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大人の発達障害で”おしゃべりが止まらない”のはなぜ?原因と本人・周囲ができる具体的対策

発達障害ガイド

「いつも自分ばかり話している気がする…」
「会議でつい余計なことまで話してしまい、後で自己嫌悪に陥る」
「相手の反応を見ると、どうやら退屈させてしまったようだ」

このように、自分の「おしゃべりが止まらない」特性に悩み、人間関係や仕事で生きづらさを感じていませんか? もしかしたら、その悩みの背景には、発達障害の特性が関係しているかもしれません。

この記事では、大人の「おしゃべりが止まらない(多弁)」という特性について、その原因から、本人と周囲の人が明日から実践できる具体的な対処法、さらにはその特性を「強み」に変える方法まで、専門家の視点から分かりやすく解説します。

この記事を読めば、あなたを悩ませる「おしゃべり」の正体を正しく理解し、具体的なコントロール方法を身につけることで、コミュニケーションの悩みを軽くすることができるはずです。

▼記事を読むのが面倒な人のためにAI解説動画を作りました。読み間違いはご容赦くださいませ。

この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、自己判断せず専門の医療機関にご相談ください。

  1. 「おしゃべりが止まらない」大人の背景にある発達障害とは?
    1. 主な原因はADHD(注意欠如多動症)の「衝動性」
    2. ASD(自閉スペクトラム症)の特性が関係しているケースも
    3. 発達障害ではなく、他の原因も考えられる
  2. 【セルフチェック】あなたはどのタイプ?多弁の具体的な特徴
  3. 【本人向け】明日からできる!おしゃべりをコントロールする7つの対処法
    1. 1. 「話す前の一呼吸」を習慣にする
    2. 2. 伝えたい「要点」をメモに書き出す
    3. 3. 会話の「キャッチボール」を意識する
    4. 4. 「時間」を意識して話すトレーニング
    5. 5. 自分の状態を客観的にモニタリングする
    6. 6. 信頼できる人に合図をもらう
    7. 7. 得意な「聞く」シチュエーションを作る
  4. 【周囲の人向け】本人を傷つけずにサポートする関わり方
    1. 1. まずは特性への「理解」を示す
    2. 2. 「アイメッセージ」で具体的に伝える
    3. 3. 時間やルールの「見える化」でサポートする
    4. 4. ポジティブなフィードバックを忘れない
  5. 多弁は短所じゃない!「おしゃべり」を仕事や人生の強みに変える方法
    1. 「アイデアの宝庫」として活かす
    2. 「発信力」を専門分野で活かす
    3. 「コミュニケーション能力」を活かせる職業
  6. 専門機関への相談も選択肢に
    1. どこに相談すればいい?
    2. どのような治療やサポートがある?
  7. まとめ

「おしゃべりが止まらない」大人の背景にある発達障害とは?

大人の「おしゃべりが止まらない(多弁)」という特性は、本人の性格や「空気が読めない」といった単純な問題ではなく、脳機能の偏りから生じる発達障害の特性が背景にある場合があります。特に、ADHD(注意欠如多動症)やASD(自閉スペクトラム症)との関連が指摘されています。

主な原因はADHD(注意欠如多動症)の「衝動性」

ADHDの特性には「不注意」「多動性」「衝動性」の3つがありますが、多弁と最も関係が深いのは「衝動性」です。

これは、頭に浮かんだことを、その内容やタイミングをよく考える前に、衝動的に口に出してしまう特性です。自分ではコントロールしているつもりでも、次から次へと言葉が溢れ出し、結果として一方的に長く話し続けてしまいます。

ADHDの多弁によく見られる特徴:

  • 話があちこちに飛び、脱線しやすい
  • 相手の話を最後まで聞かずに、つい遮って話し始めてしまう
  • 質問に端的に答えられず、関係のない情報まで付け加えてしまう
  • 相手が話すタイミングや間(ま)を作るのが苦手

これらは決して悪気があるわけではなく、脳の前頭前野の機能(行動のコントロールや判断を司る部分)の働き方の違いが関係していると考えられています。

ASD(自閉スペクトラム症)の特性が関係しているケースも

一方、ASDの特性が多弁につながることもあります。ASDの人は、コミュニケーションや対人関係において特有のパターンを持ちます。

特に、自分の興味・関心が強い特定のテーマについて、膨大な知識をもとに一方的に話し続けてしまうことがあります。相手の興味の有無や理解度に関わらず、自分のペースで話を進めてしまうため、周囲からは「おしゃべりが止まらない」と見られることがあります。

ADHDの多弁とASDの多弁は、似ているようでその背景が異なります。

特性ADHD(注意欠如多動症)由来の多弁ASD(自閉スペクトラム症)由来の多弁
話す動機衝動性(思ったことをすぐ口に出す)強い興味・関心事の共有(自分の好きなことを伝えたい)
話の内容次々に話題が飛ぶ、脱線しやすい特定のテーマに限定され、専門的で詳細
会話の形式早口で、相手の話を遮ることが多い一方通行になりがちで、相手の反応に気づきにくい
本人の認識後から「話しすぎた」と後悔することがある話しすぎているという自覚がない場合が多い

※これらの特徴はあくまで一般的な傾向であり、個人差が大きいことや、両方の特性を併せ持つ場合もあります。

発達障害ではなく、他の原因も考えられる

「おしゃべりが止まらない」状態は、必ずしも発達障害だけが原因ではありません。強い不安やストレスを感じた時に、それを紛らわすために無意識に話し続けてしまうことや、双極性障害の躁状態の症状として多弁が現れることもあります。気になる場合は、自己判断せず専門機関に相談することが大切です。

【セルフチェック】あなたはどのタイプ?多弁の具体的な特徴

ご自身の傾向を客観的に把握するために、以下の項目をチェックしてみましょう。当てはまるものが多いからといって、直ちに発達障害と診断されるわけではありませんが、自分の特性を理解する手がかりになります。

【ADHD由来の多弁かも?】

  • □ 頭に浮かんだことを、考えがまとまる前に話し始めている。
  • □ 会話の途中で、全く違う話題を思いついて話が飛んでしまう。
  • □ 相手が話し終わるのを待てず、つい言葉を被せてしまう。
  • □ 結論から話すのが苦手で、経緯を長々と説明してしまう。
  • □ 後になって「あんなことまで話す必要はなかった」と後悔することが多い。

【ASD由来の多弁かも?】

  • □ 自分の好きなことや得意な分野の話になると、夢中になって話し続けてしまう。
  • □ 相手がその話題に興味があるかどうか、あまり気にならない。
  • □ 会話のキャッチボールよりも、自分が知っている情報を伝えることに集中しがち。
  • □ 相手の表情や相槌から、会話を切り上げるタイミングを掴むのが難しい。
  • □ 「説明が専門的すぎる」「一方的だ」と指摘されたことがある。

※このチェックリストはあくまで自己理解を深めるための目安であり、医学的な診断に代わるものではありません。

【本人向け】明日からできる!おしゃべりをコントロールする7つの対処法

多弁の特性は、意識と工夫次第でコントロールすることが可能です。ここでは、日常生活や仕事の場面で実践できる具体的な方法を7つご紹介します。

1. 「話す前の一呼吸」を習慣にする

衝動的に話し出しそうになったら、意識的に「1、2、3」と心の中で数える、あるいは一度ゆっくり息を吸って吐くなど、物理的な「間」を作りましょう。この一瞬の間が、話す内容を整理し、衝動を抑える助けになります。

2. 伝えたい「要点」をメモに書き出す

特に会議や報告など、重要な場面では事前に伝えたいことの「要点」を3つ程度に絞り、メモに書き出しておきましょう。話が脱線しそうになった時にメモを見返すことで、本題に戻ることができます。

3. 会話の「キャッチボール」を意識する

会話は一人で行うものではありません。「自分が話したら、次は相手の番」というキャッチボールを意識しましょう。具体的には、「~については、どう思いますか?」と質問を投げかけたり、相手が話している時は頷きや相槌に集中したりすることで、一方的な会話を防ぎます。

4. 「時間」を意識して話すトレーニング

スマートフォンや腕時計のタイマー機能を活用し、「この報告は3分で終える」などと時間を設定して話す練習をしてみましょう。時間を意識することで、話を簡潔にまとめるスキルが向上します。

5. 自分の状態を客観的にモニタリングする

会話の最中に、「今、自分は話しすぎていないか?」「相手は退屈していないか?」と、自分自身を客観的に観察する(モニタリングする)癖をつけましょう。メタ認知能力を高めることで、会話の軌道修正がしやすくなります。

6. 信頼できる人に合図をもらう

職場の同僚や家族など、信頼できる人に事前に「もし私が話しすぎていたら、咳払いやジェスチャーで合図を送ってほしい」と頼んでおくのも有効な方法です。客観的なフィードバックが、自己認識を助けてくれます。

7. 得意な「聞く」シチュエーションを作る

常に話す側でいる必要はありません。意識的に「インタビュアー役」に徹し、相手に質問して話を引き出す側に回ってみましょう。「聞くこと」に集中することで、自分が話す時間を自然に減らすことができます。

【周囲の人向け】本人を傷つけずにサポートする関わり方

家族や職場の同僚など、身近な人の多弁に悩んでいる場合、伝え方一つで相手を深く傷つけてしまう可能性があります。ここでは、良好な関係を保ちながらサポートするための関わり方をご紹介します。

1. まずは特性への「理解」を示す

最も大切なのは、「悪気があってやっているわけではない」という理解です。多弁は本人の性格の問題ではなく、脳の特性に起因するものであり、本人もコントロールに苦労し、悩んでいるケースが多いことを念頭に置きましょう。

2. 「アイメッセージ」で具体的に伝える

相手を主語にする「ユーメッセージ」(例:「あなたは話が長い」)は、相手を責めるニュアンスになりがちです。代わりに、自分を主語にする**「アイメッセージ」**を使いましょう。

伝え方の例:

  • NG: 「話が長くて要点が分からないよ」
  • OK: 「(私は)話の要点を理解したいから、先に結論から教えてもらえると助かるな」
  • OK: 「(私は)他のタスクの時間も気になるから、この話は5分で終えられると嬉しいな」

3. 時間やルールの「見える化」でサポートする

会議の前に「今日の議題はこれで、一人あたりの発言時間は3分です」とアジェンダを共有したり、雑談の際に「ごめん、あと5分しか時間がないんだ」と物理的な制約を伝えたりすることで、お互いにストレスなく会話を進めやすくなります。

4. ポジティブなフィードバックを忘れない

もし本人が話を短くまとめようと努力している様子が見られたら、すかさず「今の説明、すごく分かりやすかったよ!」「要点をまとめてくれてありがとう」といったポジティブな言葉をかけましょう。成功体験が、本人のモチベーションに繋がります。

多弁は短所じゃない!「おしゃべり」を仕事や人生の強みに変える方法

「おしゃべりが止まらない」という特性は、見方を変えれば素晴らしい「強み」になります。コントロールする方法を身につけつつ、その長所を活かせる場所を見つけることで、自己肯定感を高めることができます。

「アイデアの宝庫」として活かす

次から次へと言葉や思考が浮かぶということは、それだけ発想力が豊かだということです。企画会議やブレインストーミングの場では、その豊かなアイデアがチームの大きな力になります。

「発信力」を専門分野で活かす

好きなことについて深く、熱く語れるのは才能です。その知識と発信力を、SNSやブログでの情報発信、プレゼンテーション、動画コンテンツの配信などで活かせば、多くの人に価値を届けることができます。

「コミュニケーション能力」を活かせる職業

話すことが好き、人と関わることが好きという特性は、多くの職業で求められるスキルです。例えば、以下に挙げるような仕事はあくまで一例ですが、その能力を発揮して活躍している方もいます。

  • 営業職: 商品やサービスの魅力を情熱的に伝える
  • 接客・販売職: 顧客との会話を楽しみながら信頼関係を築く
  • 講師・インストラクター: 専門知識を分かりやすく、楽しく教える
  • 広報・PR: 自社の魅力をメディアや社会に向けて発信する

専門機関への相談も選択肢に

もし、セルフケアだけでは改善が難しい、仕事や日常生活に大きな支障が出ている、あるいは「これは発達障害かもしれない」と強く感じる場合は、一人で抱え込まずに専門機関に相談してみましょう。

どこに相談すればいい?

お住まいの地域にある以下の機関が相談窓口になります。

  • 発達障害者支援センター
    発達障害に関する総合的な相談窓口です。
  • 精神科・心療内科
    医師による診断や治療を受けることができます。
  • カウンセリングルーム
    臨床心理士などによるカウンセリングを通じて、困りごとの整理や対処法を学ぶことができます。

どのような治療やサポートがある?

医療機関や支援機関では、診断だけでなく、個々の特性に合わせた様々なサポートを受けることができます。

  • カウンセリング
    自身の特性の理解を深め、悩みを整理します。
  • 認知行動療法
    思考や行動のパターンを見直し、より適切なものに変えていくトレーニングです。
  • ソーシャルスキルトレーニング(SST)
    ロールプレイングなどを通じて、具体的なコミュニケーションスキルを学びます。
  • 薬物療法
    医師の診断に基づき、特性との付き合い方をサポートするための一つの選択肢として、衝動性などをコントロールする薬物療法が行われることがあります。

まとめ

「おしゃべりが止まらない」という悩みは、決してあなたの性格だけの問題ではありません。その背景にあるADHDやASDといった発達障害の特性を正しく理解し、適切な対処法を実践することで、その悩みは必ず軽減できます。

【本人ができること】

  • 話す前に一呼吸おく、要点をメモするなど、衝動をコントロールする工夫を試す。
  • 自分の特性を悲観せず、発想力や発信力といった「強み」として活かす道を探す。

【周囲ができること】

  • 責めるのではなく、特性として理解し、「アイメッセージ」で具体的に伝える。
  • 時間を区切るなどのルールを設け、ポジティブなフィードバックを心がける。

そして何よりも大切なのは、一人で抱え込まないことです。コントロールが難しいと感じたり、生きづらさが続くようであれば、ぜひ専門機関の力を借りてください。あなたの特性に合ったサポートを受けることで、コミュニケーションはもっと楽になり、あなたの持つ素晴らしい個性を社会で輝かせることができるはずです。


※注意事項:
この記事は情報提供を目的としたものであり、医学的な診断に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、自己判断せず専門の医療機関にご相談ください。

記事監修: 平川病院 産業医・発達障害専門医

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