【日本の現状】
2012年度に文部科学省で実施された全国実態調査「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」によると、学齢期の子どもの約6.5%が何らかの形で発達障害を持っている可能性があるという結果が示されました。
その後、2022年度に実施された全国実態調査では、通常の学級に在籍する小中学生の「知的発達に遅れはないものの学習または行動面で著しい困難」を示す生徒は8.8%という結果となり、2012年の前回調査からその割合が増えていることが窺えます。
注意したいことは、この調査では「学習や行動に困難のある生徒」が皆発達障害を持っていることを示しているのではなく、何かしらの配慮を必要とする子どもの存在がそれだけ学校の教員から認識されているという点です。
そのような学習や行動に困難のある生徒の中には、教員による「授業での個別の配慮・支援」を受けていない児童生徒が43.2%いるとの結果になっており、その中にいるかもしれない発達障害をもつ子どもにとっても、早期の介入が必要であると考えられます。
早い段階で必要な配慮・支援を得ることは、失敗や上手くいかない経験から抱える二次的な問題(二次障害)を減らし、その子が自分に合った環境で生活することで得られる良い経験を増やすことに繋がると考えられます。
このようなことから、発達障害の早期発見や早期介入が重要となります。ここでの早期発見とは、発達障害の診断を早く受けること以上に、周囲の人が子どもの発達の特徴に早めに気づくことを指しています。
【早期発見のメリット】
人は、生まれてから生涯に渡って発達する(成長する)と考えられています。発達の早さや仕方には個人差があり、発達が早い人やゆっくりな人もいます。また、得意・不得意も人それぞれ違う特徴を持っています。このように、発達の仕方はそれぞれであっても、人は少しずつでもその人なりのペースで発達していきます。しかし、発達障害をもつ人は、その特性によって、自分自身で獲得していくことが難しい場合があります。
そのような場合、その子に合った関わり方、特性に合わせた配慮・支援をすることによって、発達を促していく一助になります。
○早期発見で得られること
- その子に合わせた関わり方やまわりからの配慮、支援を得ることで、その子なりの発達を促すことに繋がる。
- 発達障害をもつ子どもの二次的な問題(二次障害)を防ぐことに繋がる。
- 医療機関や相談機関を利用するきっかけになり、その子の得意・不得意などを知る機会を得やすい。
その結果、親だけが抱えこむ状況を変えることも期待できる。
以下に子どもの発達に影響すると考えられる特性(特徴)の例を示します。
*あくまでも一例であり、また、その特性が悪い面ばかりではなく、プラスに働くこともあります。
○発達する上で影響してくる特性(あくまで一例です)
発達障害の種類 | 特性の例 | 発達上の影響 |
ASD | 特定のものへの興味・関心が強い | 人よりも物に関心が強い人は、親をはじめ人の存在を意識しにくく、真似をしながら成長する機会を得にくい。 |
ADHD | 衝動性の強さ | 思い立ったらすぐ行動に移すことで、悪気なく他の人の物を取ることや、先に手を出しがちになる。 (ルールが守れない状況になる、まわりの状況を把握することが難しい)。 |
LD | 文章を読むことはできるが、書くことが苦手 | 文章は読めることで、書けないことが理解されにくく、また、自分自身でも書くことの工夫の仕方がわからない。 |
【子どものどのような行動に注目するか~子どもの行動への注目ポイント~】
では、発達障害に気づいていくためには、どんなことが必要なのでしょうか。
一つは、通常の発達の段階を知り、その違いに気づくこと、もう一つは発達障害をもつ子どもにみられる特性(特徴)を知り、行動に注目していくことが、気づきに繋がります。
今回は、後者の発達障害を持つ子どもに見られる特性を示し、周囲の人が子どもの日常の行動パターンに注目することで、その子の発達の特性に気づくヒントになればと思います。
*特性の気づきは苦手なことだけでなく、得意なことにも気づくことができるとよいと思います。
○注目ポイントの例(全てを表しているわけではありません)
注目ポイント | 具体的な特性 |
コミュニケーションの取り方 | ・一般的な言葉の発達時期よりも発語がゆっくり ・言葉の理解が難しい ・一対一で話しているのに、聴いていないように見える ・名前を呼んでも振り向かない ・質問した人が言った言葉を同じように繰り返す 周りの人「今何しているの?」 お子さん〈今何しているの?〉 |
周りの人との関わり方 | ・1人で自分の遊びに夢中になっている ・周りの人の遊びに興味を示さない |
繰り返し行う行動 | ・同じ遊びを繰り返している ・手のひらをひらひらすることや、同じ動作を繰り返ししていることが多い ・同じやり方をしたがる |
感情コントロール | ・いつもとは違う場所に行く、違うやり方をするととても嫌がる |
感覚の過敏さ、鈍感さ | ・人の声や特定の音を嫌がる ・痛みを感じにくい ・明るさに敏感で、光が強いと嫌がる ・触られることが苦手 ・肌の感覚が敏感で、素材によっては服着ることを嫌がる |
※ここに記載した内容は一例であり、すべてがその人に当てはまるわけではありません。また、記載内容に合致する=発達障害というわけではありません。
子どもの行動に注目することは、その子に合わせた関わり方を考える機会となり、また、適切な支援を受けるきっかけや、子どもの理解を深めることに繋がります。その子を理解するためには、一緒に遊ぶなど経験を共にすることで得られることも多いです。
子どもの特性に気づき、発達障害かもしれないと感じたら、まずは相談をしましょう。
○子どもの発達障害に関する相談窓口(就学前)
発達健診・経過観察健診について
保健福祉センターでは、「赤ちゃんのくびの座りが遅いのではないか」「身体が小さいように感じる」「なかなか歩き出さない」「ことばが遅い」「落ち着きがないように感じる」など、お子さんの発育や発達に不安をお持ちの方を対象に、「発達健診」、「経過観察健診」を行っています。
必ず予約が必要です。
経過観察健診
一般健診の後、経過観察が必要な乳幼児に対して、医師・心理相談員・保健師・栄養士・保育士が相談 をお受けします。
会場
- 大横保健福祉センター 月1回
- 東浅川保健福祉センター 月1回
- 南大沢保健福祉センター 月1回
心理相談員による心理発達相談
子どもの精神発達・言語発達・社会性・しつけ(食事・睡眠・排泄・生活習慣)に関して心理相談員が、ご相談をお受けします。
- 対象 1歳6か月児から就学前までのお子さん
- 費用 無料
要予約 お住まいを担当する各保健福祉センターまで、お電話にてご相談ください。
はちおうじっ子 子育てほっとライン
妊娠、出産、育児に関することで、どこに相談したらいいかわからない時は、
042-686-2115(ハロー ニッコリ イイコ)
保健師等が、相談内容をお聞きして安心して子育てができるよう相談に応じます。
相談時間 通年(年末年始・第1日曜日を除く)
8時30分から17時