障害を抱えながら、将来のキャリアについて考えたとき、「手に職をつけたい」「将来性のある分野で働きたい」と考える方は少なくないでしょう。特に、IT分野のプログラミングやWebデザインは、場所を選ばずに働きやすい可能性もあり、大きな注目を集めています。
しかし、同時に「未経験からでも本当にITスキルなんて身につくのだろうか？」「自分にはプログラミングとWebデザイン、どっちが向いているんだろう？」「そもそも、どうやって学べばいいの？」といった不安や疑問がつきまといます。
この記事では、そんなあなたのための「就労移行支援」を活用したITスキル習得の完全ガイドです。
この記事を読めば、以下のことが分かります。
- プログラミングとWebデザインの具体的な違いと、あなたに合うスキルの見つけ方
- 就労移行支援で学べるITスキルの具体的な内容
- 失敗しない就労移行支援事業所の選び方
- 未経験からIT専門職への就職を成功させるためのステップ
障害を乗り越え、ITという新たなフィールドであなたの可能性を最大限に引き出すための一歩を、この記事と一緒に踏み出しましょう。
記事を読むのが面倒な方のために、AIキャスターによる「ポッドキャスト」を作りました。
読み間違いがありますが、ご容赦ください。
▼就労移行支援でITスキルを掴む！プログラミング・Webデザインで未経験から専門職へ導く全知識
まずは基本をおさえよう！就労移行支援とは？
「就労移行支援」という言葉を初めて聞く方もいるかもしれません。これは、障害者総合支援法に基づいた福祉サービスの一つで、一般企業への就職を目指す障害のある方（65歳未満）を対象に、様々なサポートを提供するものです。
障害のある方の就職をサポートする福祉サービス
就労移行支援の最大の特徴は、単にスキルを教えるだけでなく、就職活動から就職後の定着支援まで、一貫してサポートしてくれる点にあります。
- 職業訓練: PCスキル、ビジネスマナー、コミュニケーションスキルなど
- 自己分析サポート: 自分の得意・不得意や適職を見つけるお手伝い
- 就職活動支援: 履歴書添削、面接練習、求人紹介
- 職場定着支援: 就職後も定期的な面談で、仕事の悩みなどを相談できる
専門のスタッフが一人ひとりの特性や希望に合わせて個別支援計画を作成し、二人三脚で就職を目指す、心強いパートナーとなってくれます。
利用条件・期間・料金（自己負担額）の概要
就労移行支援の利用にはいくつかの条件がありますが、多くの方が対象となります。
- 対象者: 精神障害、発達障害、身体障害、知的障害、難病のある65歳未満の方（障害者手帳がなくても、医師の診断書や自治体の判断で利用できる場合があります）
- 利用期間: 原則として最長24ヶ月（2年間）
- 料金: 前年の世帯所得に応じて自己負担額が異なります。厚生労働省の定める所得区分により、多くの方が自己負担なく無料で利用されています。
| 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
|---|---|
| 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 市町村民税課税世帯（所得割16万円未満） | 9,300円 |
| 上記以外 | 37,200円 |
一般的な職業訓練との違い
ハローワークが実施する職業訓練（ハロートレーニング）もスキル習得の場ですが、就労移行支援は「障害への配慮」と「個別サポートの手厚さ」が大きな違いです。自分のペースで学習を進められたり、体調やメンタル面の相談ができたりと、安心してスキル習得に集中できる環境が整っています。
プログラミング vs Webデザイン あなたに合うのはどっち？
ITスキルといっても、代表的な「プログラミング」と「Webデザイン」では、仕事内容も求められる適性も大きく異なります。自分に合わないスキルを選んでしまうと、学習のモチベーション維持が難しくなることも。ここで、両者の違いをしっかり理解し、あなたの適性を見極めましょう。
【徹底比較】仕事内容・必要なスキル・学習内容・将来性
一目で違いが分かるように、それぞれの特徴を表にまとめました。
| 項目 | プログラミング | Webデザイン |
|---|---|---|
| 仕事内容 | Webサイトやアプリの「仕組み」を作る。目に見えない裏側の機能（データ処理、サーバー連携など）を構築する。 | Webサイトの「見た目」を作る。ユーザーが快適に使えるようなレイアウトや配色、装飾をデザインする。 |
| 必要なスキル | 論理的思考力、問題解決能力、集中力、数学的な素養 | デザインセンス、色彩感覚、共感力、コミュニケーション能力 |
| 主な学習言語/ツール | HTML/CSS, JavaScript, PHP, Ruby, Python, Javaなど | Photoshop, Illustrator, Figma, Adobe XD, WordPressなど |
| 働き方の特徴 | チームでの開発が多い。仕様書に基づき、黙々と作業することも。 | クライアントやチームとの連携が重要。ヒアリングや提案の機会が多い。 |
| 平均年収/キャリアパス | 高い傾向。プロジェクトマネージャー、ITコンサルタントなど | 幅広い。アートディレクター、UI/UXデザイナー、フリーランスなど |
簡単3ステップ！あなたにおすすめのスキル診断
まだ迷っている方は、以下の3つの質問に答えてみてください。
Step1: モノづくりへの興味
- A: モノが動く「仕組み」や「構造」に興味がある → プログラミング向き
- B: モノの「見た目」や「使いやすさ」を考えるのが好き → Webデザイン向き
Step2: 問題解決のスタイル
- A: パズルのように、論理を組み立てて答えを導き出すのが得意 → プログラミング向き
- B: 人の話を聞き、課題を整理して解決策を提案するのが得意 → Webデザイン向き
Step3: 働き方の希望
- A: 集中して一人で作業する時間が多い方が心地よい → プログラミング向き
- B: 人とコミュニケーションを取りながら仕事を進めたい → Webデザイン向き
Aが多かったあなたはプログラミング、Bが多かったあなたはWebデザインへの適性が高いかもしれません。もちろん、これはあくまで簡易的な診断です。多くのWebサイトはデザインとプログラミングの両方で成り立っているため、両方の知識があると、より市場価値の高い人材になれるでしょう。
就労移行支援で学べるプログラミングスキルの具体例
就労移行支援では、未経験者でも基礎から実践まで学べるカリキュラムが用意されています。具体的にどのようなスキルが身につくのか見ていきましょう。
Webサイトの基礎：HTML/CSS, JavaScript
- HTML/CSS: Webページの骨格と装飾を作る言語です。全てのWeb制作の基本となります。
- JavaScript: Webページに動きや対話性（アニメーション、ポップアップ表示など）を加えるための言語。現代のWebサイトには不可欠です。
需要の高いサーバーサイド言語：PHP, Ruby, Python
これらはWebサイトの「裏側」、つまりサーバーで動くプログラムを作るための言語です。
- PHP: WordPressで使われており、Web業界で非常に需要が高い言語です。
- Ruby: 日本人が開発した言語で、直感的に書きやすいのが特徴。Webアプリ開発で人気です。
- Python: AI・機械学習分野で有名ですが、Web開発でも広く使われています。
スキル習得後の就職先イメージ
これらのスキルを習得することで、以下のような職種を目指せます。
- フロントエンドエンジニア: ユーザーが直接触れる部分（見た目や操作）を開発します。
- サーバーサイドエンジニア（バックエンドエンジニア）: サーバー側のシステムやデータベースを構築します。
- プログラマー: 仕様書に基づいて、様々なシステムのコーディングを担当します。
就労移行支援で学べるWebデザインスキルの具体例
Webデザイナーを目指すコースでは、デザインの原則から実践的なツールの使い方まで幅広く学びます。
デザインの必須ツール：Photoshop, Illustrator
- Photoshop: 写真の加工や合成、Webサイトに使う画像（バナーなど）の作成に使います。
- Illustrator: ロゴやアイコンなど、拡大・縮小しても劣化しない画像の作成に使います。
今どきのWeb制作に不可欠：Figma, Adobe XD
これらは、Webサイトやアプリのレイアウト（UIデザイン）や、ユーザーの使いやすさ（UXデザイン）を設計するためのツールです。チームでの共同作業がしやすく、現在のWebデザインの主流となっています。
サイト構築の要：WordPress
世界中のWebサイトの43%以上がWordPressで作られています（2025年8月時点 W3Techs調べ）。プログラミングの知識がなくてもサイトの更新・管理ができるシステムで、このスキルは多くの企業で重宝されます。
スキル習得後の就職先イメージ
- Webデザイナー: Webサイト全体のデザインを担当します。
- UI/UXデザイナー: ユーザーにとっての使いやすさや快適な体験を設計します。
- Webコーダー: デザイナーが作成したデザインを、HTML/CSSを使ってWebページとして構築します。
- Web担当者: 企業のWebサイトの更新や運営を担当します。
【失敗しない】ITスキルが学べる就労移行支援事業所の選び方5つのポイント
「どこで学ぶか」は、スキル習得と就職成功を左右する非常に重要な要素です。数ある事業所の中から、あなたに合った場所を見つけるための5つのチェックポイントを紹介します。
Point1: カリキュラムの質と実践環境
- 教材は最新か
IT業界の技術は日進月歩です。カリキュラムが現代のニーズに合っているか確認しましょう。 - 実践的な課題はあるか
知識を詰め込むだけでなく、実際にWebサイトや簡単なアプリを作るなど、アウトプットの機会が豊富にあるかどうかが重要です。 - 質問しやすい環境か
分からないことをすぐに質問できるスタッフがいるか、個別指導の時間は確保されているかなど、サポート体制をチェックしましょう。
Point2: IT分野の就職実績は豊富か
事業所のパンフレットや公式サイトで、必ず就職実績を確認しましょう。
- 就職者数
これまでの卒業生がどれくらい就職しているか。 - 就職先の企業例
どのような企業に就職しているか。IT企業への就職実績が豊富にあれば、それだけノウハウが蓄積されている証拠です。 - 職種
どのような職種（プログラマー、Webデザイナーなど）で就職しているか。
Point3: ポートフォリオ制作のサポート体制は万全か
IT分野の就職活動では、スキルを証明するためのポートフォリオ（作品集）が非常に重要です。
「カリキュラムの一環としてポートフォリオ制作が組み込まれているか」「企画から制作、発表までスタッフがしっかりサポートしてくれるか」は必ず確認してください。質の高いポートフォリオは、強力な武器になります。
Point4: オンライン・在宅受講に対応しているか
体調の波や対人関係の不安から、毎日通所するのが難しい方もいるでしょう。最近では、自宅からオンラインで受講できる事業所も増えています。
- 完全オンライン対応か
全てのカリキュラムを在宅で完結できるか。 - 通所と併用可能か
週に数日は通所し、残りは在宅といった柔軟な利用ができるか。
Point5: 障害への理解と配慮があるか
スキル習得と両立して、障害特性や体調管理についての相談ができる環境は不可欠です。
- スタッフの専門性
精神保健福祉士や臨床心理士などの専門資格を持つスタッフがいると安心です。 - 事業所の雰囲気
実際に見学や体験利用をしてみて、自分に合う雰囲気かどうかを肌で感じることが最も重要です。
【地域・オンライン別】プログラミング・Webデザインが学べるおすすめ就労移行支援事業所
ここでは、ITスキルに強みを持つ代表的な事業所をいくつか紹介します。※各事業所の最新のカリキュラムは、必ず公式サイトでご確認ください。
全国展開・大手のおすすめ事業所
| 事業所名 | 特徴 | カリキュラム例 |
|---|---|---|
| LITALICOワークス | 業界最大手。全国に事業所があり、豊富な実績とノウハウが強み。個別最適化されたカリキュラムが特徴。 | Webサイト制作、プログラミング基礎、デザインソフト演習など多彩なコース。 |
| ココルポート | IT特化の「Cocorport-IT」を展開。eラーニングと実践的な演習を組み合わせたカリキュラム。 | HTML/CSS, JavaScript, PHP, Python, デザイン基礎など。 |
| atGPジョブトレIT・Web | 障害者向け転職サービスのatGPが運営。就職への強い連携が魅力。実践的なチーム開発なども経験できる。 | Webデザイン、プログラミング、Webマーケティングなど。 |
atGPジョブトレ IT・Webの特長
- 本格的なWebスキルが学べる
デジタルハリウッド大学の動画教材を無料で受講でき、Webデザインやプログラミングの本格的なスキルを基礎から学べます。 - 高い就職実績
障害者雇用に詳しい専門スタッフが、応募書類の添削から面接練習、就職後の定着まで手厚くサポートしてくれます。 - 便利な立地
都内では渋谷や秋葉原など、通いやすい場所に事業所があります。
「少し遠くても、質の高い訓練を受けてIT分野で就職したい」「他の事業所の雰囲気も見てみたい」という方は、ぜひ一度「atGPジョブトレ」の公式サイトをチェックしてみてください。無料の説明会や個別相談も随時開催されています。
オンライン・在宅で学べるおすすめ事業所
- ディーキャリア
- ITスキルに加え、発達障害の特性に合わせた「ライフスキルコース」が充実。在宅コースも用意。
- アーネストキャリア
- ITに特化したオンライン完結型の就労移行支援。チャットやビデオ通話で手厚いサポートが受けられる。
よくある質問（Q&A）
- Q全くの未経験でも授業についていけますか？
- A
はい、大丈夫です。ほとんどの就労移行支援事業所では、未経験者を前提としたカリキュラムを組んでいます。PCの電源の入れ方やタイピングといった基本から丁寧に教えてくれるので、安心して始めることができます。
- Qパソコンが苦手でも大丈夫ですか？
- A
大丈夫です。入所当初はPC操作に不慣れだったという方もたくさんいます。自分のペースで学習を進められるので、焦らず少しずつ慣れていけば問題ありません。
- Q訓練期間中に生活費がもらえる制度はありますか？
- A
就労移行支援自体には、給付金や工賃の制度はありません。しかし、お住まいの自治体によっては「障害者就労訓練給付金」などの制度が利用できる場合があります。また、障害年金を受給しながら通所されている方も多くいます。詳しくは市区町村の障害福祉窓口にご相談ください。
- Q週5日で通うのが難しいのですが…
- A
事業所によりますが、週1日や半日からの利用など、体調に合わせて柔軟に対応してくれる場合が多いです。まずは無理のないペースから始め、徐々に日数を増やしていく方もたくさんいます。見学や相談の際に、希望を伝えてみましょう。
まとめ
就労移行支援を活用してプログラミングやWebデザインを学ぶことは、未経験からでもIT専門職を目指せる、非常に有効な選択肢です。
この記事のポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 自分に合うスキルを見極める
論理的な思考が得意ならプログラミング、見た目や使いやすさを考えるのが好きならWebデザインがおすすめ。 - 事業所選びが成功の鍵
カリキュラム、就職実績、ポートフォリオ支援、オンライン対応、障害への配慮の5つのポイントを必ずチェックする。 - まずは行動あるのみ
気になる事業所が見つかったら、資料請求や無料の見学・相談に申し込んでみましょう。
ITスキルは、あなたのキャリアに新たな扉を開いてくれる強力な武器となります。一人で悩まず、まずは専門の支援機関に相談することから始めてみませんか。あなたの「挑戦したい」という気持ちを、就労移行支援は全力でサポートしてくれるはずです。
*【免責事項】この記事で紹介している情報は2025年8月時点のものです。各就労移行支援事業所のサービス内容やカリキュラムは変更される可能性があります。
