「ちょっとした予定変更で頭が真っ白になり、怒鳴ってしまった」
「部下が指示通りに動かないと、殺意に近い怒りが湧く」
大人になれば感情のコントロールはできて当然。そう思っているのに、どうしても怒りが抑えられないことに苦しんでいませんか? または、身近な人の理不尽な激昂に疲れ果てていませんか?
実は、思い通りにならないと激しく怒る背景には、単なる「性格」や「わがまま」では片付けられない「脳の特性」や「隠れた疾患」が関与しているケースが少なくありません。
この記事では、制御不能な怒りの裏に潜む病気の可能性と、今日からできる具体的な対処法を解説します。
▼記事を読むのが面倒な人のためにAI解説動画を作りました。読み間違いはご容赦くださいませ。
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1. 自分の思い通りにならないと怒る:疑われる4つの「病気・障害」

感情のブレーキが効かない場合、以下の医学的な背景が隠れている可能性があります。ただし、これらは素人が診断できるものではありません。あくまで「傾向」として参考にしてください。
① 自閉スペクトラム症(ASD)
ASDの特性として「こだわり」や「ルールの厳守」があります。
- 特徴: 自分の決めた手順や予定が崩れることに極度のストレスを感じる(同一性保持)。
- 怒りの理由: 「わがまま」ではなく、急な変化による「パニック」に近い反応として怒りが表出します。
② 注意欠如・多動症(ADHD)
ADHDの特性には「衝動性」が含まれます。
- 特徴: 思ったことを即座に行動・発言に移してしまう。
- 怒りの理由: 脳の実行機能の働きにより、怒りの感情が湧いた瞬間にブレーキを掛ける間もなく爆発してしまいます(衝動的易怒性)。
③ パーソナリティ障害(自己愛性・境界性など)
性格の偏りが極端で、社会生活に支障をきたす状態です。
- 自己愛性: 「自分は特別である」という意識が強く、評価されないと激怒します(自己愛憤怒)。
- 境界性: 見捨てられる不安が強く、相手の些細な言動を「裏切り」と捉えて激昂します。
④ 間欠性爆発性障害
些細なきっかけで、状況に見合わないほどの攻撃的な衝動を引き起こす精神疾患です。
- 特徴: 普段は穏やかでも、スイッチが入ると物を壊したり暴力を振るったりします。発作後には後悔することが多いのも特徴です。
| 疾患・障害 | 怒りのトリガー | 特徴的な反応 |
|---|---|---|
| ASD | 予定変更、ルールの逸脱 | パニック、フリーズ後の爆発 |
| ADHD | 待ち時間、退屈、刺激 | 瞬間湯沸かし器的な怒り |
| 自己愛性PD | 批判、無視、軽視 | 執拗な攻撃、見下し |
| 間欠性爆発性障害 | 些細な刺激全般 | 破壊衝動、暴力 |
2. 病気だけではない?怒りを生む「心理的メカニズム」

病気という診断がつかなくても、思考の癖(認知の歪み)が怒りを増幅させている場合があります。
「こうあるべき」という白黒思考
「挨拶は絶対にすべき」「仕事は完璧にやるべき」といった「べき思考」が強すぎると、そこから少しでも外れた他人が許せなくなります。0か100かでしか物事を判断できない状態です。
認知的固執(こだわりの強さ)
自分のやり方が「正解」で、それ以外は「間違い」と断定してしまう心理です。相手の事情や別の正解を想像する余裕がない状態です。
ストレスと耐性低下(HSPなど)
繊細な気質(HSP)を持つ人は、光や音、他人の感情などの刺激に敏感です。容量オーバーになると、防衛反応として「怒り」を使って自分を守ろうとします。これは病気ではなく、生まれ持った気質によるものです。
3. 【本人向け】怒りをコントロールする具体的アクション

もしあなたが「怒りすぎてしまう自分」をなんとかしたいと思っているなら、以下の方法を試してください。
① 6秒ルール(アンガーマネジメント)
怒りのピークは長くて6秒と言われています。
- 実践法: イラッとしたら、心の中で数字をゆっくり数える。「1、2、3…」と数えることに意識を集中させ、理性が戻るのを待ちます。反射的に言葉を発するのを防ぐ効果があります。
② 「タイムアウト」を取る
物理的にその場を離れることです。
- 実践法: 「トイレに行きます」「少し頭を冷やします」と告げて、刺激源(相手)から視線を外し、別の部屋へ移動します。この際、必ず戻ってくる時間を告げると相手も安心します。
③ 「べき」を「願望」に書き換える
- 修正前: 「彼は私の話を聞くべきだ」
- 修正後: 「彼が私の話を聞いてくれたら嬉しいな(でも聞けない時もあるか)」
言葉のニュアンスを変えるだけで、脳への絶対的な命令(ストレス信号)が弱まります。
4. 【家族・周囲向け】キレる大人への接し方

パートナーや家族がこのタイプの場合、まともに戦ってはいけません。あなたの心を守ることを最優先してください。
同じ土俵に乗らない
相手が感情的になっている時、正論で返すと火に油を注ぎます。「あなたはそう思ったんだね」と、まずは感情の事実だけを受け止め(共感ではなく受容)、反論や話し合いは相手が落ち着いてからにします。
「私」を主語にする(アイ・メッセージ)
「なんで怒るの!(You)」と責めると攻撃とみなされます。「あなたが怒鳴ると、私は悲しい/怖い(I)」と伝えます。攻撃されたと感じさせずに、相手に気付きを与える心理学的アプローチです。
危険を感じたら迷わず逃げる
物が飛んでくる、暴言がひどい場合は、DV(ドメスティック・バイオレンス)です。病気かどうかに関わらず、物理的な距離を取り、専門機関(配偶者暴力相談支援センターなど)へ相談してください。
まとめ:受診の目安と次の一歩

「自分の思い通りにならないと怒る」という状態は、性格の問題だけではなく、脳機能や精神的な課題が隠れていることが多々あります。
心療内科・精神科を受診すべきサイン
- 怒りで仕事や人間関係を失ったことがある。
- 怒った後に激しい自己嫌悪に陥り、「消えてしまいたい」と思う。
- 物にあたる、手をあげるなど、暴力性が伴う。
まずは、「自分(または相手)は困っているのだ」と認めることから始まります。一人で抱え込まず、専門医やカウンセラーの手を借りて、穏やかな日常を取り戻しましょう。
主な相談窓口
- こころの健康相談統一ダイヤル: 0570-064-556
- 配偶者暴力相談支援センター(DV相談): #8008(はれれば)
免責事項:
※本記事は情報提供を目的としており、医師による診断に代わるものではありません。症状が続く場合は医療機関をご受診ください。
記事監修: 平川病院 産業医・発達障害専門医


