。有名ショコラティエのブースが並ぶ中で、引っ張りだこの人気を獲得しています。

お客さんは「応援のため」にではなく、「おいしいから」「美しいから」「贈りものにぴったりだから」久遠チョコレートを選んでいるのです。

数字で見る久遠チョコレートの今

2024年7月末時点の公式データをもとに、久遠チョコレートの規模をまとめます。

項目数値
全国の店舗数41店舗
全国の拠点数61拠点
全国の従業員数776名
うち障がいのある方443名
うちその他多様な背景を持つ方※168名

※障害者手帳を持たない方、LGBTQ、子育て中・介護中で時間の融通を希望する方など

注目すべきは、直営店で働く障がいのある方の平均賃金が月16~17万円だという点です。

就労継続支援B型事業所の全国平均工賃は月額約1万7千円~2万3千円程度(算定方法の変更により年度で差があります)。久遠チョコレートの直営店では、その約10倍の賃金を実現していることになります。

これは単なる「善意」ではなく、おいしいチョコレートを作り、適正な価格で販売し、きちんと利益を出すというビジネスの力で成り立っている数字です。

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映画の見どころ──きれいなだけじゃない、19年のリアル

ここからは、映画『チョコレートな人々』の見どころを、ネタバレを避けつつご紹介します。

見どころ① 「変えるべきは人ではなく、環境」という実践

映画の中で最も印象的なのは、夏目さんとスタッフたちが、一人ひとりの障がいや特性に合わせて職場環境を細かくカスタマイズしていく姿です。

たとえば、突然声を上げたり足を踏み鳴らしたりすることがコントロールできないスタッフがいた場合。お気に入りの映像を作業中に常に流しておくことで、穏やかに作業できるようになったエピソードが登場します。

特別な道具を開発したり、作業工程を分解して「この部分ならこの人にもできる」と組み替えたり。人を環境に合わせるのではなく、環境を人に合わせる。その具体的な工夫の数々に、「働く」ということの本質を見せつけられます。

2021年には、重度障がい者が働く「パウダーラボ」もオープン。テリーヌに使う果実やお茶の粉末を作る工場で、ここでの仕事は「作る」ではなく「壊す」こと。石臼で茶葉を砕き、ドライフルーツを細かくカットする。その「壊す」作業が、チョコレートの美味しさを支える立派なものづくりとして成り立っているのです。

見どころ② 失敗も、衝突も、隠さない

この映画が信頼できるのは、きれいなところだけを映していないという点です。

夏目さん自身の過去の失敗、経営の危機、かつて傷つけてしまったスタッフとの関係。カメラは、触れにくい部分にも容赦なく向けられます。

創業当初、障がいのあるスタッフにきちんと給料を払うために1,000万円の借金を背負い、銀行に融資を断られ、クレジットカードのキャッシングでしのいでいた時期もあったそうです。

映画を観た人のレビューには、「夏目さんを美化していない」「うまくいかない部分もしっかり描いている」という声が多く見られます。だからこそ、この映画にはリアルな説得力があります。

見どころ③ 「温めれば、何度でもやり直せる」というメッセージ

映画全体を通して繰り返されるこの言葉は、チョコレートの性質を語っているだけではありません。

事業を何度も立ち上げては失敗してきた夏目さん自身の人生。試行錯誤を繰り返しながら成長していくスタッフたち。うまくいかなくても溶かして固め直せばいい──その姿勢が、観る人の心にじんわりと沁みてきます。

宮本信子さんの穏やかなナレーションが、映画全体をやさしく包みこんでいるのも特徴です。

見どころ④ 圧倒的に美しいチョコレートの映像

ドキュメンタリーでありながら、画面に映るチョコレートの美しさは息をのむほどです。色とりどりのドライフルーツやナッツが散りばめられたテリーヌ、1枚ずつ手切りされるふぞろいなピース。映画を観終わった後に「久遠チョコレートを食べてみたくなった」という感想が非常に多いのも、うなずけます。

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なぜ、この映画を「就労移行支援の保健室」で紹介するのか

当サイトは就労移行支援に関する情報を中心にお届けしていますが、この映画を紹介するのには理由があります。

「働けない」のではなく「働ける環境がない」だけかもしれない

就労移行支援を利用している方の中には、「自分には無理なんじゃないか」「社会に出ても迷惑をかけるだけだ」と感じている方が少なくありません。

久遠チョコレートの実践は、そうした思い込みに強烈な反証を突きつけます。

重度の障がいがあっても、適切な環境と仕組みがあれば、百貨店で売れるチョコレートを作れる。月に数万円だった工賃が、環境を変えるだけで10万円以上になる。それは夢物語ではなく、全国61拠点で今この瞬間も起きている現実です。

「福祉」と「ビジネス」は対立しない

福祉と経済は、しばしば相反するものとして語られがちです。「障がい者に配慮すると生産性が下がる」「利益を追求すると福祉がおろそかになる」。

しかし久遠チョコレートは、この二項対立を乗り越えています。おいしいものを作り、お客さんに喜ばれ、利益を出し、スタッフにきちんと給料を払う。そのサイクルが回っているからこそ、持続可能な「働く場」が存在し続けているのです。

第2回ジャパンSDGsアワードで内閣官房長官賞を受賞していることからも、その取り組みの社会的意義の大きさがうかがえます。

「同情」ではなく「共感」と「消費」で応援できる

この映画を観た後にできるアクションが明確なのも、おすすめしたい理由のひとつです。

久遠チョコレートを買って、食べてみる。それだけで、障がいのある方の「適正な賃金」を支えることにつながります。おいしいチョコレートを楽しむことが、そのまま「応援」になる。こんなにハッピーな循環はなかなかありません。

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映画を観た人たちの声

映画レビューサイトには、多くの感想が寄せられています。その雰囲気をいくつかお伝えします(個人の感想をもとに要約しています)。

「変えるべきはその人ではなく環境だ、ということを実感した」
──地域の映画会で鑑賞した方の感想

「夏目さんの考えが終始ぶれなくて、観ていて気持ちよかった」
──Filmarksレビューより

「観終わった後に静かな希望で胸がいっぱいになった」
──映画公式サイトに寄せられたコメント

「久遠チョコレートをバレンタインに買いに行きました。美味しかったです」
──映画を観て実際にチョコレートを購入した方

多くのレビューに共通しているのは、「感動した」だけで終わらず、「自分にも何かできるのではないか」と行動を促されるという点です。

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映画『チョコレートな人々』を観るには

この映画の視聴方法について、現時点でわかっている情報をまとめます。

自主上映会

東海テレビのドキュメンタリー作品は、DVD化やサブスク配信が行われないことで知られています。『チョコレートな人々』も、2025年7月時点で主要な動画配信サービスでの配信は確認されていません。

ただし、全国各地で自主上映会が開催されています。地域の福祉団体、教育機関、市民グループなどが主催するケースが多く、お住まいの地域で上映会が開かれる可能性があります。

最新の上映スケジュールは、映画の公式サイトで確認できます。

映画『チョコレートな人々』公式サイト

日本映画専門チャンネル

CS放送の「日本映画専門チャンネル」で放送されることがあります。東海テレビドキュメンタリー特集として複数作品がまとめて放送されるケースもあるため、番組表をチェックしてみてください。

上映会を「開く」という選択肢も

配給協力を行っている「東風」では、自主上映会の申し込みを受け付けています。就労支援の事業所や当事者団体、学校などで上映会を企画してみるのも一つの方法です。

自主上映会の案内(東風)

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久遠チョコレートを買ってみたい方へ

映画を観る前でも観た後でも、ぜひ一度食べてみてください。

オンラインで購入

久遠チョコレートの公式サイトから、テリーヌやタブレット、焼き菓子などを購入できます。

久遠チョコレート 公式サイト

全国の店舗で購入

北海道から九州まで、全国41店舗が展開されています。店舗では限定フレーバーに出会えることも。一部の店舗ではショコラショー(チョコレートドリンク)やジェラートも楽しめます。

百貨店の催事で購入

毎年1~2月のバレンタイン催事シーズンには、全国の百貨店に出店しています。催事限定の商品が登場することも多いので、チェックしてみてください。

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夏目浩次さんの著書もおすすめ

映画の内容をさらに深く知りたい方には、夏目さんの著書もおすすめです。

温めれば、何度だってやり直せる チョコレートが変える「働く」と「稼ぐ」の未来(講談社)

久遠チョコレートの立ち上げから成長までの道のり、失敗と試行錯誤、障がい者の労働環境に対する問題意識などが、夏目さん自身の言葉で綴られています。

おすすめの本

温めれば、何度だってやり直せる
チョコレートが変える「働く」と「稼ぐ」の未来

著者:夏目浩次

出版社:講談社|2024年2月9日発売

四六判ソフトカバー/200ページ|定価:1,650円(税込)

借金1,000万円から年商18億円へ。「使えない」とレッテルを貼られた人たちに「居場所」ではなく「稼げる場所」を作る──久遠チョコレート代表・夏目浩次さんの挑戦と試行錯誤の道のりが綴られた一冊です。映画では描ききれなかったパン屋時代の苦闘や、逆算思考でビジネスを成長させる具体的な方法論も詰まっています。

Amazonで見る
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最後に──チョコレートは、溶かせばまたやり直せる

「仕事がうまくいかない」「自分には向いている仕事がない」「もう何度目の挫折かわからない」。

そんなふうに感じている方にこそ、この映画と久遠チョコレートの存在を知ってほしいと思います。

チョコレートは、固まってしまっても温めれば溶ける。溶ければ、また新しい形に固めることができる。何度でも。

これはチョコレートの話であり、同時に、私たち一人ひとりの話でもあります。

久遠チョコレートのスタッフたちは、「配慮されている人」ではなく、「プロのショコラティエ」として、百貨店のお客さんに誇りを持ってチョコレートを届けています。凸凹があるからこそ、1枚ずつ違う表情のテリーヌが生まれ、それがブランドの個性になっている。

凸凹は弱さではなく、価値になりうる。

映画『チョコレートな人々』は、そのことを102分かけて、押しつけがましくなく、でも力強く見せてくれる作品です。


映画『チョコレートな人々』関連リンク

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